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彗星の原石ニーズヘッグ

第39話〜彗星の原石ニーズヘッグ〜






レイトの代役として競技に出ることになったヨグは、前日の朝早くから目が覚めていた。

いつもならリリィーを抱きしめ寝ているところだが、やはり競技当日は緊張するのだろう。

気晴らしに外へと出てみると、まだ学生の一人も出会うことはなく、静かな朝だった。

すると槍として持ち歩いていたニーズヘッグが話しかけてくる。


「マスター! おはようございます。やはり昨夜はあまり寝付けませんでしたか?」


「うん...まあでも、こんなのはピクニック前日の子どもみたいなものだよ。心配はいらない。それよりも、ニーズヘッグの方は準備できてる?」


「はい、いかなる状況であろうと、切り抜けられると、自負できます。それから、今日の競技とやらでの予想ですが、全員が敵となるでしょう。でもご安心ください、マスター。私が全て、灰にしてご覧に入れましょう」


「アハハ、それだと相手の方に少し同情しちゃうなー...。ねえ、ニーズヘッグ...一つ質問してもいい?」


「なんなりと...」


「なんでニーズヘッグは俺を選んだの? ニーズヘッグの性能なら喉から手が出るほど欲しい人たちは山ほどいるのに...その中なら俺よりも優れた人がいると思うんだ」


「マスター...その質問は愚問です。そうですね、私は今よりも遥か昔に殺戮兵器として作られました。ですがあまりにも強力かつデメリットが大きいためか、使われなかったのですよ。デメリットはマスターもご存知だと思いますが、魔力消費の量です。それこそマスター並に魔力がなければ、その生物はその場で死ぬでしょう。しかし、私はこの世に作られ、そして学びました。いつからか、殺戮兵器としての存在ではなく、私を本当の意味で必要な者に使ってもらいたいと、そう思うのです。それが...マスター、貴方だったのですよ」


「そうか...でも俺は......そんな期待されるほどできた人間じゃないよ、ニーズヘッグ。俺はいつも逃げてたから...」


「前世のマスターがどうであれ、今生きる世界が現実です。それならば今のマスターは本物の騎士であり、多くの人の期待を背負っています。信頼されています。愛されています。そんなマスターが臆病者など誰も思わないでしょう」


