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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-08 仮想現実の国盗り物語
172/234

Scene:02 フェンサリルの休日

 キャミルからのメールで、三日間の連休をフェンサリルで過ごすということを知ったシャミルは、惑星探査を後回あとまわしにして、泊まりの準備も抜かりなく、キャミルの家に来ていた。

 連休初日の昼食後、コーヒーを飲んでいる時に、キャミルは、キャビネットから「サムライ・オンライン」の端末二つを取り出し、一つをシャミルに差し出した。

「メールで言っていたゲームの端末はこれなんだよ」

「へえ~、仮想現実大規模多人数ヴァーチャルリアリティマッシブリーマルチオンラインゲームなんて初めてです」

「もちろん、私もだ。でも、マサムネから話を聞いて、ちょっと調べてみたけど、今は、様々(さまざま)な種類のオンラインゲームが発売されているらしいな」

「そうなのですか? どんな種類があるんですか?」

「架空のファンタジー世界でモンスターを退治するという物が一番多かったみたいだな」

「ふ~ん。探検航海をすれば、未知の星でモンスターのような生物に襲われることは、リアルで体験できますけどね」

「確かに、リアルな体験にはかなわないだろうが、危険を冒さなくても、同じ体験を仮想現実ヴァーチャルリアリティの中でできるのなら、誰だってお手軽なほうを選ぶだろうな」

「まあ、リビングで探検依頼がこなせるのなら、私もしてると思います」

「私だって、リビングで海賊退治ができるのならやってるよ」

「ふふふふ、そうですね。でも、今回は、レンドルさんの依頼でもあるんですよね?」

「ああ、少し胡散臭うさんくさい気もするが、このゲームで死者が出ているようだからな」

「私もキャミルから話を聞いて調べてみました。大々的に報道はされていませんけど、確かみたいですね。それと」

 シャミルが左手首の情報端末を操作すると、目の前に空間に百科事典の画面が映し出された。

「マニュアルを読んでいて、気になるところもあったので、日本についても少し調べてきましたよ」

「相変わらず、することが速いな」

「へへへ、キャミルと一緒に遊べるのがうれしくて」

「やれやれ」

「それと、同じテラの生まれなのに、日本地区のことをあまり知らなかったのが、少しくやしかったので頑張りました」

「私もマサムネから話を聞く範囲でしか知らなかったよ」

「マサムネさんの実家は、今も日本地区にあるとおっしゃっていましたよね?」

「うん。マサムネの実家は、日本に古代から伝わる武術を伝承しているらしい。マサムネがいつも使っている変わった剣があるだろう? あれも日本独自の剣で『かたな』と言うらしい」

「刀が持てるのは、侍だけのようですけど」

「マサムネの祖先もきっと侍だったのだろう」

「私が調べたところによると、侍は独特の風習を持っていて、馬に乗れるのは上級の侍だけのようですね。それから、何か失敗すると、『切腹』と言って、腹を切って自害するならわしのようですよ」

「自分で腹を切るのか? すごいな。しかし、そのシーンもリアルで再現されるのではないだろうな?」

「このゲームは、十五歳以上であれば誰でも遊べるみたいですから、そんなに残酷なシーンは出て来ないと思いますよ」

「ちょっと安心したよ」

「いつもは真剣でバッタバッタと敵を切り倒しているのに?」

「だからさ。疑似体験のゲームの中でまで、そんなシーンは見たくないからな」

「ふふふふ、そうかもしれませんね」

 キャミルが剣を振るっている時には、そんな女性的な表情は見せないのに、シャミルといる時に弱みとも思える一面を見せてくれることが、シャミルはうれしかった。

「とりあえず、今回は、三時間くらい遊べば良いんですよね?」

「うん、ゲーム内で一日半ちょっとだ」

「キャミルとは、やっぱり、リアルで触れ合っていたいですし。明日は、どこかにお出掛けしましょうね」

「触れ合う意味が違うんじゃないか?」

「えへへ。でも、多くのプレイヤーは、このゲームに夢中になって、何日も遊んでいるんですよね。マニュアルを読むと、特に、クリア目標のようなものは無いみたいなんですよね」

「そうみたいだな。プレイヤーは、自らのスキルを上げつつ、仮想現実ヴァーチャルリアリティ世界の生活を楽しむことが目標と言えば目標になるのだろう」

「確かに、過去の生活を体験することは、タイムスリップでもしない限り、現実には無理ですものね。未開種族の生活の中に身を置いていると思えば、私も夢中になるかもです」

 ヨトゥーン族やモルグズ族といった未開種族と交流したことのあるシャミルは、そこでの、ゆったりとした時の流れを思い出していた。

「スキルを上げるためには、殿様の依頼を遂行すいこうしたり、ダンジョンでモンスターを倒したりしなければならないようですけど、その中で、珍しいアイテムが手に入ることもあるみたいで、更にスキルを上げて、もっと珍しいアイテムを手にしようと、自然にやり込んでしまうのでしょう」

「ゲームの中でも努力は必要ということか?」

「はい。他には、月に一度、『日本統一合戦』というイベントがあって、そのイベント期間中に、自分が所属している勢力が、他の勢力を全滅させて、日本を統一させると、色々と特典がもらえるみたいです。イベントが終了すると、若干の勢力バランスが変更された後、各勢力の領国は元の状態に戻るようですね」

「結局、終わりはあって無いようなものなんだな? だから、逆にめられなくなるのかもしれないな?」

「そうですね。それとオンラインゲームとしての面白味おもしろみとして、実際には何百光年と離れた惑星にいる人と共通の体験もできる訳で、現実リアルでは会うことができない人とも一緒に遊べて、友達にもなれるところも楽しいのでしょう」

「まあ、友達の作り方は人それぞれだからな。じゃあ、そろそろ、やってみるか?」

「そうですね」

 シャミルとキャミルはリビングのソファに並んで座り、端末ヘッドバンドを着けた。

「じゃあ、ログインするぞ」

「はい」


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