魔術都市アレ・テタル スライム・パニック前編
春になり雪の消えた街道を、護衛を連れた旅商人の馬車が連なって移動していた。農村から町へ向かう荷車、徒歩で町を移動する冒険者らが、互いに道を譲り合って行き交っている。
ガタゴトと揺られる馬車の旅も三週間続けば目新しさはなくなっていた。
「退屈ですね」
「馬車に乗ってるだけだとね~」
「景色も代わり映えしませんし」
「今日はまだ一度も魔物の襲撃がないしね」
遠くに暴牛の姿は見えたが、わざわざ狩るために馬車を止めると他の旅人にも迷惑だし、旅程がまた伸びてしまう。
「アレ・テタルが近くなって商人の旅団も増えてるからな。これだけ街道が賑わってたら、魔物だって警戒するんだろうぜ」
幌を開けた馬車の後部から見える街道には、徒歩の旅人や荷馬車が続いている。見張り番のコウメイは首をひねって肩をほぐしていた。馬のペースにあわせた旅は予想以上に退屈で、たまに出没する魔物の討伐が娯楽になるほどだ。
今日のヒロは御者台、コウメイは後方の見張り、アキラはこの揺れの中で読書中だ。暇を持て余しているのはコズエとサツキだけだった。女の子二人の他愛もない雑談とともに時間は過ぎる。
幌馬車の後ろから身体を乗り出して太陽の位置を確認したコウメイは、街道から逸れた草原に馬車を止めるようヒロに指示を出した。
「そろそろ昼飯にしようぜ。飯のときくらい落ち着いてゆっくりしたい」
「よかった。足を伸ばしたかったの」
「せっかくだから簡単なスープを作るか」
今朝方、前の町を出る前に買っておいたのだとコウメイが小さな卵を二つ取り出した。野営用の折りたためる五徳を設置し、火を起こして鍋を置く。干し肉で出汁をとったスープに味をつけ、豆を入れて煮立つのを待つ。豆が柔らかくなれば卵を溶き入れ軽くかき混ぜて完成だ。
横ではサツキが角ウサギの肉を串に刺して火にくべている。
「お肉はこれくらいの薄切りでよかったんですよね?」
「丁度いいよ。もう少し火から離した方が柔らかく焼けるよ」
「これくらい、ですか?」
サツキはコウメイの指示通りに串の位置を調整する。コズエとヒロは馬に水を飲ませ終えてから、アキラは木製の食器とスプーンを運んで鍋の周りに集まった。
「「「「「いただきます」」」」」
街道から見える場所で食事を取るコウメイたちを、旅人たちは羨ましそうに見ながら通り過ぎていく。閉門までに町に入りたい徒歩の旅人は、歩きながら携帯食を食べるのが普通だ。足を止めて休憩しても後で遅れを取り戻せる馬車の旅には、様々な意味で余裕がある。コウメイたちの近くでも、腰を降ろして昼の休憩をとる集団があった。
「お豆がやわらかい……」
「角ウサギ肉って久しぶりですよね」
柔らかい豆とふわふわの卵のスープが胃に優しかった。ゆっくりと炙った角ウサギの肉も柔らかく、旨味が閉じ込められていて薄味でも満足できる昼食になった。
馬車に戻り、アレ・テタルに向けて走りはじめてそれほど経っていない頃だった。
「ちょっと揺れます」
ヒロがそう言って馬車を街道の端に寄せた。石や草むらに車輪が乗り上げ、幌馬車が大きく揺れた。
「なんだ?」
蹄の音が土ぼこりとともに近づき、馬車の脇をすり抜けて走り去った。
「馬に乗っていたのは兵士のようでしたよ。もの凄く急いでるようでしたけど」
「アレ・テタルからの早馬か?」
「何かあったんでしょうか?」
アレ・テタルへと向かう他の旅団や徒歩の冒険者達も不安そうに土ぼこりを見送っている。
「まあ着いてみればわかるんじゃないか?」
+++
気楽に馬車を進めていたが、アレ・テタルに近づくにしたがって速度が落ちてきた。前方には都市の壁が見えていたが、馬車や荷車の列で街道には渋滞が起きていた。門に近い前方から落ち着かない気配が伝わってくる。
