火蜥蜴と旅立ち
第16話〜火蜥蜴と旅立ち〜
突如現れた怪物は、この真っ白な世界を否定しているかのような存在だった。
真っ白な鏡の世界に、一人の真っ黒な存在。
体も顔もその存在そのものが、黒いモヤのようなもので覆われており、その素性は一切わからなかった。
しかし、わかることが一つだけある。
それは、あの黒いモヤの中は、俺の知人であることは間違いない。
何故わかるのかと言われたら、確証はないが人間の本能的感覚がそう言っているのだ。
そして、俺はゆっくりと黒いモヤに向かって近づいて行く。
一歩、また一歩と近づいて行くが、黒いモヤは全く動く気配がなかった。
一体全体なんだと言うのだろうか。
俺は好奇心と恐怖を同時に抱えながら、黒いモヤの目の前へと立つ。
「...」
ピクリとも動かないかった黒いモヤだが、目の前に俺が立つと、顔?の部分が、俺の方に向けられ、目がないのに視線を感じられた。
そして次の瞬間、黒いモヤが唐突に動き出し、手のような部分が現れ、俺の胸辺りに触れた。
すると黒いモヤに触れられた箇所から、体には焼けるような激痛が、全身に駆け巡った。
また、黒いモヤは何か言葉のようなものを、発しているが全くわからなかった。
「 テシマサヲメ、ノウトンホ......キウュリ...」
「うっ...うがっ......ああ、ああああああああぁぁぁ!!」
体全身が熱く、目からは炎のようなものが飛び出す。
そして、あまりの激痛に悶え苦しみながら、俺はついに意識が遠のいた。
ーーーーーーーーーーーーーー
王城〜休憩室〜
目が覚めると、ソファーの上で寝ており、あの部屋にはいなかった。
起き上がると、寝起きのように体が重く、そしてだるい。
辺りには綺麗な家具などが置いてあり、特に変わった場所ではなく、おそらく王城の中で間違いない。
しかし、目覚めたが誰もおらず、状況があまり理解できなかった。
「ニーズヘッグはどこに行ったんだ? それにリリィーも...」
部屋から出ると、廊下に続いてはいるものの、使用人や衛兵の姿が見えない。
警戒しながらも、俺は廊下を適当に歩き出してみる。
「リリィー、ニーズヘッグ...どこにいるんだぁ?」
そう叫んでみるが、応答はない。
俺は不思議に思い、小走りで廊下を駆けていく。
そして、突き当たりの角を曲がると、同時に人だかりを見つけた。
その人だかりの向こう側には、はぽっかりと穴が空いており、誰かが爆破でもしたのだろうか。
周りの人の会話を聞いてみるが、あまり有力な情報は得られなかった。
王城で俺が寝ている間に何があったのだろうが、リリィーたちが巻き込まれているかもしれないと、不安が募るばかりであった。
そして、俺がその場を去ろうとした時だった。
「あの〜、少しよろしいでしょうか? 私はここの使用人をしておりますパルマと申します」
そう言われ振り向くと、そこには使用人の女の子がいた。
またパルマと名乗る使用人は、今まで会ってきた使用人とは別格で、その気品や仕草はまさに一流だとわかる。
そして、彼女は続け様にこう言う。
「ヨグ・ランスロット様ですよね? ...えーっと、先帝様がお呼びでございますので、着いてきていただけますか?」
「先帝様が俺に? ま、まあとりあえずわかったすぐに行こう」
その後、使用人パルマについて行くが、まるで迷路のような王城を迷いもなく、案内してくれている。
スタスタと歩いて行く彼女は、寡黙だが真面目でいい子なのだろう。
しかし、他の使用人とはどこか違うのだ。
そうしている間に、目的地へと案内され、彼女はドアを開け、俺に中に入るよう伝える。
そして、部屋の中に入ると目の前には先帝様、ギルド長そしてニーズヘッグ(槍)を持ったリリィーの姿があった。
「ヨグ様!」
「リリィーここにいたのか! 良かったぁー」
「すみませんヨグ様。急にヨグ様が倒れてしまったので急いで寝かせてもらいました」
「そっかー、リリィーには迷惑をかけてばかりだよ」
「私は迷惑だと思っていませんよ。ヨグ様のためならなんでもしますので!」
「うんありがとうリリィー、あれ? アイラちゃんは?」
「エホンッ、あーヨグよ。とりあえず席に座ってくれるかの? 話さなければならないことが沢山ある」
「あっ...申し訳ございません先帝様。それで私が寝ていた間に何があったのですか?」
「うむ、鍛冶師グレイが襲われ殺害されたのと同時に罪人アクノが消えたのじゃ。わしらが会議でいない間にのぉ」
「それで犯人は...」
「それがわからぬ、黒ずくめの集団であったのは間違いないのじゃが侵入経路や人数、容姿は言わずもがな、死体もなければ血痕一つ落ちておらぬ」
「ありえない、黒ずくめの死体はいくつもあったはずです。それよりも、アイラちゃんは今どこに?」
