Scene:07 ロボット軍団襲来(1)
アルスヴィッドは、シャミルが送ってきた発信場所情報の地点に到着した。
「艦長! あそこにエアカーが見えます!」
よく見ると、その側に何人かの人がたむろしていた。遠くてはっきりとは見えなかったが、その中の二人はキャミルの良く知っている人物に見えた。
「よし! ここに着陸する! マサムネ! 百人を上陸準備させろ!」
「了解!」
アルスヴィッドが森の木をなぎ倒しながら着陸すると、船底の乗降ゲートが降ろされ、階段のように地面に接地した。
そのゲート内には、キャミルとマサムネが率いる精鋭部隊が既に待機しており、整然と隊列を組んで、惑星ハーナルに上陸した。
宇宙軍艦船の乗組員は、艦載戦闘機のパイロットなどの他には、基本的にその船に搭載された兵器を使って攻撃をするために必要な船員達であり、惑星軍の兵士達と比べると、白兵戦のための兵士達の技術は劣っているのが実情であるが、ことアルスヴィッドの白兵要員は、キャミルやマサムネと言った剣の達人である指揮官の指導の元、惑星軍の精鋭部隊に引けを取らない攻撃力と技術を持っていた。その精鋭ばかりを選りすぐった上陸部隊は隊列を組んだまま一糸乱れずに前進をした。
その目の前に、停車したエアカーがあり、すぐ側には、カーラとサーニャが立っていた。また、その近くには海賊メルザと二人の副官が倒木に腰を掛けていた。
「メルザ!」
メルザに気がついたキャミルはエペ・クレールを抜いて、数歩、メルザに近づいた。しかし、メルザは腰掛けたまま、いつもの冷笑を浮かべながら、キャミルに言った。
「お久しぶりだね。キャミルさん」
「シャミルは、シャミルはどこだ!?」
メルザは親指を立てて肩越しに後ろを指差した。そこには大きな亀裂が丘の麓に広がっていた。
「あの中にいるよ。シャミルさんとの約束で、一時間はここで待ってないといけないのさ」
「何! どういう意味だ?」
「キャミル! 実は……」
キャミルの側に近づいて来たカーラとサーニャが手短にこれまでの事情を話した。
「シャミルは、自ら敵の本拠地に入って行ったということか?」
「ああ、そうだ」
「カーラとサーニャは、なぜ、止めなかった?」
「船長が行くって言い張っているのを、アタイ達が止められると思うかい?」
シャミルの性格を誰よりも知っているキャミルも反論できなかった。
「それで、シャミルが入ってから、どれだけ時間が経っているんだ?」
「かれこれ五十分くらいだな。もう、そろそろ一時間になる」
「そのアリスという奴がシャミルを生きて返す保証でもあるのか?」
ことシャミルのことになると、若干、冷静さを欠くキャミルに、メルザが言った。
「キャミルさん、気持ちは分かるが、シャミルさんがそのアリスって奴と約束をして、自ら入って行ったんだ。私達が一時間経つ前に踏み込むことは、シャミルさんを嘘吐きにしちまうってことだよ」
「うっ」
キャミルは二の句が継げなかった。
「ふふふふ。後十分してシャミルさんが出て来なかったら、私も一緒に行くよ。シャミルさんを助けたいからねえ」
「お前の助けなど借りぬ!」
「まあ、それだけ兵士がいるのであれば、私は不要かも知れないが、私だって、シャミルさんのことが心配で心配でたまらないんだよ」
「メルザ! お前は、どうしてそれほどシャミルにこだわっているんだ?」
「それは、恋する乙女に、何で相手が好きになったんだって訊いていることと同じだね。野暮だよ、キャミルさん」
「何!」




