愛か、正義か
第23話〜愛か、正義か〜
学園の内側〜聖堂の裏庭〜
ここはシニエスタにとって憩いの場と言っても過言ではない。
そこは、聖堂の裏側には綺麗な花に囲まれた庭だった。
普段からあまり人が来ないので、一人になるならピッタリの場所なのだ。
そして、彼女が優雅にお茶を啜っていると、友人のスレインが突如訪れてきた。
「貴方がこんな時間に来るなんて珍しいこともあるのですね...スレイン」
「ええ...」
「元気がないようですが何かあったのですか?」
「フフっ、わかってしまうか。やはり、シニエスタには嘘が通じないな。実は少し婚約者と揉めていてな」
「確か第一王子が子爵家の娘にベッタリだという噂を聞きましたが...本当なのですね」
「ああ、殿下はあの女に騙されてるんだ。だからもっと、私がしっかりしなければならないのに...」
「そうですね...ではスレイン、貴方は殿下を今でも好きですか?」
「それは.......もちろんだ」
「ねぇ、スレイン。人を好きになるとは、どんな気持ちになりますか?」
シニエスタは顔を少し赤らめながら、恥ずかしそうにそう言った。
「ん? どうしたんだ、急にそんな質問なんて...貴方らしくないな。何かあったのか?」
「いえ、少し...気になっただけですよ。ほら、前に貴方が言っていたではありませんか。恋をすると胸がいっぱいになったり、苦しくなるって...」
「ははは、確かにそんな時期が私にもあったな。あの時はとても楽しかったな〜。今では考えられないがな」
「そうなのですね、やはり私のこの感情は恋ではないのかもしれませんね」
「なに!? 気になる生徒でもできたのか! それは誰だ! 教えてくれ、シニエスタ」
「いえ、彼と一緒にいると不思議と心が休まると言いますか...何故か落ち着くんです。まるで鏡に映しだされた自分といるように感じるのです」
「そ、そうか。貴方にそこまで言わせる奴がいるとは...。それで誰なんだ、その生徒は?」
「転校生のヨグ・ランスロットさんですよ」
「ああ、なるほど。確かに他の貴族とはまるで違った様子だったな。それに、彼の才能はどれも素晴らしいものばかりで、嫉妬してしまいそうだよ」
「そうなのですね。さすがは先帝様に推薦され、貴族になっただけはありますね」
「それで......シニエスタは彼が好きなのか?」
「すすすす、好き!? 私はただ、彼といると心が休まるだけで...その、えーっと...その...」
シニエスタは顔から火が出るのではないかと思うくらい真っ赤になっていた。
すると、スイレンは呆れたようにため息を吐く。
「はぁ〜...シニエスタ、それはもう好きではないか」
「えっ?」
「フフ...あのシニエスタでも、恋心までは優等生ではないみたいだな」
「しかし、もし私が彼をす、好きだとしても...主は許してくださるでしょうか...」
「シニエスタ、君も年頃の女性で一人の人間だ。人を好きになることは自然なことなんだよ。あと問題なのは彼の今日のことが噂として広がれば、多くの令嬢の狙い目になるに違いないだろうな。そこで、他に取られないためにも気持ちを伝えるなら早めがよかろう」
「ですが...私なんかじゃ......」
「何を言っている。シニエスタ、君の容姿は一級じゃないか。それに運命的に同じ部屋なのだろう? 」
「ま、まさか! 彼を襲えと言うのですか!?」
「ちっ、違う、そこまで言ってないぞ! いいか? 、いい雰囲気になったら、彼に寄り添って思いを伝えるんだ。そうすれば彼もきっと落とせるはずだ」
「し、しかし...」
この後も今日の女子会は大いに盛り上がったのだった。
スイレンは恋する乙女であるシニエスタに様々なテクニックや作法を教えられる。
その全てがシニエスタにとってはハードルが高く、どれも容易にできるものではなかった。
確かに彼女は美しく、そしていくら優秀であっても恋というのは難儀なものである。
しかし、新たな問題が翌日のパーティ会場によって起きてしまう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
???〜???〜
教会の鐘の音が微かに聞こえてくる。
