ショップ『ビューグル』
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Your Story -ミツキ-
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翠玉からの依頼を達成しました。
新しいアイテムのレシピを獲得しました。
新しいアイテムを作成しましょう。
アイテムボックス内の整理を行いました。
取捨選択も必要です。こまめに行いましょう。
世界樹と対話を行いました。
世界樹はいつでも貴女を見守っています。
星々も貴女を見つめています。
お疲れ様でした。
新しいレシピの確認を忘れました!
ログインしたらしましょう。
今日はソウくんとアイテムの相談と……クランのプレゼンですね。
加入のメリットは提示できますので……ひとまずプレゼン頑張ります。
よし、学校へ向かいます!
夏休みに向けてテストが迫ってきていますね……
範囲を確認しながら帰宅しました。
「おかえり」
「ただいまー。……何か手伝える事ある?」
「ほぼ作り終わってるから大丈夫だな。洗濯物畳むの手伝ってくれ」
「わかった。着替えてくる!」
洗濯物を畳んで、お風呂も済ませました。
雑誌を読みながら兄を待って、夕食です。
「本日はあんかけニラ玉丼ですぜ」
「わあ!」
「サラダとスープもあります」
「お兄ちゃん料理好きだね?」
「作る工程が好きなんだよな」
「「いただきます」」
あんかけの甘酢あんがたまごとニラに絡んでご飯をが進む……!美味しい……!
「おいひい……」
「甘酢あんも奥が深いぜ……」
満腹!ごちそうさまでした!
皿を洗って部屋へ戻ります。食休みしてから、ログインしました。
冷蔵庫を覗き込むと……と、トマトが!ゼリーに!
小さめの器で、小さくカットされてゼリーになっています!
「私が作ったのよ!」
「ひょわあっ!」
背後から聞こえてきたスピカさんの声に飛び跳ねます。
振り返ると笑みを浮かべたスピカさんが立っていました。
「こ、こんばんはスピカさん!」
「はぁい!食べてみて?」
「い、いただきます!」
一つ手に取って、トマトとゼリーを口に運ぶと、程よい酸味と甘みが広がります。ゼリーも、ほんのりトマトの味がします!
「……美味しいです!ゼリーにもトマト使いました?」
「勿論!トマト尽くしよ♪」
ウインクしたスピカさんに頷き返しながらゼリーを口に運びます。
美味しい……
「お、スピカさんこんばんは」
「あら、リュー。貴方もどう?」
「俺もいいんですか?」
「いいわよ!」
「いただくっす!」
兄がゼリーを口に運ぶと、カッと目を見開きました。
そして黙々と食べ始めました。これは完全に味わって食べてますね。
「ごちそうさまでした!」
「また作っておくわね〜」
スピカさんに見送られてホームを出ました。
スピカさんの料理の腕、職人クラスです……!
祭壇で挨拶して、世界樹の幹を撫でて、そろそろ時間なので兄と共に王都ミゼリアへと向かいました。
夜の噴水広場は待ち合わせとしてよく使われているようです。
プレイヤーもそこそこいますし、NPCの姿も見えます。
さてソウくんは………………あ、見つけました。
アウターのフードを被って、噴水に腰掛けています。
兄の腕を引っ張って近寄ると、ソウくんが顔を上げました。
「ソウくん、こんばんは」
「よっすよっす」
「お二人とも、こんばんは」
立ち上がったソウくんと兄と、ひとまず目的もなく歩きます。
うむむ……こう、個室のお店とはありますかね。
アイテム関連の事も、概念的存在の事もちゃんと伝えたいんですが……
そんな事を考えながら歩いていると、どんどん人気が少なく、路地裏を進んでいます。あれ???
「……何処かに向かってる?」
「ソウくんに任せてる」
「?なるべくプレイヤーがいない方が良いかと思って」
「とっても助かる」
すでにソウくんが色々と考えてくれていたようです。
思い当たる場所があるようなので、ソウくんに任せましょうか。
そして一軒の家の前で立ち止まりました。
「少し中を確認してきますので、お待ちください」
そう言ってソウくんが扉に手を掛けた瞬間、ハリボテのような家が色付き、変化し、趣のある店へと変わりました。
看板には、『ビューグル』と書かれています。
「……前に、わたしが子羊の宿り木とか、スカーレットさんの所とか連れて行ったとき、こんな感じだった?」
「おう。何回見ても慣れねえよな……」
これは、唖然呆然です。開いた口が塞がりません。
町並みと一体化していた家が、店になりました。
ユアスト、すごいです……!
「お待たせしました。大丈夫そうです」
ソウくんが扉から顔を出したので、そろっと足を踏み入れます。
中は広く、壁には様々な銃剣や剣、盾なども飾られています。
カウンターでは右眼に眼帯を着けた、歴戦の戦士のような雰囲気を纏う老齢の男性がいました。
目があったのでお辞儀をすると、軽く返されました。
ソウくんに手招きされて、部屋の隅にある来客用と思われる椅子に座ります。
「そ、ソウくん。こちらのお店は……」
「僕が最初に銃剣を買いに訪れた店です。そして、あのカウンターにいるのが師匠です」
さらっと言われた情報に、カウンターの男性とソウくんを二度見してしまいました。
「ミツキさん達も僕と似たようなプレイをされているようなので、特に黙っているメリットもありませんからね」
そう言ってアウターを外してラフな姿になったソウくんに倣って、わたしもポンチョを外します。
「そっか。教えてくれてありがとう」
「これはますます逃せないぜ……へっへっへ」
「三下みたいな口調やめて」
兄はすぐ悪ノリするんですから。
ちゃんとTPOを弁えてるのか弁えてないのか……大事な場面では大人しいんですけどね。
「今日は遺跡でのアイテムと、ソウくんには相談もあってね」
「……アイテムに関しては特に気にしなくても良いかと思いましたが、相談ですか?」
「えっガーディアン・ゴーレムの右核とか渡そうと思ったのに」
「ドロ率も個々のステータスによるものでしょう。ミツキさんの所にドロップしたのであれば、それはミツキさんのアイテムで良いかと」
さらっと返されました。
さも不思議そうに首を傾げられましたが、それで良いのです!?