「この行列だと、閉門時間に間に合わなくなりそうですよ」
「都市側のゴタゴタで待たされてるんだろ? ここまで来てるんだ、多少の融通は利かせてもらわねぇと困るぜ」
そう言っている間に止まっていた列がゆっくりと進み始めた。進行方向を見ていると、商人の馬車や農村からの荷車などは西門に誘導されている。八の鐘はまだ鳴っていないというのに、東門は閉じられていた。周りに兵士の数が多いような気がするな、とコウメイが小さく呟いたところに、厳しい顔つきの門兵数人が幌馬車に近づいてきた。
「お前達は商人には見えないが、冒険者か?」
「そうです。これ、パーティー証です」
コズエの差し出したN629の証明を確認した兵士は、商人たちとは反対方向へと馬車を誘導した。
馬車が止められ、「降りろ」との指示が聞こる。五人は武器を持って馬車を降り、慎重にあたりの様子をうかがった。コウメイらの他にも集められた冒険者が何人もいた。
「ついてこい」
別の兵士に誘導され、冒険者達は幕で囲まれた陣に案内された。そこでは険しい表情の男達が地図を囲んでなにやら話し込んでいる。
「ギルド長、冒険者たちを連れてきました」
「突然ですまないな」
ギルド長と呼ばれて顔をあげた三人のうち、白髪の男性がコウメイたちの前に出た。警戒を隠さないコウメイたちに、初老の紳士は穏やかだが威厳のこもった口調で言った。
「私はアレ・テタルの商業ギルドのギルド長をしているクライスだ。緊急で申し訳ないが、捕獲の依頼を頼みたい」
「依頼?」
「捕獲、ですか?」
冒険者である自分達を呼んだのだから当然冒険者ギルドのギルド長だと思っていたら、商人ギルドだった。しかも捕獲の依頼だ。
「詳しくは準備が整ってから説明するので、まずはあちらで休んでいてくれ」
促された幕の中では炊き出しが行われており、三十名を越える冒険者達が湯気をたてるスープを飲みながら、落ち着かない様子で商人ギルド長らの様子をうかがっていた。
「なんか、嫌な感じだな」
「こっちの返事を聞きもしなかったしな」
話し合いの輪に戻った商人ギルド長から目を離さないように立ち位置を決め、コウメイとアキラはいつでも剣を抜けるようにと警戒を緩めなかった。
+
「スープ、もらってこようか?」
「ついでに聞き込みもしてみよう。何か知ってる人がいるかもしれないし」
コズエは待機している冒険者の中から、旅の道中で顔見知りになった何人かを見つけて声をかけた。自分達より早く街に着いた彼らなら事情を知っていると思ったのだが、溜息や頭を振られるだけだった。
「俺達も東門で止められて、こっちへ連れてこられたんだ」
「早馬が走っただろう、必要な物資を調達に行ったらしいと聞こえてきたが、詳しいことは後で説明する、だってよ」
「俺たちが依頼を受けると思い込んでいやがる態度に腹立つぜ」
「いつまで待たせるつもりかしらね」
待ち疲れたと肩をすくめたのは、女性の冒険者だった。炊き出しの係りから人数分のスープを受け取ったコズエとサツキは、自分達以外の女性を見つけて嬉しくなった。
「いつから待ってるんですか?」
「四の鐘の頃からよ。森に向かう途中で、街の鐘が異常を知らせたの。だから引き返したのに、その時はもう門が閉じられててね。それからずっと待機よ」
彼女はアレ・テタルを拠点にしている冒険者だという。彼女のパーティーメンバーの男達も固まって腰を降ろし、スープを飲み込むことで何とかイライラを押さえ込んでいるようだった。
「異常を知らせる鐘って、どういう音なんですか?」
「時刻の鐘は、カーン、カーンって感じでしょ。異常を知らせるときはカンカンカン、って感じに鳴るのよ」
