裏切り者のレイト
第38話〜裏切り者のレイト〜
学園の内側〜保健室〜
「それで何があったんですか?」
治療を終えた俺はスイレンに向かってそう尋ねた。
すると彼女は頭を抱えるようしながら事の経緯を話し始めた。
「じ、実はな......」
遡ること一時間ほど前のことだった。
学園祭は三日間という期間が設けられている。
メインに出店を運営し、貴族でありながら商売の基礎を学ぶことが目的だ。
またこの学園祭にはもう一つメインになりうるイベントが用意されている。
それは、この学園ならではの、竜騎兵装を用いた大会が開催されるのである。
その大会は「陸・海・空」と三種に別れ、各自の得意不得意を考慮し、その中で競技が行われる。
競技の内容は撃墜数が多い者が勝ちとシンプルなものだが、決闘のように一体一ではなく、参加者全員が一斉に戦うため全員が敵となる。
そんな中、レイト・ランクルトは「空」の枠で出場しており、一年代表だったとか。
ここまでは別になんの変哲もない話だが、事は競技中に起きたのである。
第一から第三まで競技が行われるのだが、第二競技にてレイトは第一競技を戦い抜いた選抜の選手と戦うことになった。
選手の中には学年の差は関係なく、前回優勝者の三年生の生徒や今年優勝者候補の二年生の生徒などが参加していた。
そんな競技中、レイトは人数差で押され、審判もそのあからさまなチームプレイを咎めることはなかった。
ルール上、競技は個人技でありチームプレイは禁止されている。
しかし審判はレイトを囲んだ選手たちの説明として、たまたま同じ標的を狙っただけとし、ルール違反ではないと言うことらしい。
そのせいでレイトは撃墜寸前にも関わらず攻撃を加えられたらしい。
正に人道や騎士道の風上にも置けない行為だが、それが今正当化されているのだ。
そして話を戻すとレイトは、そのせいで大怪我を負ったらしい。
すると意識を取り戻したレイトが口を開いた。
「おそらくマナの取り巻きでしょう...」
「マナ?」
「ああ、君は知らないでしょうね。侯爵家長女のマナ・イーエンと言う生徒で、私の元婚約者です...」
そう言うレイトの元に颯爽と現れたのは全ての原因の「セリス嬢」だった。
「レイト様ー!! 大丈夫ですか!? 何事かと思えばそんな大怪我なんて...大会の優勝狙いだったのに...」
突然現れ空気をぶち壊していく彼女、王子やレイトは嬉しそうだが、スイレンからしたら嫌味でしかない。
「セリス......すみません、私のせいでまた迷惑を......」
「お金も入らないし......こうなったからには出るとこ出てやるしかないわ!!」
「セリス......私のためにそこまで...」
セリスはどうやら猫を被るのはやめたのか、素に近いであろう発言をする。
しかし出てくるその言葉のほとんどが、金の話であり、醜いとは正にこのことであろう。
確かにお金は大切だし、彼女は今廃嫡された五人(王子を抜くため正確には四人)を養うために金が必要なのであろう。
なんて言ったって、王子以外の取り巻きたちは廃嫡されれば実家からの支援はなく、職も地位もないただのニートだ。
そのせいかセリスはよくよく見てみると、やつれており、目にもくまができている。
全ては彼女が起こした結果であり、同情の余地はないに等しいく、「ざまあ」と思えばそうなのであろう。
「セリス、久しぶりだが相変わらず綺麗だ。私は決闘でのことで近ずけないが異母兄弟がいれば私も安心だ」
「レイル様......」
二人からすれば感動の再開だろうが、俺たちからすれば最悪の再開である。
するとドアが再び開かれ、大勢の男たちと一人の女子生徒が現れる。
「本っ当に...無様な姿だね、レ・イ・ト」
そう言ったのは青い髪に青い目をした女子生徒で、ボーイッシュなクールビューティとは正にこのことだ。
また少し不良っぽさがあり、胸元が少し見えるくらいまでボタンが開けられた制服や、首につけている鍵穴の形をしたチョーカーはよく目に着いた。
そんな彼女だが後ろには大勢の取り巻きを従えていた。
「やはり貴方なのですね......マナ」
「レイト......君のことは絶対に許さないし、どれだけ競技に出てきても潰してあげるよ」
「待ってくれないかマナ嬢。私たちが何かを言える立場じゃないことはわかっているが、これ以上不正をさせる訳にもいかないな」
王子はそう言うが、マナという女子生徒は止まることを知らない。
「殿下、元はと言えば貴方がこの女になびかなければ、こんなことにはならなかったんですよ? それに婚約破棄された令嬢が陰でなんて言われているか...」
彼女の圧に押され王子でさえも黙り込んでしまう。
収集がつかないためスイレンが間に割って入るが、あまり意味がなかった。
「マナ、気持ちは分からなくもないが競技中に堂々と不正されては困る。それにこの競技には真剣に取り組んでいる生徒もいるんだ。そんな場所に私情を持ち込むものではないぞ」
「スイレン......。君だって同じだろ。なんの返事もなくいきなり婚約破棄を迫られて、理由聞いても答えてくれない。今までの幸せが嘘のように消えるんだよ!! こんなのあんまりだよ!!!」
