リリィーの努力
第41話〜リリィーの努力〜
レイトの謝罪の末、マナ嬢を説得することに成功した。
これから彼女には良い方向に進んでいって欲しい。
今、ヨグはスイレンと一緒に、各貴族様方へと挨拶をしに行っている。
できればニーズヘッグやリリィーを連れていきたかったが、二人にはお留守番をしてもらっている。
それは貴族の中には、やはり亜人差別をする者がいるためだ。
今回はそんなお留守番中に起きた話である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
学園の内側〜廊下〜
とても静かな廊下で、リリィーとニーズヘッグはポツンとしていた。
いつものようにご主人の帰りを待つ犬のようだが、リリィーからすれば何も苦じゃなかった。
そんな時ふと彼女は声を出す。
「あの......すみません、ニーズヘッグさん」
「リリィー様の声を確認......はい、なんでしょうか?」
「その......ニーズヘッグさんはすごいですね! あんな数の竜騎兵装相手に無傷で完全勝利なんて......」
「否、それはマスターの魔力と判断があってのことです。私はマスターの魔力無しではただの鉄の塊に過ぎません。それにしてもマスターは貴方の事をよく思っておりますね」
「そ、そうなのですか!?」
「はい、その証拠に先程私たちを置いて行く際、マスターはどうにかしてリリィー様を連れていこうとしており、スイレン様に叱られておりました」
「えへへー、ヨグ様らしいと言えばヨグ様らしいですね! でも私なんかがヨグ様の期待に、答えられるかどうか......」
「疑問、リリィー様はマスターにとって、かけがいのない存在になっております。それは周りの人間や物とは格別です」
「はは、そんな期待されたら余計に心が苦しくなりますね。私だってヨグ様の役に立ちたいんです。でも......でも私にはその力がない......」
「リリィー様は既にマスターに愛されております。それがどんな愛であれ、貴方がいなければ、マスターはすぐに壊れてしまいます。であれば、私から一つ提案があります」
「提案?」
「はい、リリィー様が力不足なのは否めません。なので私がリリィー様に力を授けましょう」
「で、でも私は竜騎兵装なんてもってのほかですし、扱えるのは盾くらいですよ?」
「それは今の技術がそう強制しているだけです。私の考えによれば充分に、竜騎兵装を動かせるでしょう。具体的に言えば、リリィー様の取り柄は盾としての才能と、サラマンダー特有の発熱です。特にリリィー様の発熱には限度が現状予測不可能な上、通常のサラマンダーより高い熱を確認しております。これを利用しないのはもったいないでしょう」
「私の熱を利用する? 竜騎兵装は魔力で動くものですよね?」
「はい、ですが内部構造などいくらでも変えられます。リリィー様の熱と、微量の魔力によって動く機体であれば可能です」
「それは...す、凄いですね!! ニーズヘッグさんであれば作れるのですか?」
「確認中......完了。おそらく可能です。しかし多少の調整が必要です。リリィー様の熱量によって内部ごと破壊される可能性もあります。なので今からリリィー様、少し練習しましょう」
「い、今からですか!? え、でもどこに向かえば...」
「外に出ていただければ私が目的地まで運びます。マスターにはそれとなく伝えておきますので、ご安心ください」
「わ、分かりました...」
そうしてリリィーとニーズヘッグによる特訓が始まるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、サラマンダーの街では大切な儀式と会議が行われていた。
場の空気が張り詰め、結果を待つ側もしんどい。
「ああ、我らが太陽の神よ。我らが種を導きたえ...」
巫女として選ばれたサラマンダーの娘、セイカは順々に儀式を終え、そのお告げを代表者へと告げる。
「なんと!? それは本当か!!」
耳打ちで話されているので、聞こえていない者としては、不安と安心の中間へと誘われていた。
スーっと代表者が息を吸う。
そして目を大きく開いた。
「皆の者ッ! よく聞くのだ!!」
「「はっ!!」」
