お揃いのキーホルダーと不揃いの絵
第33話〜お揃いのキーホルダーと不揃いの絵〜
〜???〜
その人だかりは、それは普通にできるようなものでもなく、嫌な予感がしてくる。
また、どこからか焦げたような臭いもしてくる。
俺は恐る恐る近づいていき、ついに家が見える位置にやってくると、そこには火事で燃えている彼女の家があった。
すると、二階部分から火が大きく飛び出し爆発のような音がする。
窓から何かが飛び出したと思うと、最初に目に飛び込んできたのは、「お揃いのキーホルダー」だった。
彼女に初めて俺がプレゼントした物であり、彼女はそれを毎度嬉しそうにどこかに身につけていた。
そして俺はそれを見た瞬間、群がる野次馬を掻き分けて道へ飛び出していた。
後ろの方からは戻ってこいと声が聞こえてくるが、そんなことはお構い無しに火事の家の中へと入っていった。
家の中は真夏や炎天下など関係ないほど暑く、息も煙を吸わないようにするために止めていた。
ハンカチで口元を覆い、彼女のいるであろう二階へと駆け上がる。
幸いなことに火は一階部分にあまり届いておらず、階段は無事に登れる。
しかし、二階の廊下には既に火の手が来ていた。
燃え盛る火の中、俺は息の限界を感じながらも彼女の部屋へと到着し、ドアをこじ開けようと力いっぱい押した。
かろうじて開いたドアの隙間から見えたのは、まだ描き途中の大きな絵だった。
それは彼女が外へ行けないため俺が言葉で伝えた景色を絵にしたものだった。
しかし、その絵は半分しか完成しておらず、「不揃いの絵」となっていた。
すると、ドアがいきなり壊れて前に倒れる。
「う、うわあああ...い、いてて......」
倒れたドアを下にして起き上がり、彼女の名前を大きな声で叫ぶが、返事がない。
そして俺が絵とは反対の地面の方へと、目を移した時だった。
ビッ...ビー...ビビッ...。
〜???〜
記憶はそこまでとなっており、肝心な彼女の姿が映っていなかった。
記憶の映像が終わると、そこは暗くて、苦しくて、何もない世界。
そこはまるで死んだ時と同じような感覚だった。
絶望も希望もなく、ただ自分が消えていく。
まるで最初から存在していなかったように簡単に消えていくのだ。
そんな時、どこからともなく声が聞こえてくる。
「ヨグ様...ヨグ様!!」
その声によって徐々に現実へと戻されるのであった。
学園の内側〜保健室〜
「はっ!?」
目が覚めるとそこはベッドの上で寝ており、周りには白いカーテンのようなもので囲われていた。
「よ、ヨグ様ぁ!! よかった......目を覚ましましたぁ!!」
そう言ってリリィーは俺を優しく包み込むように抱きつく。
体に異常はなかったが頭が物凄く痛む。
それにしてもあの記憶はなんだったのだろうか。
彼女の姿も声も何もかも思い出すことができない。
それはまるで俺の中から彼女が消え去ってしまっているかのように。
突如カーテンが開かれるとそこには白衣を着た女性が現れた。
「ヨグ・ランスロットさん、体調はいかがですか? 私はこの学校の治癒士です。どこか痛む場所はありますか?」
「頭が...痛みます」
「ふむふむ、頭ですか...。うーむ、おそらく疲れが溜まっていたのでしょう。鑑定で貴方の体調を見てみましたが特に病気でもないので、しっかり休めば大丈夫ですね」
「疲れ......ですか。でも今日は授業もありますし、もう大分痛みも治まってきたのでそろそろ行きます」
「ではあと一時間程休すんでいきなさい。本来なら今日は一日休んでほしいところです。それに一時間程度ならお昼からの授業も間に合います」
「そうですか、分かりました」
「よろしい。それでは私は失礼します」
そう言ってカーテンが閉められどこかへと行ってしまう。
そして気づけばリリィーは抱きついたまま寝ていた。
どうやら安心したのだろう。
俺は彼女にも布団をかけてやり、そのまま横になる。
するとあっという間に寝てしまい、気づかぬうちに疲れが溜まっていたのだなと改めて感じた。