街によっても鳴らし方は異なるが、時刻を知らせるものと異なる鐘が聞こえたら異常事態、緊急事態を知らせるものと思っていいそうだ。
話しこんでいるコズエたちを見て、コウメイやアキラたちが移動して来た。
「パーティー仲間なの。五人でさっき街に着いたばかりよ」
「よろしく、リザよ」
コウメイとアキラも名のった。
「あら、あなた、亜人族なのね」
「アキはウサギ獣人だよ」
魔術都市の冒険者は亜人に対する知識があるようだ、アキラを見て人族ではないと即座に見抜いた。エルフであることは確信が持てないようだが、コウメイの言葉を疑っているのは細めた視線からも明らかだ。
「この都市のことに詳しいなら教えて欲しい。冒険者以外の馬車や人は西門に回されているみたいだが、閉鎖されているわけじゃないのか?」
「西門は二重構造なのよ。内側の門は閉じていると思うわ。外の門を入ってから、結構な広場があって内門があるの。変な構造でしょ? 西門は王都側の門だから、色々あってそういう造りになってるらしいわ」
商人や旅人を門の外に放置できないため、苦肉の策で壁と壁の間の広場に収容しているのだろうとリザは言った。
「そろそろ日も暮れるし、早く決めてもらわないと困るのよね」
確かに、コウメイたちの馬車も馬ごと放置されている。馬と馬車をギルドに返却し、宿を決め、落ち着いてゆっくり休みたいのだが、状況がそうさせてくれそうになかった。
都市の偉い人たちが話し合いを続けている間にも、都市に入ろうとした冒険者達が集められていた。そろそろ幕のなかに入り切らなくなりそうだ。
「街の中はどうなっているのかしら。みんな無事だといいけど」
アレ・テタルの街の規模はナモルタタルの倍以上ある。その大半の人々が都市内に閉じ込められているのは尋常な事ではない。
集まった冒険者達がそろそろ黙っていられなくなった頃、ようやく話し合いが決着したようだった。幌のない荷馬車の上にあがった三人の人物は、それぞれ名乗りを上げてから事態の説明を始めた。
「現在、アレ・テタルの街は異常発生したスライムに占拠されています」
沈痛な面持ちでそう告げたのは、紫色のローブを着た小柄な中年女性だった。魔法使いギルドのギルド長だと名乗ったミシェルは、疲れきった顔で冒険者達をゆっくりと見渡した。
「都市内の人々には外出禁止が言い渡され、現在建物内に避難しており安全が確認されています。スライムに積極的な攻撃性はなく、一定以上の衝撃を与えなければ危険はありません」
「我々は協議の結果、冒険者の皆にスライムの捕獲を依頼することにした。スライムを破壊せず、種類別に捕獲してもらう」
冒険者に対して「依頼」をすると言ったのは、やはり商業ギルドのクライスギルド長だった。
「これは強制依頼だ。断る場合はアレ・テタルでのギルドの支援はなくなると考えてもらおう」
「それはアレ・テタルの冒険者ギルドから追い出されるってことか?」
冒険者たちからあがった声に、商業ギルド長が力強く答えた。
「冒険者ギルドだけではない、商業ギルドに職人ギルド、魔法使いギルドからも一切の支援を得られないと覚悟してくれ」
「横暴だぞっ」
「ドワイト、なんとか言え!」
高圧的なクライスの発言に冒険者たちから反発の声が上がるのも当然だろう。中年の冒険者から名指しされた冒険者ギルド長のドワイトは、苦々しくクライスを睨んでから冒険者たちに向き直った。
「街に閉じ込めているスライムを除去しなければ、門を開けることはできない。皆、協力してもらえないだろうか。街に入れなくて困るのは我々も君たちも同じだろう。正式に依頼として扱うのはもちろん、十分な報酬の用意もある」