「我々サラマンダー族は今繁栄の危機を迎えている! 日に日に訪れる観光客は減り、それに伴って移住する者も減っている!!」
サラマンダー族はその特徴として子を身ごもりにくく、それも相まってか、街では繁栄の危機を迎えていた。
代表は再び息を大きく吸った。
「お告げにより! 我々サラマンダー族の中に聖女がいるようなのだ!! しかも、その者は我々戦士種の中にいるそうなのだ!!」
「「おおーーーー!!」」
その場の空気が一気に歓喜へと変わる。
もちろんリリィーの家族もその一つであった。
しかし、彼らはこれから告げられることにより、その喜びは全て消え去ることになる。
「聖女、その者の名は...」
再び場の空気が切り詰め、皆揃うように唾を飲み込んだ。
「リリィー! アレク家の次女リリィー殿である!」
それを聞いた途端の一部を除いて、皆歓喜の嵐であった。
聖女とはそのくらい重要な立場であり、もし仮に本当に聖女がいるのならば、サラマンダー族は聖女を生み出した種族として世界的に注目されるだろう。
もしくは人族からの支援が受けられ繁栄の危機もなくなり、より良い生活が望める。
そんな希望でしかない存在であるリリィー。
これを聞いたリリィーの父は顔面蒼白になり、怯え出す。
もちろん母や兄や姉も、全てではないがリリィーがいない事は知っているため、焦っているようだった。
すると代表がこちらへと向かってきた。
「アレク家の者たちよ、まずはおめでとう。そしてご子女から聖女が産まれたとなれば、鼻も高いでしょう。して、リリィー殿はどちらに?」
そう問われたアレク家は皆俯き焦りを隠せていなかった。
「代表...いえ、インフェルノ様!! か、彼女なら...い、いいい今...体が弱く、家で休んでおります」
「ふむ、そうか、そうか...やはりか」
そう言う代表、インフェルノは残念そうにため息をついた。
そして今度は声を荒らげ怒った表情に変わる。
「我々、戦士種はサラマンダー族の誇りであり、良き仲間だと思っていた...。しかし、我は嘘をつかれてしまったな...」
「ひっ、ひぃいい!!」
そう言うインフェルノはその場で圧倒的熱量を放ち、辺にいた他の戦士種は皆恐れている。
そして他の戦士種は皆口を揃えてアレク家は終わりだと罵り、嘲笑う。
「も、もも申し訳ございません!! あれは体が弱く、才能もないため! 奴隷商へと売りましたぁ!!」
「...そうか、あいわかった!」
インフェルノはそれだけを言って、特に怒ることもなく、前にある壇上へと戻っていた。
彼の性格は一切の不義を許さず、虚偽を嫌い、正義そのものだ。
だからこそ、その人望は圧倒的高く、代表と言うサラマンダー族の頂点に立っているのであろう。
巫女は近寄ってきた代表に再び耳打ちをする。
「わかった。それでは皆の者もう一度聞くのだ!!」
「「はっ!!」」
「今この場にリリィー殿は居らぬ。しかし、奴隷商によって適切に売られ、そして今やヨグ・ランスロットと言う男が所持しているらしい!! 場所は王都! すぐに密兵隊を編成し、素早く監視と場合によっては接触を果たすのだ!! くれぐれも荒事は避けるように!!」
「「はっ!!」」
そうして儀式と会議が終わり、今度はリリィー救出隊のようなものが編成され、王都へと向かった。
その中にはリリィーの兄と姉が入っており、戦士として初めての実践だった。
心中は複雑だった。
なんせ彼らは妹が貴族へと売られたと思っていたのだ。
しかし、父は、奴隷商に売ったのだという。
これが神からの罰だと言うのであれば、それでいい。
だがあの出来損ないが、自分たちよりも優れていることには怒りを覚える。
そのことを感じてか、インフェルノは深いため息をついた。
「何も起きなければよいがな...」
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。
さてさてこんかいはどうだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!
最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!




