学園祭準備
第34話〜学園祭準備〜
学園祭開始まであと十一日...。
〜王城の内側-裏庭〜
青い薔薇が辺りに咲く中、彼女は長かった髪を切ったようで、これはこれでボーイッシュでかっこいいと思った。
そんな彼女と俺は今、一緒にお茶を啜っている。
「...っていうことがありまして、出し物を何にしようかと迷ってたんです......」
「へー、ヨグのいる学園にはそんなお祭りみたいなことをやるんだね! 」
そう言って目を輝かせているのはメリーヌだ。
今は騎士になった時に交わした約束のため、俺は彼女の元へと来ていた。
彼女は相変わらずこの青薔薇の咲く裏庭に居るそうで、足枷が外れたと言えど、やはり全てが自由ではないらしい。
しかし、以前に比べて彼女の表情は明るく、また王城内であればどこでも行っていいと許可が出ているそうだ。
まあ、当の本人が行きたくないと言っていたのでおそらく不便ではないのだろう。
すると、彼女は俺の話を聞いて少し悩んだ表情をしていたが、飲みかけのフルーツティーをもう一口と飲むと、俺にこう言った。
「それでヨグは何がしたいの? やっぱり自分の好きなことを探さなきゃ...やることも見つからないよ」
「うーん、そうだな〜...実はやりたいことはあるんだけど......物が手に入るか分からないしなー」
「なにか欲しい物があるなら私がお父様に頼もうか? 一応輸入品もあるから大抵のものは取り寄せられるよ」
「でもメリーヌに迷惑かかったら良くないし...」
「大丈夫大丈夫、私の騎士が困ってるのなら助けるのはお互い様だよ! それに私は君の前では私でいたいんだ...」
「そっか、何かとありがとうメリーヌ。それじゃあ、明日にでもみんなに相談してみるよ! 」
「うん。...あっ! そうだヨグ、こっちに来て!」
彼女はそう言って手招きをする。
そして彼女について行くと、そこは一つの部屋だった。
俺が部屋へと入ると、彼女はそっとドアを閉め、鍵をかける。
「なんで鍵をっ...」
俺の声を遮るように彼女はこう言った。
「ここ、最近お父様からもらった部屋なんだ。まだベッド一つしかないけど。どうかな? まあ、今は気に入らなくてもいいよ。だっていずれは......二人で、色付ければ...いいよね?」
そう言った彼女は思いっきり俺をベッドへと押し倒す。
そのまま覆い被さるように体を押さえつけられる。
「ちょ、メリーヌ! きゅ、急にどうしたの!? 」
「そんなことを聞くなんて野暮ってものだよ、ヨグ。貴方は私の騎士なんだから...もっと、もっともっと!! 私を甘やかして」
「そ、そんなこと言われてもどうやって甘やかしたらいいんだ? 変にイチャイチャなんてしてたらそれこそ王様に怒られそうだしね」
「うん、わかってるよ。でもせっかくの二人きりなんだ。...膝くらいなら...いいでしょ?」
彼女はそう言うと、押さえつけていた力が緩まり、俺は体を起こす。
すると彼女はベッドの上にそっと乗り、そして横向きに倒れ込む。
初めて彼女を膝枕した時同様、彼女に触れている部分は冷たく、まるで氷のようだった。
そしてお互いなにも話すことなく、ただただもどかしい時間が過ぎて行く。
「ねえ、ヨグ...」
「どうかしましたか?」
「私は...ちゃんと生きているのかな? たまにものすごく不安になるんだ。いつか誰にも気づかれずに消えてしまうんじゃないかって...」
そう言う彼女の頭を撫でながら、ヨグは笑顔でこう言った。
「大丈夫ですよ、今は生きています。その証拠にメリーヌの心臓の鼓動が微力ながら伝わってきますよ」
「そっか...うん、ありが...とう」
そう言って彼女は眠ってしまう。
疲れが溜まっていたのか、それとも眠れてないのかは分からない。
でも彼女が幸せそうに寝る顔の表情は美しく、これは俺しか知らない数少ない特権だった。
〜翌日〜
昨日相談したことを改めて練り直し、スレイとウルトに話す。
すると、二人は心置きなく賛成してくれた。
その後も三人で話し合い、必要な物をまとめていく。
そこでリリィーには看板娘を任せるのだが、給仕役が一人では心もとないため、スイレンに頼んでみる。
彼女もすぐに承諾してくれたので、今のところは順調に進んでいた。
あとは必要な物を必要な分集められるかが問題だった。
そして二日後...。(残り八日)
メリーヌの元へとやってきた俺は商人を紹介してもらえるよう頼んでいたため、ついに会える日となった。
彼女には感謝してもしきれないが、俺にできることと言っても毎日彼女に会いに行くことくらいだ。