また、薄暗い廊下の先には無数の牢屋が並んでいる。
ポタポタと水が水たまりに落ちる度、時間が刻一刻とすぎているように感じる。
牢中には一人の少女が蹲り、助けを乞うが決して叶わないだろう。
すると少女の前には黒いローブを被った人たちが数人現れた。
「おい! 起きろヴァレンタイン・ランジェ。実験の時間だ」
「ふざけないで! 私にこんな事して貴方たちどうなるかわかっているのかしら?」
「強気なのはいいことだが、貴様もわかっているだろう? もう、あの騎士も助けに来ないと...」
そう言った男は笑みをうかべ、彼女の腕を強引に掴んだ。
「よし、この女を連れて行け!」
「「はは!」」
ランジェは二人の男に抱えられながらどこかへと連れていかれたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
学園の内側〜パーティ会場〜
翌日、貴族クラスの間では交流パーティが開催されると知らされた。
もちろん俺は断れるはずもなく、渋々会場へリリィーを連れて来ていた。
「ヨグ様、ヨグ様! この料理美味しいですよ。ほら、ヨグ様も一口食べてみてください!!」
「う、うん。ありがとうリリィー」
俺は貴族同士の関わりなどはないため、会場の隅の方で大人しくしていたのだ。
すると、そんな様子を見かねたリリィーが、美味しそうな料理を持ってきてくれたのだった。
また、リリィーも美味しそうに料理を食べているため、退屈はしていないだろう。
そんなことをしていると、どこからともなくスレイとウルトが現れた。
しかし、彼らは何故かボロボロになっており、服には微妙に砂などが付いていた。
「スレイ、ウルト、その...どうしてそんなにボロボロなんだ?」
「や、やあ...ヨグ、久しいね...」
「痛ったー...まったく、学園の女子は酷いな!」
「学園の女子にいじめられているのか!?」
「いやいや違うよ、ヨグ。貴族として産まれたからには通らなきゃいけない道って感じだよ」
「本当に面倒だよな、婚約者探しは!!」
「婚約者探し?」
「ああ、確かヨグは貴族になったばかりだから知らなかったね。実は僕たち位の低い貴族は、立身出世するためにいい婚約者を探さなきゃいけないんだ。もし学生のうちに見つけないと酷いことになる」
「そうなのか? みんな大変だな...」
「何言っているんだよ、ヨグ。お前も俺たちと同じ貴族になったんだから、見つけないといけないんだぞ!」
「俺も!? まぁ、俺にはリリィーがいるから...」
「はう!?」
俺がそう言うと、隣にいたリリィーの顔が真っ赤になり、変な声をだす。
「えへえへ...ヨグ様の婚約者...えへっ」
リリィーは何かを呟きながら、満面の笑みを浮かべていた。
するとスレイとウルトは赤色の涙をダラダラと流していた。
「ヨグ、君ってやつは!! 今度から夜道に気をつけるんだな!!」
「くっそー、幸せだな...おい! お前だけ抜けがけとかずるいぞ!」
二人は俺を殺すような勢いで睨みつけていた。
しかし、俺がここで変なことを言えば余計に恨みを買うだけだ。
そのため、俺は苦笑いをしてその場をやり過ごしていた。
すると、突然会場の中央の方に人だかりができ始める。
「ん? 何かあったのかな?」
「よしゃあ、行ってみようぜ!」
そう言って俺たちは人だかりの方へ行くと、そこには王子一向とスレイン嬢とシニエスタさんが何やら言い争っていた。
「殿下、いい加減目を覚ましてください! その女は殿下のことを思っておりません!」
「言いたいことはそれだけか? 貴様も女王の座が欲しいだけではないか!」
「殿下!」
「ええい、黙れ!!! いい加減うっとうしいぞスレイン!!」
二人の声はその場が静まり返るほど響き渡っていた。
しかし、仲裁としてシニエスタさんと王子の取り巻きが双方を止めに入るものの、二人は止まらなかった。
何度も言い合いをしているが終わりがないため、今度はシニエスタさんから殿下に説得する。
「殿下、貴方が愛する人が誰であろうと文句を言うつもりはありません。しかし、婚約者のいる身分で白昼堂々と他の女性といるのはよろしくないかと...」
