Scene:05 謎の巨大戦艦(1)
敵戦闘機がぶんぶんと周りを飛び回っているアルスヴィッドに、超巨大艦が近づいていた。
間もなく艦橋モニターにそれが映し出された。
「何だ、あれは?」
キャミルを含めて、アルスヴィッドの艦橋スタッフ全員が驚いた。
宇宙船のようだったが、巨大な直角柱のような形で、異種族を含め、連邦軍の艦船データベースに類似の物すら登載されていない、独特な形状であった。大きさも、その底面一辺の長さが二千メートルを超えており、アルスヴィッドとほぼ同格の大きさであったが、側面は一万メートルを超える長さであった。そして、そのフラットな面には、ぎっしりとレーザー砲が搭載されており、戦闘艦であることは明らかであった。
「さきほどの戦闘艦どころではないな。あれだけの大きさの宇宙船を造って浮上させるとは、かなりの技術力と設備、そして資金が必要だ」
「艦長、あれを!」
ビクトーレが指し示した艦橋モニターでは、直角柱の飛行物体の側面が五つに別れて、巨大なさいころのような正六面体五つの飛行物体に分解されたように見えた。
分裂後の一つの飛行物体ですら、アルスヴィッドと互角の大きさを誇る大戦艦であり、その敵戦艦五隻がアルスヴィッドに迫って来ていた。
「警告すると共に船籍情報を報告させろ!」
しかし、通信士からの警告に対して、五つの敵戦艦は無言のままであった。
「総員戦闘配置!」
今度の相手は侮れないと判断したキャミルが指示をすると、全艦に警報が鳴り響き、全砲門が開かれた。
果たして、五隻の敵戦艦からいきなりレーザー砲撃があり、アルスヴィッドにいくつか命中すると、あちこちの外壁でシールド爆発が起こった。かなりの衝撃でアルスヴィッドも大きく揺れた。
「敵艦隊より攻撃あり! 当艦はこれより応戦する! 艦載機は全機発射せよ! 砲撃手は艦載機の発射を援護しろ!」
敵戦闘機の相手をするために、既に何機かの艦載機が応戦中であったが、残りの艦載機も発射カタパルトから次々に飛び立って行った。同時に、アルスヴィッドの全砲門からレーザー砲撃が一斉に放たれた。
「当艦の被害はどうだ?」
キャミルは冷静であった。先ほど程度の揺れだと、外壁が破られていることはないと直感的に判断できていたからだ。
「G、F、M、Pの各地区の外壁が少々へこんだだけです!」
マサムネの報告に続き、砲撃部門の責任者であるビクトーレがキャミルの方を向いた。
「どうやら、先ほどの護衛戦闘艦と同じ旧式のもののようですが、砲門が大きいので、相当な破壊エネルギー量を持っています。直撃を何度も喰らえば危険です」
しかし、アルスヴィッドの艦載機がその機動力を駆使して、繰り返し五隻の敵戦艦に接近しては襲い掛かっており、致命的なダメージを与えることができなくとも、レーザー砲門やモニターセンサーと思われる箇所を個別に破壊することで、五隻の敵戦艦の攻撃力がすべてアルスヴィッドに向かってくることを回避することができていた。
また、敵戦闘機は驚異的な運動能力を持っていたが、搭載兵器の破壊力から言って、アルスヴィッドの艦載機に分があった。
一方で、アルスヴィッドが放ったレーザービームは正確に敵戦艦に命中しており、命中箇所にはシールドを突き抜けて外壁自体に爆発が起きていた。
副官席のマサムネが振り向いてキャミルに言った。
「艦長。こいつらも先ほどの護衛戦闘艦と同じく自動運行のようですな。撤退という選択肢は持ってないようです」
戦況は明らかにアルスヴィッド有利に展開しており、五隻の敵戦艦は、飛行もままならないほどダメージを受けているようであったが、どの敵戦艦も逃走しようとはせず、玉砕覚悟としか思えなかった。
また、敵戦闘機もほとんどが撃墜されていた。
「それなら我々の方から行く。艦載機を帰還させろ!」




