Scene:16 惑星軍情報部
軍事の中枢惑星スヴァルトヘイムにある惑星軍情報部本部のとある一室。
暗い部屋の中に二人の男がおり、壁に掛けられたスクリーンには、惑星ブラギンのオレイハルコン鉱山プラントが破壊される映像が映し出されていた。
「これをシャミルが?」
執務机に座った男が、その前の応接セットのソファに座っているレンドル大佐に訊いた。
「本人は記憶が無いなどと言っておりましたが、この時、シャミルの体が青く光っていることも確認できています。彼女がやったとしか考えられません」
「信じられん。何なのだ、この力は?」
「超念力だと思われますが、物質に対して強力に作用しすぎて、その原子構造まで変えてしまったようです」
「ジョセフが我々の前で見せた超念力とは桁違いだぞ」
「はい」
「やはり、既にリンドブルムアイズを?」
「彼女達がリンドブルムアイズを手に入れたという情報は確認できていません」
執務机の男は深く椅子に座り直して、顔を上げると、遠くを見つめているような目をして、部屋の壁を見つめた。
「あれから既に二十年近く経ったが、未だに見つからぬとは……」
「確かに長かったですな。しかし、見つかる気がしてきたのではないですか?」
「こう言う映像を見せられるとな。……シャミルを何とかできないか?」
「捕らえて生体実験でもするおつもりですか?」
「してみたいの。キャミル少佐を失踪させる訳にはいかんが、惑星探検家であるシャミルが、突然、行方不明になってもおかしくはない」
「探査航海中にブラックホールに飲み込まれたとか、惑星探査中に凶暴生物に襲われたとか、理由はいくらでも付きますからな」
「レンドル大佐! 手段は君に任せる! 何としても、シャミルを捕らえろ!」
「これはやっかいな指令ですな。私がウィンクをしても、シャミルは振り向いてくれませんぞ」
「それを何とかするのが、レンドル大佐ではなかったのか?」
「ふふふ、買いかぶりすぎですよ。しかし、私もあの二人には興味があります。今回の惑星ブラギンの作戦に、キャミル少佐を推したのも私です」
「単に個人的嗜好で行動しておるのではないだろうな?」
「若干、入っております」
レンドル大佐の表情は変わることはなかった。
「しかし、シャミルを不法に拘束するのには抵抗がありますな。まあ、ここは私にお任せください。シャミル自らが協力してくれるような形で調査ができる方法を考えますので」
「できるか?」
「キャミル少佐を使えば、何とでも」
不気味に笑ったレンドル大佐の視線の先には、既に何かが見えているようだった。




