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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode−09 受け継がれる記憶と想い出
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Scene:06 密林の軍団(3)

 三台の飛行戦車エアパンツァーは、生い茂った木々をなぎ倒しながら進んで来ており、最高速度を出すことが出来ないようで、エアバイクとの距離を縮めることまではできなかったようだ。

 しかし、一定の距離を保ったまま、追尾して来て、ビーム砲を放ってきた。

 逃げるシャミル達は野性的な勘でエアバイクのお尻を振りながら、レーザービームをかわした。

 この大きさの口径のビームに直撃されると、いかにパーソナルシールドを展開しているとは言っても、その衝撃までは吸収することはできずに、相当な衝撃を受けるはずであり、そもそも、エアバイクは破壊されてしまう。

 キャミルを通り過ぎたレーザービームが一つ前を飛んでいたサーニャのエアバイクの動力部分を直撃した。

 衝撃でサーニャは真上に放り投げられたが、すぐ後ろから来たキャミルがちょうど落下してきたサーニャの腕を片手でつかみ、そのまま自分のエアバイクの後部座席に座らせた。

「助かったにゃあ!」

「背中からレーザービームが飛んで来るから気をつけろ!」

 そんなことを言われて後ろを見られる余裕がある訳もなく、サーニャは、キャミルの背中にしがみついていた。

 キャミルは、エアバイクの速度を危険な状態にまで上げ、前を走るカーラの横に付けた。

「カーラ! サーニャを頼む!」

「へっ? どうするつもりだい?」

「ここままじゃらちがあかない! サーニャ! 飛び乗れるか?」

「もっと前に出てもらえれば大丈夫だにゃあ!」

 キャミルがアクセルを限界まで吹かして、カーラの前に出ると、呼吸を合わせて、サーニャがカーラのエアバイクに飛び乗った。

 それを確認したキャミルは、ハンドルを右に切りUターンした。

 飛行戦車エアパンツァーに自分の姿を見せつけるように、しばらく、飛行戦車エアパンツァーに向かって行ったキャミルは、今度は、左にハンドルを切り、直角に曲がった方向に走り出した。

 すると、三台の飛行戦車エアパンツァーは、直進していたシャミル達のことには目もくれずに、キャミルを追い掛けるように右に曲がった。

 飛行戦車エアパンツァーが自分達を追って来なくなったことが分かったシャミルは、エアバイクを停め、振り返った。

 すぐに追いついたカーラもエアバイクを停めた。

「キャミルは?」

「たぶん、じぶんがおとりになったんじゃないだろうか?」

「えっ?」

 シャミルが遠くに目をやったが、生い茂った密林は、キャミルと飛行戦車エアパンツァーの姿をまったく見せてくれなかった。



 キャミルは、飛行戦車エアパンツァーが三台とも自分の後をついて来ていることを確認すると、エアバイクを急停止させると同時に反対に向きを変え、すぐにアクセルを吹かして急発進すると、飛行戦車エアパンツァーとすれ違った。

 飛行戦車エアパンツァーもすぐに急停車すると向きを変えて、お互いの間隔を広げながら、再び、キャミルを追って来た。

 キャミルが左寄りに進路を変えて、急ブレーキを掛けると、一番左側を飛んで来ていた飛行戦車エアパンツァーも急ブレーキを掛けたが、大きく重い飛行戦車エアパンツァーはすぐに止まることができずにキャミルを通り過ぎた。

 しかし、キャミルもまた、すぐにエアバイクを発進させて、その飛行戦車エアパンツァーに追いつくと、その横を平行して走り出した。

 その飛行戦車エアパンツァーは蛇行運転や急転回をしてキャミルを振り切ろうとしたが、機動力に優れるエアバイクは、キャミルの運転技術もあり、飛行戦車エアパンツァーの横腹にぴたりと付けたままだった。

