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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-07 砂に埋もれた自由への鍵
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Scene:14 仕組まれた動乱(1)

 シャミルも、さすがに三日目の夜ともなると、砂漠で野営やえいすることにも慣れてきて、オアシスから風に乗って聞こえてくる様々(さまざま)な音が感じられるようになってきた。

 微風そよかぜ椰子やしのような植物の葉が揺れてこすれる音、コオロギのような虫の鳴き声、オアシスの岸辺に打ち付けるさざ波の音、砂漠ばかりの惑星であるが、確かに生きていた。

 夜遅くに最後の部族も到着して、オアシスのまわりに十六の部族が陣取り、夜を明かした。

 そして、翌朝。

 十六の部族長が、オアシスの岸辺きしべにある、ひときわ大きな椰子やしのような樹木の根元に集まった。そこは、オアシスを取り囲んでいる各部族からも見える場所であった。

 シャミルもノアト部族の中にいて、その様子を遠くから眺めていたが、ほんの十五分くらいで話は終わったようで、各部族長は自分の部族の元に戻りだした。

 アスクがノアト部族の元に戻って来ると、全員を集めた前で告げた。

「全部族の意思は統一された! これから全部族で申し入れを行う!」

「おおー!」

 男達は右手を振り上げて、雄叫おたけびを上げた。


 アルスヴィッド艦橋かんきょう

「ほう、どうやら申し入れが始まったようですな」

 オアシスのまわりに集まっていた各部族が一斉にオレイハルコン鉱山の方に移動し始めた映像を艦橋かんきょうモニターで確認したレンドル大佐がつぶやいた。

「キャミル少佐。あたりに不審な飛行物体などはいませんか?」

「ブラギン惑星軸四六−六六−一〇に飛行物体の編隊が確認されていますが、じっと身動きせずにホバリングしています」

「おそらく、グローイ軍のブラギン警備隊か、それとも、アングルボーザのならず者達ですかね。まあ、いずれにしろ、連邦の戦艦がいる前で、無茶な行動はしないでしょう」

「アルスヴィッドがここにいる理由はそういうことだったのですね?」

「ふふふふ。本当に心がぐなかただ。キャミル少佐は」

「はい?」

「おっと、そろそろ始まりますぞ」


 アスクの後に続いて、オレイハルコン鉱山の門前までやって来たシャミルは、その金属製の柵門さくもんの中で銃を構えて、威嚇いかくをしているグローイ族の警備兵を見た。

「アスクさん。警備兵がこっちをねらっていますよ」

「大丈夫だ。我々は暴力を振るうために来たのではない。話し合いに来たのだ」

 オレイハルコン鉱山の門前に十六の部族が整列して並ぶと、各部族長がそれぞれ進み出て、門の前に立った。

 その中から更にアスクが一歩前に出て、羊皮紙ようひしのような巻紙まきがみふところから取り出すと、大きな声で読み上げ始めた。

「グローイの諸君に告げる! 本日、モルグズの代表部族長会議において、フリーズキャルヴの返還を求める決議がされた! フリーズキャルヴは我らの聖地である! 即刻そっこく、その占拠せんきょを解くことを要求する!」

 柵門越さくもんごしに対峙たいじしているオレイハルコン鉱山の警備兵達は、未開人として馬鹿にしているかのように薄ら笑いを浮かべながらも、構えている銃を降ろすことはなかった。

「我らの申し入れに対するグローイの返答を求める!」

「我々は貴殿きでんらの申し入れに回答する権限けんげんゆうしない! グローイ本星に伝える!」

 警備兵の列の中から、一人だけ制服のデザインが違う、警備兵部隊の隊長と思われる男が一歩前に進み出て答えた。

「前回の申し入れの際にもそのような回答であったが、未だに回答はもらっていない!」

「答えは変わらぬ! 今日は撤収されよ!」

「いいや! 今日は回答若しくは明確な回答期限をもらうまでは撤収せぬ!」

「撤収しなければ、実力で排除することになるぞ!」

 アスクと警備隊長がにらみ合っていると、突然、ノアト部族とは別の部族の列から二人の男がそれぞれ走り出したかと思うと、何かを柵門さくもんに向かって投げつけた。

 ――次の瞬間!

 柵門さくもん閃光せんこうに包まれ、大きな爆発が起こった。

 怒号どごうと悲鳴の中、爆風で倒されたモルグズ族の部族民達が起き上がろうとすると、破壊された柵門さくもんから警備兵が押し出て来て、ビームライフルを放ち始めた。


 アルスヴィッドの艦橋かんきょうモニターにも突然の爆音が鳴り響いた。

「オレイハルコン鉱山の門が爆破されました!」

「大佐殿! これは?」

「まだです。まだ手を出す時ではありません。あっ、この映像はもちろん記録されているだろうね?」

 レンドル大佐の問い掛けに、艦橋かんきょうスタッフはうなづいた。

「けっこう」

「大佐殿! 鎮圧ちんあつしなくて良いのですか?」

「そうですなあ。まあ、準備だけはしておいていただきましょうか」

 まるでフィクションの映画を見ているように、緊迫感がないレンドル大佐であった。


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