王との面会
第30話〜王との面会〜
〜王城の内側-客室〜
「はあー、うぷっ......吐きそう」
食事会...それは貴族たちにとって戦場そのものである。
これは貴族同士の交流を深め、お互いの領地を良くすると言う名目で表向きは開かれる。
しかし、裏ではとんでもない戦場なのである。
簡単に言えば仲の良い振りをしつつ、マウントの取り合いをするような感じだ。
もちろん、それは相手にもよるだろう。
同格かまたは、それ以上の者かによって、その態度は一変する。
しかし、今回俺が来ている食事会の相手は王族、もしこれで何か機嫌に触れれば、俺の首が飛ぶというものだ。
「ヨグ様、これとか美味しいですよ! ほら!」
「さすがは王宮のシェフだな。食材が輝いて見える。...どうだヨグ、体調は良くなったか?」
幸いなことに、俺一人であったら緊張でトイレに引きこもりそうだったが、リリィーやスイレンも一緒に呼ばれていた。
またスイレンはいつもになく、綺麗で真っ黒なドレスを着ており、まるで悪役令嬢のようにも見える。
それとは反対にリリィーのドレスは赤を基調としたもので、少し露出が激しかったが、可愛いからOKです。
ここで少し余談なのだが、リリィーのドレスは最初、スイレンのものを貸してもらえる予定だったが、そのドレスの胸元にあったボタンが閉まらなかったらしく、スイレンは残念そうにしていた。
そんなことはさておき、俺は王城にて食事会をしているのだが、いつになっても王様や王族が現れることはない。
その間にも着々とほかの貴族たちが集まって来ていた。
「もしや、旦那じゃないですか!」
話しかけてきた男は、以前古都で出会った謎の商人だった。
しかし、相変わらずのオーラを漂わせており、いつになく怪しい空気を醸し出している。
「ヨグ、この方はお前の知り合いか?」
「はい! えーっと確か...ウィルキンさんでしたよね! お久しぶりですね」
「はい、ウィルキン・ボーデンでございます! 覚えてくれるとは光栄ですね! それとスイレン嬢もご機嫌麗しゅう」
「そういえば、ウィルキンさんも食事会に招待されていたんですね。もしかして凄い人だったり...」
「はは、私は商いの所であればどこでもおりますよ! おっ! そろそろ食事会が始まりますので、私はこの辺で...」
そう言って彼は足早にどこかへ行ってしまう。
相変わらず謎の多い男だ。
すると、前方にある大きな幕が開かれ、現れたのは豪華な衣装に身を包んだ王族の方々だった。
真ん中に居座っていた、現国王が立ち上がり、挨拶をする。
「ゴホン! 皆の者この度はよくぞ、私の食事会に集まってくれた。それでは早速ヨグ・ランスロット男爵一位並びにスイレン・ルチアーノ公爵は前へ」
突然名前を言われ、驚いてしまったが、スイレンに続いて俺も王の前へと出ていく。
そしていつもながら、あの恥ずかしいポーズを取り頭を下げる。
「何故呼ばれたかはわかっているなスイレン嬢」
「はい、陛下...。この度の件はどうか私の首一つでお許しください...」
「なに、怒っている訳ではない。それに今回の件は、あの馬鹿息子に非がある。もちろんその責任は親である私の責任でもあるがな。よし、表をあげよ二人とも」
「「はっ!」」
「ここでは人目もある。個室を用意してあるから移るとしよう」
王城の内側〜王の客室〜
個室へと移動し、人目はなくなったが、逆に緊張感は高まっていた。
俺はあまり動かず、ガチガチに椅子に座っているが、スイレンは優雅に紅茶を啜っている。
これが本物の貴族の余裕なのだろうか。
一応リリィーもついてきているが、ドアの前で待機させられている。
「待たせたな...」
そう言って現れた現国王は、服装が変わっており、先程の暑そうなマントや装飾品の多い上着は、着ていなかった。
「正式な格好でないのはすまない。どうも私はあの格好と堅苦しい言葉遣いが嫌いでね。そして君がヨグ・ランスロット男爵一位だね。私はこの国の王を担っているコルク・アナスタシアだ。そしてこっちが私の妻のテレシア・アナスタシアである」
俺は二人に向かって静かに一礼する。
しかし、何を話していいか分からなかったため、無言を貫く。
状況を見かねたスイレンは唐突に頭を下げ、そして今回の件について謝りだした。
「陛下、今回の件は私の短慮によって起こした失態です。どうか私の首ひとつでお許しください」