その度に彼女の表情が良くなっているのは確かだった。
「ヨグ、この部屋の向こうに呼んでおいたから...あとは任せるね」
「本当に何から何までありがとうメリーヌ。この二日間は物がなくて気が気じゃなかったからね」
「うん、頑張ってヨグ。......終わったら、いつもの場所で待ってるから」
「商談が終わったらすぐ行きますね!」
そう言って一旦彼女と別れ、俺は部屋のドアをノックする。
「入ってくださいっス!」
そう言われ恐る恐る部屋へと入っていった。
部屋の中は厚い壁で作られており、少し密閉された空間だったが、これなら他の人に話を聞かれることはないだろう。
すると、メリーヌに紹介された商人が立ち上がり、こちらを見て一礼する。
「私はメリーヌ様にご贔屓にさせてもらってるビッズと申すッス!」
目の前にはリスのような獣人が立っており、身長が小さく可愛らしかった。
先程まで怯えていたのが、まるでバカみたいだ。
「私はメリーヌの騎士をしているヨグ・ランスロットです! 今回の商談はよろしくお願いします」
「はいっス! それじゃあ、早速何をお求めッスか?」
「えーっと...お米と緑茶の葉を探していまして、国の貿易を担っている貴方ならおそらく仕入れると聞きました」
「米とグリーンティーの葉ッスね! それらな東の村々でよく育ているッスから仕入れは可能ッス。でも...」
「でも?」
「量があまり出ない物ッスから、少々ドラが高めになってるッス。一応ドラの説明をしておくッス。払ってもらったドラの全体の一割を生産者、もう六割を私たち、そして残りの三割が国に入るっス。それでも大丈夫なら商談成立ッス!」
「ドラなら問題ないので、とりあえずこれくらいの量を仕入れられますか?」
「...大丈夫ッス! この量なら三日程で着くっスね! あとは細かいことで...」
そうして残りの品の商談も済ませると、あっという間に夕方だった。
中でも塩は高級品らしくあまり手に入らないと言われたが、どうしてもと頼んだ結果、少量だが売ってもらえることになった。
なぜ塩が高級品なのかと思ったが、どうやらまだ塩は一般的に知られておらず普及していないため、生産者が少ないらしい。
もしこの学園祭で塩が一般的に広まれば価値は下がるが求める人が増え、そして供給量が多くなればいいと言っていた。
全ての商談を終え、俺は急いでメリーヌの元に向かった。
彼女が待っているであろう部屋へと着いた。
ドアをノックするが返事がない。
不審に思い俺は「開けます」と一言かけ、ドアを開けた。
部屋の中は真っ暗で明かりひとつなかった。
視界の悪い中、俺は部屋へと入り彼女の名前を呼ぶ。
そんな時、俺の背中に何かが抱きついてくる。
背中には氷のような冷たさが感じられ、その瞬間俺はホッとしてしまう。
「はぁー、心配しましたよ! 呼んでも出てこないんですから...」
俺がそう言ったが彼女からの反応はなく、ただただ背中に抱きついていた。
それどころか抱きしめる力がどんどん強くなっていく。
どうやら来るのが遅かったので怒っているのだろう。
その後は俺が何度か謝まると、すぐに機嫌を良くしてくれた。
〜学園の内側-学生寮〜
今日一日のやることを終え寮へと帰ると、ドアの向こうには天使が顕現しており、優しく迎え入れてくれる。
「ヨグ様、おかえりなさい! お風呂は沸かしてありますよ!」
「うん、ありがとうリリィー! すぐにお風呂入ってくるからその後に食堂へ行こうか」
そう言ってヨグは急いで体を綺麗にし、リリィーと一緒に食堂へと向かった。
今日も今日とて日替わりランチは安く、そして美味しいものだった。
その内容は、フォークで簡単に崩れてしまうほど煮込んである煮込みハンバーグがメインで栄養バランスを考え、サラダと適量のご飯がちょうどよかった。
そして夕食を終えた俺は部屋へと戻り倒れるように眠ってしまう。
リリィーには最近構ってあげられていないので申し訳ない気持ちもあったが、彼女は毎度俺を抱き枕のようにして寝ているため、毎朝起きるといつも幸せそうな顔をしているのである。
ヨグはそれを見て毎度安心してしまう。
それと同時に消えてしまいそうと言う気持ちは、日々強くなる一方だが、リリィーを見ているだけで忘れてしまうため、実は意外とそんなに気にしていないものなのかもしれない。
まだ''自分,,が何なのかは分からない。
そう、まだなにも分からないのだ。
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