「そう...なのかな。俺はいつかこんな生活も終わってしまうと思うと恐ろしく怖い。だから強くなりたいし、それこそ本物のドラゴンになったら怖くもなくなるだろうなー」


そう言うヨグの頭の中には、母親が本を読む様子が思い浮かぶ。

そのきっかけがヨグをドラゴンという、英雄への道を示したのだろう。

気がつくともうすっかり太陽が顔を出していた。


「よしっ! ニーズヘッグ、そろそろ仕事の時間だ!」


「はいマスター♡」


朝からニーズヘッグの萌え声が聞こえて少し嬉しくなった。

それと同時に不思議と緊張感や恐怖心と言ったもの消えていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


学園の内側〜水上会場〜


学園の中にある転移門を潜ると目の前には大きな会場が広がっていた。


「す、凄い人の数ですね! メリーヌさん!!」


会場にはおびただしい程の人が集まっており、おそらく外部からのお客様も混じっているのだろう。

それにしても凄い数なのでリリィーは圧倒されてしまう。

また会場の中心部分には水が出ており、ステージ全体が海上のようになっていた。


「メリーヌでいいよ...」


「さすがにそれは私がヨグ様に怒られてしまいますよ」


「ん? 別にヨグなら怒らないと思うよ。なんて言ったって僕たちは将来家族になるんだから...」


「へ?」


頭の上にハテナマークをたくさん浮かべるリリィーに対して、メリーヌは少しニヤケ、続けざまにこう言う。


「君も彼が好きなんでしょ? なら僕たちでヨグを独占してしまえばいい。これ以上ライバルを増やされても困るし」


「な、なな何を言っているのですか!? た、確かにヨグ様のことは好きですけど、お、お嫁さんになんて...そんな、えへへ」


そう言うリリィーの顔からは火が出る勢いで赤くなっていた。

その様子を見て笑うメリーヌ。

そんな女子会が繰り広げられる中、ヨグは準備のため、待機所にいるニーズヘッグ(防御形態)の所にいた。


「マスター、最終チェック完了しました。いつでも戦闘可能です」


「うん、ありがとうニーズヘッグ。えっと開始まで...もう少しか...」


すると、ヨグに一人の男が近づいて来た。

その男はどこかで見た事があるが思い出せなかった。


「まさかあのクズの替わりにお前が来るとは、意外だったな......」


「えっと...どこかで?」


「この間保健室で一瞬だが顔を合わせただろ? まあ、覚えてろってのも無理があるわな。俺はおマナの取り巻き、ヘリウ・キガスだ」


そう名乗った男、ヘリウはどうやらマナ嬢の取り巻きで今回の優勝候補として名前が挙げられた一人だった。

それにしても見た目がごつくて強面な感じがある。

しかし、話しかけてきた理由を聞いて意外と紳士なのだとわかった。


「今回は巻き込んですまないが、全力で潰させてもらうぞ。俺はお前に恨みはないし、同情もするがこればかりは無理だとわかってくれ」


そう言う彼はどうやら相当腕に自信があるのだろう。

しかし、ニーズヘッグがこちらにいる以上負けることはない。

彼や他の選手たちには申し訳ないが、鎧の性能が違いすぎるのだ。

だからこそ、ここで俺は弱気になってしまってはいけない気がした。


「なら俺も遠慮なく、本気で潰しにいきますね! お互い背負うものもありますし!」


「はは、こりゃ本番が恐ろしいな...。おっと、もう時間か。それじゃあ健闘を祈るぞ」


そう言って彼は自分の竜騎兵装へと乗り込んでいった。

各選手たちも己の鎧を身にまとっていた。

そのほとんどが人型の鎧であったため、竜型のニーズヘッグの異様さはより強い印象を受けた。

それを見送ったヨグもニーズヘッグに乗り込み、ニーズヘッグとリンクしていく。


「マスターの意識を感知...脳内へとリンク...完了。こちらニーズヘッグ、マスター聞こえますか?」


「いつもながら目線が高くて慣れないね。それじゃあ行こうか!」


「はい、マスター!」


そう言って俺たちはステージへと進んで行った。


その頃、ステージは大いに盛り上がっていた。

競技開始前にある竜騎兵装を用いたパレードは、まさに大迫力で、また本学の学生にとって一つの集大成のようなものになる。

パレードの役者から運営、この会場全体の何から何まで全てを本学の学生が行うためである。

そんなパレードを終わり、会場にはアナウンスが流れはじめ、決闘の時同様実況解説が始まった。


「さあ! 皆様、この度はこの場までご足労いただき誠にありがとうございます。そしてただ今より『空』の部による竜騎兵模擬対戦を開始致します! 呼ばれた選手は、手前の発射台より登場致します! 皆様、拍手でお迎えください!! 選手番号一番...」


アナウンスがかかった選手は次々にステージへと発射され飛んでいく。

やはり「空」という枠だけあって、どの選手の機体には翼がついている。

しかし、どれも人型の竜騎兵装なので俺好みではない。

そんなことを考えている矢先、アナウンスがかかり、発射台へと立つ。


「それではお待ちかね!! 最年少で騎士となり、決闘ではかの有名な五人を圧倒した、一年の侵略者! ヨグ・ランスロットォオ!!!」


目の前の扉が開き、眩しい朝日が目を刺激する。

発射台の立っていた位置が動き出し、扉の方へと向かっていく。

そして足場がなくなると同時に宙へと投げ出される。


「こちらニーズヘッグ、飛びます!!」


ニーズヘッグの声と共に俺たちは上空へと飛び上がり、その姿を周囲に知らしめる。


漆黒の装甲に覆われ、青い魔力を纏っており、まさにドラゴンにふさわしい風格があった。


先程までの盛り上がりが、まるで嘘のように、観客たちは静かになってしまう。


その表情から伝わるのは驚きと言うより、圧巻の表情である。


周りも竜騎兵装は皆、人型で見慣れたものだが、ニーズヘッグは類をなさない。


そしてメリーヌはその姿を盲目ながらも感じとり、大きく笑っていた。


「あはははははははははは!!! やっぱり彼を選んで正解だよ!! ヨグ、君は酷いやつだ!!」


「よ、ヨグ様は酷いやつじゃないですよ!!」


「いや、良い意味でだけど酷いやつだよ! だってあんな魔力の塊なんて王国は愚か、世界中どこの竜騎兵装でも敵わないよ!!」


そう言いながら爆笑するメリーヌを見て、リリィーも少し笑ってしまう。

それは最愛の主人が他者から認められた瞬間だったからである。














どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!

毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。

さてさてこんかいはどうだったでしょうか?

少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!


最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!

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