俺からすれば何を言っているんだと、言いたかったが今はそうもいかなかった。
「スイレンちゃんが謝ることじゃないわ。今回の件に関してはあの子が悪いのだから...。それにしてもごめんなさいね。あの子がここまで女性に執着するなんて、思っても見なかったわ。正直な話、子爵家の娘なんて愛人でも良かったのよ!」
「まあ...レイトはあまり、私たちに自分の話をするような子じゃなかったからね。親としては情けないよ...。それから婚約の件は破棄とさせてもらうよ。スイレン嬢には悪いけど、ここまで大事になった以上、あいつには責任として廃嫡してもらうしかあるまい」
「それでは殿下は...もう......」
「貴方がそんな顔しなくても大丈夫よ。王を継ぐ子はまだまだいるからね。確かにあの子は一番大人しかったし優秀だったけど、中身はまだ子どもだったってことね」
どうやら王子はもう地位を失ってしまうため、実質平民と同じだが一応元王子であるため、普通に暮らすことはできるだろう。
その後は、婚約破棄の手続きを素早く済ませ、何事もなかったかのように物事が終わっていく。
そしてスイレン嬢の話が一通り終わったところで、ついに俺へと話が変わっていく。
「それでは、次にヨグ・ランスロット男爵一位。君はスイレン嬢の騎士として決闘に挑んだそうだね。まさか国一の職人が作った竜騎兵装を、破壊したと聞いた時は私も驚いてしまったよ」
「それに関しては申し訳ございません。ですがこちらも決闘で手加減をする訳にもいかず...」
「なに職人たちからすれば、もっといいものを作らなければならないと、いい油になってくれたよ。それから君の今後についてだけど、君はこれからも学園に通ってほしい」
「承りました、陛下!」
「そして最後に君へのお咎めの話だけど...」
ついにこの話がきてしまったと思い、心臓の鼓動がはやくなり、少し胸が苦しくなる。
しかし、王様は俺の予想の斜め先の回答を突きつけてきたのだった。
「君は男爵二位になってもらうよ!」
「へ? ...男爵......二位!?」
そう言われ、思考がストップしてしまう。
お咎めと聞いていたのに、何故か地位が上がってしまったのだ。
もちろん理由はこうだった。
「驚くのも無理もない。お咎めって聞いたらだれだって嫌なことを想像するだろうからね。でも今回君は王子の悪行を止めたって言う功績がある! だから君は晴れて今日から上級貴族の仲間入りさ! おめでとうヨグ君」
「はは、ははは...」
もう俺は苦笑いすることしかできなかった。
まさか地位が一つ上がるなんて誰が予想するものか。
その後、広場へと戻ったのだが、俺だけは大勢の貴族たちがいる中で、王様の前へと再び膝をついた。
そして勲章と今回の功績を褒められ、男爵二位へと昇格したのだった。
式も終わり、あとは食事会を楽しむだけとなったのだが、ここでまた問題が起きる。
俺は式が終わると同時に、トイレへと駆け込んだのだが、来た道を忘れてしまい、王城内で迷子になっていた。
「どうしよう...迷子になった。ニーズヘッグは預けちゃってるし、リリィーはスイレンと一緒だし...困ったなー」
そう思いながらも、適当に廊下を歩くが一向に会場が見えることはない。
急いで来た道を戻るが、戻った先もトイレではなく、全く別の場所であった。
〜王城の内側-裏庭〜
ドアの奥の方を覗き込むと、奥は外になっており、誰もいなさそうだったので一度出てみた。
目の前には綺麗に伐採された木や花たちが並んでおり、また少し進んだ先には、ドーム状にガラスで作られた小屋のようなものがあった。
「失礼します...」
小声でそう言いながら小屋へと入ってみると、中には青い薔薇が無数に咲いており、幻想的な空間のように感じた。
「この世界に薔薇なんてあるんだな...」
そっと薔薇に手を伸ばした、その時だった。
「触れない方がいいよ...」
「ッ!?」
どこからともなく、声が聞こえてきた。
その甲高い声は女性のものだろう。
そして声の主は続けさまにこう言った。
「その薔薇には人間を百人以上殺せる猛毒があるから...」
その声のする方向へと行ってみると、そこには真っ白なテーブルに座っている半人半竜の少女がいた。
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