「俺はセリスを愛している。それだけではないか! それに貴様こそ我が国の信仰する神を信じず、異端の道に進んだ者の言葉など興味もないわ!」
「殿下...それは我が主を否定する発言です。撤回してください」
「黙れ異教徒め! 貴様如き平民が俺に楯突くなぁ!!」
様子を見ていると王子の本当の姿はあれなのだと分かった。
どうやら俺に出会った時は猫を被っていたか、貴族として振舞っていたろう。
俺はこの国の将来に不安を感じ、同時にあの王子への信望も地に落ちていた。
「もういい、私も我慢の限界だ!! セリス、貴様だけは絶対に許さない!!」
そう言って、黙って聞いていたいスレイン嬢が殿下の傍にいたセリスに向かって、手袋を投げつけた。
「きゃあ!!」
「大丈夫かセリス!」
「は、はい...大丈夫です、レイル様」
投げつけた手袋は見事に顔面に直撃した。
どうやら、セリスの右目に当たったらしく、目が少し赤く充血していた。
それだけではなくどうやら相手に手袋を投げるのは決闘を意味するらしい。
「貴様スレイン!! よくも、セリスに怪我をさせたな! 決闘で手を抜くことはないと思え!!」
そう言ってスイレンの手袋を拾い決闘を受けると言わんばかりに前に突き出した。
しかし、シニエスタさんが庇うように前へと出てきた。
「殿下、この決闘はスレインとセリス様によって行われるものです。いくら王族であろうと神聖な決闘を汚していけません!」
「ほう、では代理としてなら問題ないだろう」
そう王子が言うと、王子の取り巻きであった四人もぞろぞろと代理として立候補していた。
「殿下、我々も代理として戦います」
「そうだね、この美しい僕も戦うよ!」
「私も彼女の剣として、この身を捧げよう」
「要は全員ぶっ潰せばいいんだろ? 覚悟するんだなお姫様と異端者」
王子のを含め取り巻きも合わさり計五人が彼女たちの前へと立ちはだかる。
「どうだスレイン? 今更、この戦力差を見て怖気着いたなど言わせないぞ」
「クッ...」
どうやら状況は最悪のようだった。
状況を整理すると、まずセリスの方には王子とその取り巻きが代理として立候補し、その反面、スレイン嬢にはシニエスタさん一人であった。
それに決闘という点では尚更彼女たち二人には勝ち目がないだろう。
「さあ、スレイン、お前の代理はそこの異端者だけか?」
王子がそう言うと周りにいた貴族たちは次々に笑い、陰口を始めた。
それは代理のいないスレイン嬢の終わりを皆、悟ったからであろう。
するとスレイン嬢の顔にもだんだん焦ったような表情に変わっていく。
「シニエスタ、もうこれ以上は私一人で大丈夫です。貴方は下がりなさい」
「そんな!? 貴方は何も悪いことなどしていないでしょう。それなのに何故!」
「これは私の蒔いた種です。それに...私たちに勝ち目はない」
「でも...」
「あはははっ! やっと分かったかスレイン。だがもう遅いぞ! 決闘は取り消せない。それにそこの異端者を庇ったところで逃がしはしない。そこの異端者には奴隷としてさらし者にしてやろう」
そう言いながら笑い始める王子。
これでは悪役が正義を語っているようにしか見えない。
それに周りにいたスレイン嬢の取り巻きたちも冷や汗をかきながら見て見ぬふりをしていた。
どうやらもう彼女に仲間は一人もいなかった。
そんな時だった。
「はいはい皆さん、俺が彼女の代理として立候補させていただきます」
たった一人の騎士が声を上げたのだった。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。
さてさてこんかいはどうだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!
それから今週は多く更新できなくてごめんね!
またまた私的な話。
今週の月曜日にワクチン3回目を打ってきます。
痛かな...( ;꒳; )
しかも今週に限って土日に力仕事のバイトなので死んだかもですけど、頑張って小説だけは書きたいな。
それではそろそろ最後の挨拶。
最後に評価と感想とブックマークを忘れずに!!
それではまた次の更新の時にお会いしましょう!
また読んでくれると嬉しいです!!




