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新学期だよー!

「──と、いうことがあって、僕はついに新しい人生を歩み始めたのでしたー!!」

「それで新学期からそんなにはしゃいでいるわけかソウマくん」

「モテナイくんがモテナイあまり、ついに妄想に走り始めたかと思ったけど違うみたいで正直ビックリしてるよソウマくん」

「ひどいよー!?」

 

 人類史に残る大冒険! そしてそれから一週間ほどして──僕が通う迷宮都市第一総合学園にも二学期が訪れたよ!

 というわけでさっそく朝から登校して教室にやってきた僕は、クラスメイトのケルヴィンくんとセルシスくんにいろいろ語ってみせたわけなんだけどこの有り様。

 塩対応だよー!

 

「ああああ心ない対応うううう」

「はいはい悪かった悪かったって、ソウマくんは無事に過去を振り切って冒険者としても人間としても一皮剥けたってことな」

「もう帽子もマントもつけないって本当かソウマくん。オーランドくんにビビってコソコソ隠れてたのにどういう心境の変化だいソウマくん」

「ああああやっぱり辛辣うううう」

 

 呆れたように笑う友人2人。彼らも当然悪気はなくて、からかうというかジョークなのは僕にもわかってる。

 それゆえ大袈裟に机に突っ伏して泣く僕。教室の中でそんな馬鹿なことしてるから、まあ人目は引くよねー。

 

「グンダリくん、二学期早々また泣いてるけど……彼があの冒険者"杭打ち"なんでしょ? マジで?」

「マジらしいよ? 冒険者の兄貴が言ってたし、一週間前にこの町に戻ってきたあの"絆の英雄"レイア・アールバドと決闘して見事に勝ったって」

「新聞にも載ってたもんな、当世最強の冒険者、杭打ちで決まりか!? って。地下の古代文明にまで到達できたことまで含め、今やすっかり時の人だよ」

「あんなに可愛くて、しゃぶりたいくらい可憐なのにそんなに強いんだ……ふーん? へー」

「えぇ……?」

 

 クラスメイト、のみならず学校中の生徒さん達がこのクラスにやってきて入れ替わり立ち代わり、僕を見てあれやこれやと話してるよー。

 そう、一週間前の冒険はレイアとの決闘も含め、あっという間に巷に拡散された。あの場にいた冒険者達やベルアニーさん、レジェンダリーセブンの人達が人脈をフルに使って世界中に発信したんだ。

 

 古代文明、どころか地下に広がる大世界まで発見できた。しかもその際、当代最強の冒険者二人が決闘したなんてセンセーショナルな話題付き。

 こんなの広まらないわけがないよー。実際、瞬く間に古代文明世界発見! 杭打ちvs絆の英雄! の報は世界を駆け巡り、レイアは元より僕の存在も以前に増して名が売れることとなったわけだねー。

 

 で。

 それを同時に、というかレイアとの勝負を機に僕もまた、正体を隠すことを止めることにした。

 帽子もマントも脱いじゃって、着のみ着のまま、素のソウマ・グンダリとして今後の冒険者生活を送ることを決意したんだ。

 

 これまでの3年間に対しての僕なりの答えというか……みんなのお陰でやっと、どうにか生きることを決めた今。姿を隠す杭打ちスタイルはもう卒業すべきだって考えたわけだねー。

 それに伴うあれこれとしたデメリット、たとえば杭打ちの正体がバレることについてはもう、真正面から受け止めることにした。

 きっとそれもまた、前に進むために必要なことだと信じるから、ねー。

 

「……だからさ。これからは"杭打ち"もソウマ・グンダリもまとめて僕だ。学生としても冒険者としても、全部ひっくるめての僕として生きたいと思う」

「そうか……ま、安心したよ。友人として、明らかに情緒不安定なソウマくんのことはいろいろ心配だったしな」

「学生としてはともかく冒険者の話になると結構、鬱めいた感じを覗かせてたからなあ」

「えっ。ほ、本当?」

 

 まさかの指摘に思わず問い返すと、友人達は2人揃って首を縦に振る。うわあ、僕こんなところでもやらかしてたのかー!

 自分で思っていた以上に僕、わかりやすーく過去を引きずってたみたい。今さら言わないでよーって話だけど、うわー、恥ずかしいよー!

 

「アレだろ? 何度目の初恋がどうとかわけの分からないこと言って、綺麗所に手当たり次第アプローチかけようとして毎度撃沈してた奇行も結局はそのへんが原因だろ」

「えっ……」

「求めてたのは恋人じゃなくて母性とかそんなんだったり……あり得るかもな。ソウマくんに自覚があるかどうか知らないが、傍から見るとどうも病的なまでに恋愛対象を求めていたし」

「いや、いやいや! そんなまさか! 馬鹿なこと言わないでよー!」

 

 とんでもない推測をし始めた友人2人を止める。奇行とか言われるのからしてそもそもおかしいと思うけど、ましてや母性とかは関係なくてー!

 僕は純粋に、まったく清らかな気持ちで彼女が欲しくて手当たり次第コナかけようとしてたんですー! そしてその度にその対象がオーランドくんのほうにいっちゃって泣いちゃってただけですー! 

 ……言ってて悲しくなってきたよー!!

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