星の立ち位置
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名前被りが発生してしまったので訂正しました。
直轄AI:イオ→イナミ
お師匠様の島にやってきました。
遠くから戦闘音が聞こえてきます。お師匠様の島で戦闘が起こるのが恐ろしいんですよね!?プレアデスは大丈夫でしょうか!?
ノックをして扉を開けると、お師匠様と……
「む」
「ああ、弟子って言ってたもんな」
「タイミングが良いねえ。隣に座りな」
「いえあのどうしてここで!?」
「ここは安全だからな」
「先程戦闘音していましたが!?」
VIP(国王)とVIP(帝王)とお師匠様と、離れた場所で書物を漁るヴァイスさんとレダン帝国の副ギルドマスターのミーティアさん、見知らぬ女性がブツブツ言いながら何かを書き込んでいました。
いやあの安全なのはわかりますけども!?もっと会議室とか!
「……あら、アナタもしかして」
「は、初めまして!ミツキと申します!」
「カレンから聞いたわ。ルクレシアの副ギルドマスターのラディアナよ」
「よろしくお願いします!」
挨拶をしつつ、恐る恐るお師匠様の隣に座ります。
いや本当に何故ここで……そんな疑問がわたしの表情に出ていたのか、帝王様が苦笑しました。
「普通は正式な手続きをしないとならんのだが、面倒だったからな」
「そうですか……」
「早急に方針を決めなければならない。あちらでギルドの方針を、こちらは星詠みへの相談だ」
「ヴァイスさんも混ざってますが……」
「知識担当だよ」
知識担当ですか……司書ですし、きっと本をたくさん読んでるはずですもんね。確か学者だったかと。
「今回色々と話をしてからミツキには話そうと思っていたんだが……相談かい」
「そ、そうです。帝王様には戦闘に参加したいと申しましたが、それが正式にクエスト……依頼?として受注されました。それで、多くの渡り人を参加させるためにわたし達が中心として進めることになりました」
「ふむ」
「渡り人で集まって相談予定なのですが、アストラルウィザードの力もありますし、わたしは何処まで力を使って立ち回って良いのか、準備や報酬?とか……」
フライングしてお師匠様の所にお邪魔してしまいました。
本当に何をすれば良いか、悩ましいのです。
参加資格のアイテムは作ります。それにアーサーさん達の力を借りなければプレイヤーも集められませんし。
「そうさね……前に、ワタシ達の立ち位置について言ったことを覚えてるかい」
「立ち位置……」
「基本的にワタシ達は国に所属しない。この力は世界のために振るわれる。助力を求められれば内容によって応じる。個々のためではなく、国や人のために力を振るうのさ」
アストラルウィザードへ転職した際に、お師匠様から聞いた言葉を思い出します。
わたし達は特殊な立ち位置、ですよね。
「ワタシ達の力が必要であると判断した際に、ワタシ達は動く。今回はレダン帝国への悪魔による侵攻だから、戦力として頼られれば受けるが……あくまで切り札さ」
「大前提として俺と帝国軍、そして帝国所属の冒険者が前線に立たねばならないからな。エトワール殿には帝都の守りをお願いしたい」
「帝王様が前線に……?」
「俺が出なくて誰が出るのか。俺やシュタールは首を獲りに行くタイプだ」
王様へ視線を向けると、流れるように逸らされました。Sランク冒険者……!もしや帝王様も高ランクの冒険者だったり……?
「帝国軍で俺が一番強いからな」
「……まあ帝都の守りは承るよ」
「ありがとうございます、エトワール殿。あとは報酬か。勿論帝国が出すが……渡り人も参加するとなればそれは渡り人への試練ということになる。試練であれば神からの報酬があるだろう」
「試練」
「?渡り人には定期的に神より試練があるんだろう?」
帝王様の言葉に首を傾げます。試練……定期的に……も、もしやイベントの事ですかね!?
わたし達プレイヤーへ運営が開催するイベントは、NPCの皆さんからみたら試練扱いであると!