そして俺はそっと彼女を抱きしめた。
もう二度と失わぬように...。
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〜一時間後〜
完璧とは程遠いが体調が良くなったのでお昼からの授業には参加することになった。
教室に入ると、ちょうど授業と授業の空き時間であったため、クラスメイトの声が聞こえてくる。
いつものように自分の席へと向かうと、早々にスレイとウルトが話しかけてきた。
「ヨグ! 今日は遅かったけど体調でも崩したのか?」
「ちょっと疲れが溜まってたみたい...でももう回復したから大丈夫だと思う」
「あんな決闘の後だから無理もないよ、ヨグ。それから出世おめでとう。僕も友として鼻が高いよ」
「ああ、ありがとうウルト。でもこれから上級クラスの仲間入りか...」
「上級つってもあまり変わらないけどな」
「そうだね、僕達はまだ爵位を貰えていないからなんとも言えないけど、普段の生活が変わることはないよ。でも君は異例中の異例だからね。クラスの女子からすれば王子のいない今では狙い目に入ってくるだろうね」
「正直...面倒だよな。俺は爵位とか野心がないからかもだけどな。あーあ、もうリリィーがいるのでって言って逃げようかな」
「君たちは本当に仲がいいね。やっぱり自分で選んだ従者は特別なのかな?」
「それもあるだろうけど、リリィーは...なんでか分からないけど心の底から大切にできるんだよ」
「けっ、羨ましいな、おい!!」
そう言って俺は友人二人からつつかれまくる。
なんだかんだ時間も過ぎていき、気づけば授業の始まりの鐘の音が聞こえてくる。
そういえば次の授業は「会議」と予定が入っていた。
なにか話し合うのだろうか。
その答えは先生(校長)が入ってくると同時に知らされる。
「はい、皆んさん授業を始めますよ。まあ、だいたいは予想できるとは思いますがね。...そう、毎年恒例の学園祭です!!」
そう言う先生はどこかしらいつもよりテンションが高く、上機嫌だった。
それにクラスメイトの連中も学園祭と聞いて皆盛り上がっていた。
しかし、俺はまだこの学校に来たばっかりなので学園祭と聞いても、前世の頃の学園祭しか知らない。
「なあ、学園祭ってなにするんだ? 出店とか劇とかするのか?」
俺がスレイとウルトにそう言う。
すると二人は顔を見合せあまりいい表情ではなかった。
「い、いいかヨグ。ここの学園祭は普通の学園祭じゃないんだ」
「そうだよ、なんでもここの学園祭は貴族たちが独自性と完成度を競う...まさに地獄の祭りだよ」
「そう......なのか?」
「つまり女子のご機嫌取りをしながらの接待になるんだよ。しかも変に逆らったり、変なものを売りつけようものなら容赦なく、従者にボコボコにされるんだ」
そう言うスレイとウルトはブルブルと震えながら怯えていた。
そんなにも学園祭が恐ろしいものなのかと俺も少し緊張してしまう。
学園祭を行うにあたって、三人以上のグループを組まなければならないようで、もちろんリリィーは確定だが他をどうしようか迷ってしまう。
しかし、そんな心配は無駄に終わるのだった。
「ヨグ! 俺たちと組んでくれ! 頼む!!」
「去年はグループ決めで時間がかかって用意に十分な時間をかけられなかったんだ! だから僕からも頼む!!」
スレイとウルトがグループを組むよう先生が言ってすぐに声をかけてくる。
「もちろん俺はいいよ! 二人には元々声をかけるつもりだったからね! それで出し物は何をしようか?」
そう言うと二人とも黙って考え込んでしまう。
「それが...難しいんだよなー」
「下手なものは出せないし、かと言って既存のものを加工して出そうものならケチを付けられる」
三人で考えたが結局良い案は出ず、期間も二週間はあるので各自でよく考えてくるようにと話が着いた。
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