そう言って彼女は泣き出し、大粒の涙が零れ落ちた。
その言葉はスイレンも痛いほどわかっているだろうし、同じく裏切られた者として、言ってやりたいのは山々のはずだ。
しかし彼女が今この場でそれを言わないのは、彼女自信が成長した結果だ。
だからこそ、厚い信頼関係が崩れることはなく、今でも彼女たちの関係は続いているのだろう。
だがマナや他の元婚約者たちは許すどころか、下手をすれば恨んでいる可能性だってある。
現にレイトがこのザマなのが何よりも証拠だ。
「もういい、次の競技にもせいぜい出てくることだね。もし出てこなくても代理人を潰すだけだから...」
そう言ってマナは部屋から出ていく。
それに合わせて従者や取り巻きたちも出ていくがあからさまにレイトを睨みつけていた。
再び訪れる静かな空間。
なんともいたたまれない気持ちになったのは、俺だけではないはずだ。
するとレイトはベッドから起き上がろうとするが、さすがにまだ痛みがあるようだった。
「う、うう...」
「レイト様! まだ動いてはいけません!」
「しかし私が出ないことには...それに他の生徒を犠牲にする訳にはいきませんから。私が出れば済む話です」
「いや、ダメだレイト。これ以上の続行は認められない。いくら傷が治ったと言っても、まだ痛むのだろう? そんな状態じゃ竜兵装もまともに動かせないはずだ」
そう強い口調で告げる、王子とは裏腹に周りの実行委員の生徒たちは焦ったようにこう言った。
「でも代役はどうするんだ」
「今から募ったってあの競技の後じゃ、誰も来たいなんて思わないわ」
「それに競技に出られる生徒のほとんどが別枠に出てるからなー」
次々に意見を言っていくが、そのほとんどが使えるはずもなく、無理な状況であった。
すると実行委員の視線がヨグの方に集まり出す。
俺は嫌な予感しかしなかった。
「ヨグ・ランスロットならいいんじゃないか?」
「確かにレイト様よりあいつが傷つく分には...」
代役として頼むにも、もう少し頼む方ってものがあるだろう。
本人の前で悪口を言われるとは、やはりあの決闘のせいで俺の評価は地に落ちたようだった。
しかしそんな時、スイレンがすかさず止めに入ってくれた。
「ヨグを出場させる訳にはいかないな。仕方がないが今回は代役なしで棄権した方が良さそうだ」
「ま、待ってください! それではスイレン様の評価に関わります!!」
「そうです! スイレン様は一年代表として代役も立てられなかった...なんて噂が広まったら大変ですよ」
「馬鹿者!! これ以上ヨグに迷惑をかける訳にはいかない。私に恩を仇で返すなどできるものか!!」
「しかし...」
どうやら俺がもし代役としてでなければ、スイレンの評価が下がるらしい。
おそらくわざとではないだろうが、俺はこれで引くに引けなくなってしまった。
「ヨグ安心しろ、これ以上は...」
「わかりました。俺が出ればいいのでしょう?」
「い、いや...さすがにこんな危険なことを恩人にさせる訳には...」
「俺は一応貴方の騎士ですよ。守るべき主人の評判が落ちると聞いて、黙っている訳にはいかないでしょう」
「そ、そうか......わ、わかった。お前がその気になら全力で応援しよう。だが相手は複数人だぞ。問題なさそうか?」
「要は全員撃墜すればいい話ですよね。そして優勝すれば賞金も貰えるし...」
そう言う俺に対して、セリス嬢は、お金のことだけはすかさず聞き逃さなかった。
「待ちなさい! レイト様の代役として出るなら優勝賞金はもちろんレイト様のものよ!!」
「そうですか、なら優勝賞金は貴方たちにお渡ししますよ。これでいいですか?」
「フン! やけに素直じゃない。その条件ならあんたが勝っても負けても私たちには得しかないわ!」
「それではレイト...もし俺が優勝したら、マナ嬢に土下座でもしてもらいましょうかね。元はと言えば貴方が原因ですので、来年までもこのままだと、また俺が呼び出されて困りますし...」
「分かりました。君が優勝したのなら彼女に土下座でもなんでもやりますよ。これは優勝後が恐ろしいですね」
「ゆっくり休みながら、謝罪のセリフでも考えておいてくださいよ。それでは俺は準備をしますので...」
そう言って俺は部屋から出ていき、ニーズヘッグを呼ぶ。
「ニーズヘッグ! ごめんけど、対処できそうかな? 俺の勝手で面倒事ばかりだけど」
「私はマスターの決めたことに従うだけですよ。それでは競技の情報を入手...完了。対策は...必要なさそうですね。選手も技量と機体を総合評価しても九十九パーセント負けることはありません」
「その一パーセントはなにかあるの?」
「物事にイレギュラーはつきものです、マスター。それでも私がいれば対処してみましょう。...いいですか♡ マスター?」
「久しぶりにきたね、その萌え声...。まあ、とりあえず仕事だね! サクッと終わらしちゃおうか!」
「了解しましたマスター。それでは両刃剣を使用します」
「まあ、殺さない程度に...ね」
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