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リンドブルム☆アイズ  作者: 粟吹一夢
Episode-07 砂に埋もれた自由への鍵
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Scene:09 砂漠の民(2)

 巨大ゴキブリの観察をしていたシャミル達に、隊商キャラバンの一行が近づいて来た。

 全員が、テラでも砂漠の民の衣装として知られているバーヌースによく似た、足首まである、ゆったりとした衣装を着て、白い布をヘッドバンドで留めたカフィーヤを頭にかぶっており、肌の露出部分は少なかったが、褐色の肌に黒い髪の種族のようで、紫色の瞳が特徴的であった。

 一人の体格の良い男性が前に進み出て来た。

「あなた方はグローイ族ではないな。どこから来たのだ?」

 ヒューマノイドとして、ラタトスクが有効に利いているようで、シャミル達は、その男性の言語を理解することができた。

「私達は、銀河連邦という、グローイとは別の星から来ました。あなた方は、モルグズ族の方々ですね?」

「そうだ。我々はモルグズと言う」

 星間移動技術どころか動力機関さえ持たない未開人ではあるが、既に別の星から来たグローイ族に事実上支配されているモルグズ族は、シャミル達が別の星から来たと言っても、まったく驚くことはなかった。

「助けてもらったことに感謝する」

 男性は握った両手を胸の前で交差させるポーズを取った。どうやら、モルグズ族の感謝のポーズのようだ。

「この生き物は何と言うのですか?」

「これは、タングリスニと言う」

「あなた達を襲おうとしていたのですか?」

「危なかった。こいつは我々を食べる」

「食人昆虫だったのかよ! 本当に危なかったんだな」

 カーラが巨大ゴキブリ「タングリスニ」を見上げながら言った。

「私はノアトのおさ、アスクと言う」

「私はシャミル・パレ・クルスと言います。こちらはカーラ、そして、こちらはサーニャです」

 シャミルと二人の副官はそろってお辞儀じぎをした。

「アスクさん。ノアトと言うのは?」

「ノアトは我々全員の名前だ」

 どうやら、五十人ほどいる隊商キャラバン全員が、「ノアト」と呼ばれる部族のようであり、アスクがその部族長のようだ。

「何かを運んでいるのですか?」

「これを売りに行っている」

 アスクが「これ」と言って指差した、ラクダのような生物の背中のこぶにぶら下げられたかごの中には、直径約五ミリほどの、からびた赤い果実のような物が入っていた。

「これは香辛料ですか?」

 シャミルは、この赤い実が、昨日、メグスラの街で食べた「サブラの香草焼き」にも入っており、むとピリッとした味覚を感じたことを思い出した。

「そうだ。これを売って、食料を運んでいる部族から食料品を買うのだ」

 どうやら、モルグズ族には定住地が無く、部族ごとに隊商キャラバンを組んで、特定の商品を運んで、必要とする部族にそれを売り払い得た利益で、別の部族が運んでいる食料や商品を購入するなどして生活をしているようだ。

 銀河協約を国是としている銀河連邦では、未開ヒューマノイド種族との接触は禁じられていることから、シャミルも今、目の前にいるモルグズ族に興味津々(きょうみしんしん)であった。

「これからも、タングリスニが襲ってくるかもしれないのに、この砂漠をずっと歩いて行かれるのですか?」

「タングリスニが一匹いれば、その周り二日夜には、もういない」

 アスクが言った「二日夜」とは、隊商キャラバンが二日間歩いて行ける距離だとシャミルは判断をした。つまり、タングリスニはそれぞれ縄張りを持っていて、おそよ五十キロ四方ごとに一匹しか棲息せいそくしていないようだ。

 シャミルは振り返り、後ろに立っていたカーラとサーニャに笑顔で言った。

「今日の捜索は、これまでにしましょう」

「えっ?」

「まだ、捜索始めて二時間も経ってないぜ」

「見つかる気がしないって言ってたのは、カーラじゃなかったでしたっけ?」

「ま、まあ、言ったが」

「ねっ! だから、今日はあきらめましょう!」

「……で、船長はどうするつもりなんだ?」

「わ、私はですね、このノアトの方々と一緒に歩きながら、もうちょっと話をさせていただこうかなあって思っているんですけど」

「そんなことだろうと思ったぜ」

「でも、船長、この砂漠を歩くのかにゃあ?」

「はい!」

「船長! 普段、歩き慣れてないのに、しかも砂の上を歩くんだぜ。止めておいた方が良いと思うが」

「覚悟の上です」

 こうなると、シャミルが自らの意思を撤回することはなかった。

「分かったよ。船長が行くって言うのなら、アタイも行くよ」

「ウチもにゃあ」

「えっ! ……二人は無理して付き合ってもらわなくても良いですよ」

「船長を残して帰ることなんて、できる訳ないだろ」

「そうだにゃ」

「二人とも……」

「船長! 感激するくらいなら行かないでくれよ」

「あっ! ……わ、私は行きますよ!」

「へへへへ。船長はやっぱり船長だ」

「本当だにゃ。ずっと、ついて行くにゃ」

「それじゃあ、アルヴァック号にはドーマルディに戻っておいてもらうか。呼んだら、すぐに来られるはずだ」

「そうですね。……あっ! でも、念のため、機密文書格納用保護箱シークレットドキュメントボックスのことを訊いておきましょうか?」

「そうだな」

「アスクさん、最近、空から火の玉が落ちてきたことはありませんか?」

「見た」

「そうですか。…………えっ!」


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