「魔法使いギルドからは、今回依頼を受けてくださった方々から持ち込まれた魔石を、一年間の間二割増で買取することをお約束します」
魔法使いギルド長が発表した報酬に、冒険者たちが耳を傾ける気になった。魔術都市アレ・テタルでは、魔石の買い取り価格は冒険者ギルドよりも魔法使いギルドの方が一割ほど高いが、さらに二割増しで買い取ると約束するというのだ。
「冒険者ギルドからは、提携の宿屋と食堂に便宜を図ろう」
「商業ギルドからはスライム製品の優先販売と割引を約束しよう」
魔法使いギルドに比べてショボイ報酬だな、とコウメイが呟いた。
「この世界にもスライムっていたんですね」
「今まで見たこと無かったし、ギルドでも討伐対象の魔物リストにあがってこなかったから、いないと思ってた」
ゲームなら最初はスライム退治あたりから経験値を積むものだ。今まで出会わなかったということは、こちらではスライムはかなり特殊な魔物なのだろうかとコウメイは考え込んだ。
「討伐じゃなくて、捕獲か。なんかここのスライムって、モンスター扱いじゃなさそうだな」
「スライム製品とは何だと思う?」
「さあな」
コウメイたちの呟きを耳にしたリザが驚いてまじまじと五人を見た。
「あなた達、スライムを知らないの?」
「見たこと無いですね」
「森でも草原でも出没しなかったし、ねぇ?」
「ああ、そうか。あなた達アレ・テタルは初めてなのね」
納得だわ、と頷いたリザは、今回の捕獲対象になる特殊な魔物について知られている事を教えてくれた。
「スライムって多分この街にしかいないと思うの。自然発生する魔物じゃなくて、魔法使いギルドが作り出した人工モンスターなのよ」
「ぶよぶよしてるの?」
「そうよ、透き通ってて、薄く色が着いてるの。魔法使いギルドがクズ魔石を加工してネバネバでぷよぷよなモノを作ったら、それが魔道具と凄く相性がいいらしいって分かって。商業ギルドと共同でスライム製品を開発して売り出してるのよ」
結構便利よ、といって彼女は畳んで持っていた布を開いて見せてくれた。コウメイは布の表面を触った。薄いビニールでコーティングされているような手触りだ。
「これ表面に青スライムを塗ってある布で、水や汚れを弾く効果があるの。魔物狩りや魔獣狩りをして肉を持ち帰るときに、これで包むと服が汚れないのよ」
「これ、まんま防水シートだな」
「ホントですか、欲しいっ!」
ゴブリンの討伐部位を入れている袋は、血とゴブリンの体臭が染み付き洗っても落ちない。もったいないが使い捨てにしていた。魔獣の肉を運ぶ布だって、血抜きして解体していても包んだ布は血脂で汚れ、洗濯が大変だったのだ。これがあれば布の消費量もぐっと減るし、余計な仕事も省略できる。コズエは街に入ったらすぐに購入しようと決めた。
「スライム布はお手ごろだから買っておくといいわよ。あとは防寒服かな。スライム布で作った服はもの凄く温かくて、冬の狩りがとても楽だったわよ」
スライムには色によって特性が異なり、それぞれの性質に合わせて加工し製品として販売されているらしかった。
「スライムは魔法使いギルドの専用施設で飼育されているハズなの。それが街を占拠しているということは、飼育施設で事故でもおきたのかも」
魔法使いギルドの長が疲労困憊の様子なのも、報酬を奮発しているのも、そういうことなのだろう。
「コウメイさん、この仕事頑張りましょうよ!」
防水加工された布を手に入れたいコズエは両手を握り締めて気合を入れた。リザはお手ごろ価格だと言ったが、魔道具の類が安いはずはない。捕獲に参加すれば割引が確約なのだ、参加するしかないだろう。
「まあ、断れない強制依頼だから仕方ないけど、どうやって捕まえるんだろうな」
「破壊するなってことは、武器の使用は禁止か」