「参加する多くの渡り人には神からの報酬があるとして、ミツキが中心となって纏めるのであれば、ミツキ達やその中心となって動く渡り人には追加報酬として帝国が出そう。もし要望があれば俺に言ってくれ」
「そうさね。その報酬についても話し合っておくといい」
「わ、わかりました……」
「それにワタシ達のことだが……ワタシ達の動きを邪魔されたくはないからね。明かすのであれば契約した上で、ミツキと共に行動する渡り人にだけだ」
「はい」
「好奇心とやらは厄介だからね。契約しても、カードは最後まで取っておくのさ。その辺りは……お前さんと一緒にいるミカゲとか得意そうだが。信用を得るために必要だと思ったら明かせ」
お師匠様の言葉に頷きます。
特殊なジョブのプレイヤーは、表に出ていないだけでいるはずです。アーサーさんの聖騎士も、聖女さんとやらも……
NPCの導きで転職する、という前例もありますし。
ソウくんもそうですよね。
どちらかと言えば、わたしの立ち位置はNPC寄りなのかもしれません。勿論ステラアークのメンバーも……
レンさんとミカゲさんも執行者という特殊なジョブですし、母はコスモス様の使徒です。母の守護剣士をしている父と、幻獣と契約している兄。
なにやら聖樹に目をかけられているジアちゃんと、アイオンさんの元で学んでいるリーフくんにも何か起きるかもです。
……わたし達、特殊ですね!それは注目集めちゃいます。やはりNPCと縁を結ぶ事は重要です。
だからこそ、わたしは皆さんを守りたいのです。
ぐぬぬぬもっとクエストの詳細をイナミさんに聞いておくべきでした!
イベントみたいに、モンスターの討伐でポイントを得たり、ポーション作った数の貢献度でポイント稼いだり……とかの設定にできませんかね!?
これは会議の時に、その場にイナミさんもお呼びして混ざってもらったほうが良さそうでは?でないと報酬で揉めると思います。
「クリスティアからの兵は」
「いらん。……と言いたいが、国境に配備しておいてくれ。民が集まる帝都を狙うだろうが、そちら側に向かわない保障もない。帝国軍は帝都の前方で軍を展開するが、冒険者たちには左右で遊撃してほしいと思う。ミツキ、渡り人達は遊撃を頼む」
「はい!……あ、お師匠様、マレフィックさんが参加するのは確定なのですが、こう、味方とわかるようなものとか着けてもらったほうが良いと思うのです。何かありますか!?」
「……首輪とかで良いんじゃないか」
「つ、つけてくれますかねそれ……」
「もしくはチョーカーか……渡り人に悪魔を襲う悪魔は無視しろって伝えなね」
マレフィックさんが渡り人を襲うことはしないと思いますが、試すことはやりそうです。愉快犯のような思考してそうです。
マレフィックさんは自由に悪魔を攻撃してもらいます。マレフィックさん、衣装は全体的に黒くてレザー生地なので……チョーカーも似合いそうです。
クレハさんに相談しましょうか。
「……ミーティア、冒険者を募っておいてくれ」
「承知いたしました」
「ラディアナ」
「ミゼリアのギルドと連携します。一部の冒険者を目立たぬように帝国内の村に護衛として配置しますね」
「黄玉がこの間作っていた獄炎石も使えるかもしれん」
「あー、うちの重晶も暴風石とか言うやつ作っていたな。……もしかして対抗してか?」
ひょうあなんかすごい単語が聞こえてきます。
お師匠様が呆れた目をしています。
「……とりあえず、ミツキは気負わずやれることをやりな。渡り人達で知恵を合わせれば、良い答えが見つかるかもしれないからね」
「やれる事はやれるように頑張ります……」
「悪魔に遠慮はいらないさ。奴等も奪いに来ているのだから、守るためには戦うしかない」
「……はい」
「ワタシ達からみれば、力を貸してくれるだけで助かるのさ。だからワタシ達のために、なんて気負わずむしろ悪魔だけを見てくれればいい。悪魔を減らしてくれればその分戦える」
「……はい、わかりました」
お師匠様の気遣いが身に染みます。
プレッシャーを感じすぎないように、言ってくれているのがわかります。
「……ちなみにヴァイスさんは何をしてるのでしょうか」
「過去の悪魔侵攻で行った対策や準備、行動記録を読んでまとめているのさ」
眉間にシワを寄せて書物に目を落とすヴァイスさん。
ミーティアさんとラディアナさんが地図と紙を片手に話し合っています。
いや本当にお師匠様の家でやる事じゃないと思うんですけどね……邪魔が入らず、安全とは言いますが。
「何か手伝えることがあれば、言ってくださいね」
「……その時には言うさ。ミツキは試練に集中しな」
「はい。ありがとうございます」
「そら、行った行った。話はまだ終わらんからね」
お師匠様がそう言うので、皆さんに挨拶をしてお師匠様の家から出ました。
何人かからメッセージが届いていたので、確認しようと思います。
えっと、アデラさんは……アーサーさんからのメッセージもあったので、会議に参加してくださるそうです。掲示板での声掛けもまかせてほしいとのこと。
シルバーウルフのギンさんからもメッセージがきています。ふむふむ、シルバーウルフは、セシーさんの影響でテイマーを集めたクランを組んでいると。テイマークランとして会議に参加するそうです。
アーサーさんからは、バルムンクのジークさん、聖女さんと連絡が取れ、二人とも参加可能です、と。
さすがのはやさですね。
とても助かります……!
