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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode−09 受け継がれる記憶と想い出
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Scene:05 とある人物からの探査依頼(1)

 首都惑星アスガルドと同一軌道を公転する、軍事の中枢である惑星スヴァルトヘイム。

 アルスヴィッドは、武器を満載したヤルンサクサ号を曳航えいこうして、スヴァルトヘイムの第一軍港に着陸した。

 改めてヤルンサクサ号が積載していた兵器や武器を見てみると、大量のパーソナルシールドとともに、惑星軍の主体戦力である強化装甲歩兵の旧型強化服(パワードスーツ)まであり、武器または兵器の密輸品とすれば、過去に例を見ないほどの量と質であった。

 この貨物船を所有する運送商会には、連邦軍の憲兵が事情を訊いたが、自船の名前をかたられただけで、密輸とはまったくの無関係であると主張し、それは信頼できると判断された。

 おそらく、連邦軍に知られていた船籍コードの船から、どこかで、このにせヤルンサクサ号に積荷を積み替えて、この首都空域までやって来たのだろう。

 キャミルがこれを見破らなければ、数多くの武器や兵器が密かに首都に持ち込まれていたところだった。

 連邦政府は、テロの危険性が高まったとして、首都空域の警戒態勢のレベルを上げた。

 そんな緊迫の度合いを増している空域に、緊迫とは無縁なアルヴァック号がやって来ていた。



「ふあ~あ」

「カーラが欠伸あくびをすると、空気が薄くなるにゃあ」

 お約束どおり、サーニャが突っ込んだ。

「そんな訳ねえだろ! アタイの肺活量はどんだけなんだよ!」

「少なくとも、アルヴァック号の乗組員の中では一番酸素を消費してるにゃあ!」

「ピキー!」

 相槌あいづちよろしく、サーニャの足元にちょこんと座っていたピキも一鳴ひとなきした。

「何だよ、お前ら! 寄ってたかって、アタイをいじめるなんてさ! 船長、いじめだよ、いじめ! この二人、って言うか一人と一匹を注意しておくれよ」

「えっ?」

 カーラが船長席に座っているシャミルに振り向きながら言ったが、シャミルは、自分の左腕にはめた情報端末から目を上げ、ぽかんとした目でカーラを見つめた。

「何だよ、聞いてなかったのかよ?」

「ごめんなさい。何ですか?」

「もう良いよ。船長なら良い感じにボケてくれると思ったんだけどな」

「何ですか、それ? 私はカーラ専門の突っ込み芸人じゃありませんよ!」

「アタイ達にとっては、いつも笑いを提供してくれる芸人みたいなもんだけどな」

「どう言う意味ですか?」

「へへっ、それより何を見てたんだよ?」

「ち、ちょっとね」

 頬を膨らませて怒っていたシャミルが、一転、バツが悪そうな表情をした。

「どうせ、キャミルにメールでも送ってたんだろ?」

「分かってるのなら訊かないでください!」

「逆切れかよ! ったく! 一瞬の気のゆるみも許されない航行中だって言うのに!」

「ご、ごめんさない。……って、カーラだって、さっきまで、サーニャとおしゃべりしてたじゃないですか!」

「あれっ、そうだっけ、サーニャ?」

「もう忘れたにゃあ」

「とぼけても駄目ですよ!」

「ははは、それより船長。今回は、どうして、アスガルドに来たんだ?」

 イリアスの「聖セイラ園」を訪れた後、探検家ギルドで依頼を受けた訳でもないのに、シャミルから「アスガルドに行く」と理由も告げずに命ぜられて、アルヴァック号は首都空域にやって来ていた。

「とある方からの依頼を受けに来たのです」

「とある方? 誰だい?」

「キャミルから紹介されて連絡があったのですけど、実際にお会いするまでは秘密にしてほしいと言われているので、いくら、カーラやサーニャでも話すことはできませんよ」

「何だよ~、そんなに言われると余計に気になるじゃないか!」

「船長のことだから、危険なことと分かってて、依頼を受けたのかもしれないからにゃあ」

「本当だぜ」

 時に無鉄砲とも思える依頼を受けてしまうシャミルであったが、二人の副官は、文句を言いつつも、シャミルのことを信頼しきっていた。

「惑星探査だって、毎回、危険なことだらけじゃないですか」

「それはそうだが」

「今度の依頼主は、キャミルのお知り合いで、信頼できるかたですから心配無用ですよ。いつもと同じようにするだけです」

 アルヴァック号をアスガルド第二宇宙港に停泊させたシャミルと二人の副官は、エアカーをレンタルして、シャミルの指示した道を、ミッドガルド市の郊外に向けて走った。

 間もなくエアカーは、歴史的な荘厳さを感じさせる建物の正面玄関に車を着けた。

 そこはホテルのようで、待機していたドアボーイにエアカーのキーを預けると、三人は中に入って行った。

 フロントで名前を告げると、ロビーのソファに座って待つように案内された。

 シャミル達の他には誰もいないロビーのソファに三人が並んで座ると、それほど待つこともなく、背の高い背広姿の品の良い初老の紳士が近寄って来た。

「シャミル殿ですね?」

「はい」

 三人が揃ってソファから立つと、男性が、シャミルに手を差し出した。

「連邦宇宙軍第一師団長フレイドマール大将です」


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