「一定以上の衝撃を与えなければ……どれくらいの強さの衝撃がダメなんでしょうか?」
ギルド長たちの話が終わり、各ギルドの職員らが冒険者たちの確認作業に入っていた。
+
「パーティー名N629は五人ですね。第四班に加わってください。貸し出される捕獲用具は後で必ず返却してくださいね。班長は魔法使いギルドの魔術師です」
「魔術師だってよ」
「攻撃魔術が見れるかもな」
アキラはフードつきのマントを被っていた。ごく普通の冒険者に「ウサギ獣人」を疑われたのだ、魔術師なら一目でエルフだと見抜くだろう。街に入る前から余計な詮索をされ目をつけられたくなかった。
五人そろって第四班に合流すると、濃赤のローブを着た青白い顔の痩せた男が、十人ほどの冒険者の前に立った。全員揃ったのを確認して捕獲の説明を始めたのだが、細い声でぼそぼそと喋るので何を言っているのか聞き取れない。
「きこえねぇぞ」
「腹から声を出しやがれ」
冒険者からあがった声に、青白い男は震え後ずさった。荒事に慣れた冒険者に囲まれ、脅える魔術師に任せていては埒が明かないと、腰の低そうな冒険者ギルドの職員が代わって前に出た。
「えー、第四班は赤スライムを捕獲していただきます。捕獲用具で掬い上げ、専用の隔離箱に三体ずつ収納してください。赤スライムは熱を生む性質がありますので、五体以上はまとめてしまわないようにお願いします」
「五体以上まとめるとどうなるんだ?」
「発火する可能性があります」
ぼそぼそと話す魔術師の言葉を聞き取って伝えるギルド職員によれば、スライムには同じ性質同士が融合するらしく、赤スライムは融合すると熱を持つのだそうだ。その近くに燃えやすい枯葉でもあれば火災の危険がある。
「えー、研究施設での実験結果では、十体分の融合赤スライムで炎が上がった、ということです。五体までならちょっと熱くなる程度で発火しないことは確実だそうです」
「……街中はスライムだらけなんだろ? 既に火が上がってる可能性はあるんじゃねぇのか?」
「だよな?」
炎上する都市、想像するのも恐ろしい惨劇だ。
「あー、緑スライムは赤スライムに吸着する性質があるので、多種スライムが混ざっている状態なら火災の心配はない、だそうですよ」
青スライムは他の属性のスライムを引き剥がす特性があり、黄スライムは水を吸い上げる性質、紫スライムは覆った生物に毒を与えるらしい。そういったスライムがごったになって都市を占拠しているので、仕分けしながら捕獲しなくてはならないそうだ。
捕獲道具として受け取ったのは、網の代わりに革の張られた大きめのテニスラケットのようなものだった。
「これでスライムをすくって集めるのか」
「一体ずつってことは、スライムって結構大きそうですね」
「スコップじゃダメなのか?」
「金属製ってのが問題らしいぜ。この革も特殊加工してるんだとよ」
捕獲道具にも随分とコストがかかっているらしい。
捕獲作戦は、完全に日が暮れてからはじまった。
都市をぐるりと囲む壁沿いに、十五の捕獲班が等間隔に陣取り、防御壁に掛けられた梯子を登っていく。壁の上は人が歩いて移動できる程度の幅があり、そこに立って都市内部を見下ろすと、暗闇の中に不思議な発光体が見えた。
「もしかして、あれがスライムなのか?」
「キレイ……」
コンサート会場で見かけるサイリュームライトのような光だった。暗闇に光る赤や青や緑。夜の暗い世界で、久しぶりに見る明るく輝く夜景を見ているようだった。
光は大きくなったり、分裂したり、誘われるように移動したりしている。
「これなら見逃すことはなさそうだな」
暗くなるまで捕獲作戦が始まらなかった理由はこれかと、納得の光景だった。