俺がそう言うと、ギルド長が手を上げてこう言った。
「彼女については僕から話すよ。今彼女はとても危険な状態なんだよ。ちょっとやそっと目を離したら、すぐにでも自害を図りかねないからね。今は別に部屋で監視のもと、休ませているよ。でも回復の見込みはない」
「そ、そうですか...」
「そう落ち込むでないヨグ。そなたがいたから少女は襲われず今も生きておる。それよりも我が王城に侵入し、魔法で作られた壁を破壊できる実行犯など他国の者、しかも大国の可能性が高いのぉ」
「帝国や聖王国辺りでしょうか...。どちらにしても厄介なのは間違いありません陛下」
「うむ、わかっておるがどちらも難敵じゃ。だがまだ決めつけるにははやい。それに今古都内に兵を派遣し捜索させておる。実行犯も人であるなら、まだこの領内におるはずじゃ。もし敵国の仕業なら尚更慎重にならねばならん。そういうわけじゃヨグ、そなたがまず目先の学園へと備えるのじゃ。この問題は長く続くじゃろう」
「はい...わかりました先帝様」
そうして、なにも進展しないまま話が終わり、翌日にはグレイの火葬が行われた。
しかし、そこにアイラの姿はなく、居たのは先帝様の使いと一部の知人のみで行われた。
雨の降る中、俺はグレイの火葬を目の前に、悔しさと不甲斐なさを抑えるので、精一杯だった。
時間が過ぎるのはあっという間で、グレイの火葬も終わり、数日がたった頃だった。
古都の外側〜大門〜
俺とリリィーは、学園のある王都へと向かおうと、古都から出ようとしていた。
その後ろには、馬車に乗ったランジェと、それを護衛するエルラを含む、騎士十人程が並んでいる。
すると、馬車の窓が開き、中からランジェがひょこっと顔を出した。
「ヨグ、私と次に会うのは学校よ。同じ生徒として身分なんて、気にせず声をかけてくださいね。それに、あなたの活躍には期待してるわ。先日の件はとても残念だけど、いつまでもクヨクヨしていてはいけないわよ」
「ええ、もう立ち直りましたともランジェ様。それから道中の魔物にはお気をつけて」
「私も竜兵装に乗れればいいのだけど、無理な話なのよ。それじゃあね、あなたたちこそ気をつけて、あと学園であったら大空の旅の話を楽しみにしてるわ」
俺は彼女に一礼すると、馬車は動き出し森の中へと入っていった。
「さあ我らも向かうぞ、ランジェ様に続け!」
エルラと護衛騎士たちが、いっせいに馬を走らせ、馬車をおっていった。
すると、辺りには誰もがいなくなり、静まり返る。
では俺とリリィーも行くとしよう。
「ニーズヘッグ頼んだよ!」
「はいマスター...こちらニーズヘッグドラゴンフォームへ変化しました。それではマスターとリリィー様、操縦席へお乗り下さい」
そう言われ、俺が操縦席へ乗り、その膝の上にリリィーがちょこんと座る。
一応、安全装置をリリィーと俺の体に巻き付け、場所を固定する。
そして俺はニーズヘッグと意識をリンクさせる。
「リリィー、少し動くけど我慢してね」
「えへへー、ヨグ様の体に密着できるのでこれは役得ですぅ!」
「ま、まあ、危ないから暴れないなら大丈夫だよ。それでニーズヘッグ、ここから王都までどのくらいかな?」
「はいマスター! ここからなら一日もあれば着きますので休憩も入れつつ移動しましょう! 予定では今日の夜には着くと考えております」
「そっか、じゃあ飛ぶよ!」
「こちらニーズヘッグ離陸体勢に入ります!」
ニーズヘッグの体がふわりと浮かび、地面と足が離れていく。
そして、準備ができたのか、一旦停止し、浮かび上がった状態のまま止まってしまう。
「準備万端ですマスター! あとはマスターが羽を広げてくれればいつでも飛べます」
「了解! リリィーしっかり捕まっててね!」
俺はそう言って背中に力を入れるイメージで羽を広げた。
するとニーズヘッグのエンジン音が大きくなっていく。
そして...。
「こちらニーズヘッグ...飛びます!!」
その掛け声と同時に、俺とリリィーは大空へと飛び去った。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。
そして次回からはついに王都学園編に突入致しますのでこれからどんどん面白くなりますよー!!
それはさておき、今回のものはどうだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!
それからTwitterの方でちょいネタバレ的なことを書き込んでいるので考察したいと言う方は大歓迎でございます!
最後に簡単な挨拶になりますが評価と感想を忘れずにお願いします!(ブクマも重要)
それでは改めて応援よろしくお願いしますm(_ _)m
目指せ書籍化ああああああ!!!