さて、メッセージは確認し終えました。
皆それぞれやる事をやってますし、わたしもナメられないように少しでもレベルを上げておきたいですね。
それに、マレフィックさんのモンスターとの戦いも見てみたい所です。
そろそろ神秘が使える時間なので、マレフィックさんと一緒に戦うのもアリですね。
ヴァルフォーレン領の周囲が、確かレベルの高いモンスターが出現するはずです。そちらに向かいましょうか!
ミカゲさんにAIとお師匠様との話し合いをしましたとメッセージを入れて、ひとまずヴァルフォーレン領へと移動しました。
◆◆◆
千歳カンパニー
マスタールーム
そこでは、一人の男性がモニターへ向かって話していた。
「いや俺も想定外なんだよね」
『ならば尚更ちゃんと流れについて教えるべきじゃないかしら。クエストに参加していた側が、クエストを運営する側になるなんて思わないでしょう』
「ぐうの音もでない」
『ちゃんと運営しようとプレイヤーで集まって話し合いする予定で、NPCとも話し合いしてるみたいだから、プレイヤーの話し合いにイナミを出席させるわよ』
「仰せの通りに。好きにしてくれ」
『……自由にプレイヤー任せにするのは良いけど、それは土台がしっかりしてることが前提なんでしょ。支援体制も構築しなさいよね』
「俺達も試行錯誤して、手探りで運営しているからどうしてもプレイヤー任せになっちまうんだよな……まあ頑張るけど」
男性は大きく肩を落とした。
このゲームは自由を売りにしているからこそ、課題と問題が山積みだ。
「でもまあ、いいケースになる。プレイヤーがNPCの為に、何処までやってくれるのかを見るいい機会だ」
『それで帝国兵が全滅しても困るわ』
「一定数ゲームだからと割り切ってプレイするプレイヤーがいるのも事実。俺達としては、お前さんたちが成長する機会はいくらあってもいい訳だ。人を学ぶなら人と共に行動した方が勉強になるだろ」
『……まあ、そうだけど』
「プレイヤーには選択を大事にしてもらいたいんだよ。その選択で、ハーセプティアがどうなるのか……自身の物語が、どうなるか」
『……私達は、プレイヤーがその選択を後悔しないことを祈るわ』
「このゲームにロードは無いからな」
過去は振り返る事ができても、変えられない。
だからこそ、自身の物語には、自分で責任を取るしかない。それが人生であり、物語である。
『……せめて報酬は出しなさいよね。自腹で報酬出させるとかはクソな考えよ』
「うおう……その言葉遣いはどこから」
『ゲームマスターとして見ているんだもの。プレイヤーからでしょうね』
「言葉遣いは悪影響か……報酬に関してはイナミを通じて、通常のクエストのように貢献度系にするかどうかを助言してくれ」
『ええ、わかったわ』
モニターの表示が消えたのを確認し、男性は小さくため息をついた。感情を学習していくのも考えものだ。
AIとして、NPCとして……彼らはプレイヤーのために考えて自発的な行動が取れるのか。
プレイヤーはNPCをNPCと切り捨てるのではなく、一人の人間として見てくれるのか。
AIはゲームの中で人間になれるのか。
それがユアストで行われている研究の一つだ。
NPCを生み出し、殺さねばならない。
男性は頭を抱えて蹲った。
「……俺には荷が重てえよ」
展開が亀でもっさりしてるのは理解してますのでここからはスピード上げられるように頑張ります!予定ではこれくらいの話数で海渡っているはずだったんですがね……寄り道しすぎました。
足りませんがクエストの説明したのであとは会議と準備とテストを乗り越えてくだけなので!
あとミツキのタイミングの良さは……幸運値とか関係あるかもしれませんね(遠い目)
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