 他の二台の飛行戦車エアパンツァーは速度を合わせながら、キャミルが密着して飛んでいる飛行戦車エアパンツァーの方に砲身を向けると、二台がともにビーム砲を放った。

 そのタイミングを予期していたように、キャミルが急ブレーキを掛けると、キャミルを置いて飛んで行ってしまった飛行戦車エアパンツァーにビーム砲撃が直撃した。

 味方に砲撃された飛行戦車エアパンツァーは爆発して飛行不能になり、地表に惨めな残骸を撒き散らした。

 キャミルは、また飛行戦車エアパンツァーの一台に近づくと、その飛行戦車エアパンツァーの横腹にぴったりと張り付いて飛行した。

 今度は、もう一台の飛行戦車エアパンツァーがビーム砲で狙ってくることはせず、キャミルを挟み込むように並んで飛行しだすと、キャミルをエアバイクごと押しつぶそうと、二台の間隔を詰めてきた。

 しかし、二台に挟まれる直前、キャミルは、地面すれすれまで高度を下げると同時に急ブレーキを掛けた。

 二台の飛行戦車エアパンツァーも急ブレーキを掛けたが、すぐに止まることができなかったばかりか、ブレーキのせいで体勢が崩れてしまい、飛行しながらお互いに接触してしまった。

 やっと止まった飛行戦車エアパンツァーが体勢を立て直して反転した時には、既に、キャミルは飛行戦車エアパンツァーの視界から消えていた。

 キャミルは、腕の情報端末を使い、東にそのまま進むようにシャミルに伝えると、シャミルの跡を追うように最高スピードで飛んで行き、間もなく追いついた。

「キャミル、あの兵器は?」

 隣に並んでエアバイクを走らせながら、シャミルが叫ぶように声をあげて訊いた。

「あれは惑星軍で使用している飛行戦車エアパンツァーだ!」

「あれも軍の兵器なんですか?」

「ああ! しかし、追っ手からは、かなり距離を稼ぐことができたから、機動力に勝るエアバイクには追いつけないだろう! サーニャ! 後ろの飛行戦車エアパンツァーの飛行音はどうだ?」

「小さいままだにゃあ」

「よし! このまま街までひた走るぞ!」

「分かりました!」

 シャミルとキャミル、そしてカーラとサーニャが乗った三台のエアバイクは東へ東へとまっしぐらに走って行った。

「前から同じ音がするにゃあ!」

「えっ?」

 エアバイクを急停車させたシャミル達の目の前に十台以上の飛行戦車エアパンツァーが取り囲むように出て来た。

 シャミル達の逃亡方向を察知した敵が回り道をして待ち伏せをしていたのだ。

 シャミル達は、Uターンしようとしたが、最初に追って来た二台の飛行戦車エアパンツァーが追いついて来て、シャミル達は飛行戦車エアパンツァーに取り囲まれてしまった。

 正面にいた飛行戦車エアパンツァーの砲塔の上にある扉が開くと、軍服姿の男性が姿を見せた。

「もう逃げられんぞ! 大人しく投降しろ!」

 キャミルが素早く確認すると、男性が来ているのは惑星軍の軍服で、大尉の階級章を付けていた。

「私は探検家のシャミル・パレ・クルスと申します。この三人のスタッフとともに生物調査に来ているだけです。民間人に対するこの威圧行為はどういう理由でしょうか?」

 エアバイクを降りて、一歩、前に進んだシャミルが尋ねた。

「装甲機動歩兵を剣で活動停止にできる民間人など聞いたことがありませんな! 思い当たる人は一人しかいませんぞ。キャミル少佐!」

 惑星軍大尉は、シャミルの後ろに立っていたキャミルを見つめていた。

「ほう、私の正体を知っての上か?」

「はい。だからこそ、殺すことなく捕虜とするようにと命令が変更されました」

「私達を捕らえてどうするつもりだ?」

「我々の代表者から話をさせていただきます」

「代表者とは誰だ?」

「私には答える権限がありません」

「ならば、大尉! 貴殿の所属と氏名を答えろ!」

「その質問にもお答えできません!」

 飛行戦車エアパンツァーに囲まれて、レーザー砲台の照準を合わせられている状態では、惑星軍大尉の命令に従うしかないようだ。

「どうぞ、我々と一緒に来ていただきたい」


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