「……なんと言えば良いでしょうか。僕はそこまで、素材を求めてはいません。生産職ではありませんし、ダンジョンボスから落ちるような素材を求める依頼も中々見ませんからね」
「んー、まあわからなくもねえな。俺も生産職じゃねえから素材集めても使わんし」
「はい。なのでその右核については、ミツキさん達で有効活用してください」
「……ソウくんがそれでいいなら、右核は何かに使えるか相談してみるね」
わたしの言葉にソウくんは微かに笑みを浮かべて頷きました。
ふむむ……まあ確かにわたしも、素材を入手してもわたしが使うわけではありませんからね。
モンスターの素材は、わたしは使いません。
「……ぐぬぬ、じゃあまた別の相談なんだけど」
「その前にダンジョンでは簡単にしか説明してないだろ?概念的存在についてソウくんに話しておいた方がいいんじゃね?」
「……そうだね。また新しい情報が手に入ったんだけど……」
マレ様に聞いた話を簡単に纏めてソウくんへと伝えます。
「……ルーナ様に祝福を貰ったでしょう?あ、確認するの忘れてた……えっと、恐らくこの祝福は、概念的存在からの好感度で得られるものだと思うの」
「だから失望されたり、興味を失われたりすると容易に剥奪……というか知らんうちに消えてる可能性もあるな」
「……本当に、神のような方々なんですね」
「相対した時の威圧感は本物だよな」
ルーナ様からの祝福、確認するのを色々あって忘れていました!
今のうちに確認します。
月の祝福
月明かりを浴びると回復量が1.5倍となる。
アイテム、スキル、アーツが対象。
し、シンプルな強さが!
HPともMPとも限定されていないということは、すべての回復が対象、ですかね!?
「この時点で祝福もすごい……」
「今見たんかい」
「色々あって確認するの忘れてて……」
「夜、回復量が上がるのは助かりますよね」
ソウくんの言葉に頷き返します。
夜間の戦闘は手強いモンスターも多いですからね!回復量が上がるのは単純に、助かります!
「は、話を戻すね。各地に概念的存在を祀る神殿があるんだけどね、一部の神殿はなんだか……供物をちょろまかしたりしているらしいのね」
「……そんな罰当たりな事してる神殿があるんですか!?」
「あるみたいなんだよね……だからわたしは、ホームに祭壇を作ったんだ」
「えっ」
「ゴホッ」
ソウくんがぱちりと瞬きました。
そしてカウンターの方から咳き込んだ音が聞こえました。大丈夫でしょうか……?
「師匠?」
「いやすまん。むせ込んだだけだ」
「そうですか……えっと、祭壇ってそう簡単に、作れるんですか?」
「御神体があって、認めて貰えれば……どうにか?ちょろまかされるって聞いたのと、好きなものを供えたいのと、人に見られるのも嫌だなぁと思ってホームに祭壇を作ったんだ」
「わかるわかる。祈ってる姿をガン見されるのは気になるよな。献金してもそれが概念的存在の懐に入る訳でもないし……何に使われるかわからんし」
「彼らから幸運にも祝福を貰えたから、祀らせてもらおうと思ったんだ。わたし達は祈りに対して特に抵抗もないし、多神教みたいな所もあるし」
「祭壇は五つあるぜ」
「五つ!?」
さすがに驚かれました。
いやまあこの後ルーナ様の祭壇を増やしますけどね。
「ルーナ様の祭壇も準備中なんだ。だから概念的存在からの助けを得るためにも、視線を集めるためにも、ホームには祭壇が必要だったんだ。いつでも祈れるって良いよね。わたし達渡り人ならなおさら」
「……そうですね。夜遅ければ、神殿も閉まっているでしょうし」
「だから準備が出来たらソウくんも祭壇に祈りに来てもらえたらと思ったんだけど……わたし達には中々他のプレイヤーに言えない秘密が多くてね?」
「クラメンに相談したら銃剣への興味とプレイスタイルへの興味で勧誘してこいとなった訳だ」
「……僕をですか?」
兄と一緒のタイミングで頷きました。
ソウくんは、悩むように視線を逸らします。
「遺跡ではすごい巻き込んだからね……」
「へっへっへ……俺の力も知られちまったからな……逃がせねえぜ」
「それ似合わないからやめてってば」
「あと俺は抹茶点ててほしい」
「……抹茶はいくらでも点てますが」
「マジ?俺茶室用意するわ」
……まあきっと茶室も増築すれば作れそうですがね。
兄、抹茶好きなのでこれは本気で増築考えていますね。
「あ、ソウくんクラン何処かに入ってる?」
「最初に聞くべきだったわそれ」
「……入ってない、ですね」
「あくまで相談だから、ゆっくり考えてほしいな」
「入ってくれたら嬉しいってだけだからな。驚きは保証するし、他のメンバーも俺らに負けないくらい個性がある。まあ身内と友人とゲームで知り合ったミツキのフレンド、なんだけどな」
「ホームが欲しいからクランを組んだだけで皆ほぼソロで好きにやってるからね。ノルマ?とか言うのもないし」
「そもそもクランでノルマはいらないよな。そんなに必死に素材とかリルとか集めても楽しくねえし」
義務感でやると、純粋に楽しめませんよね……
やはり好きなことを好きなタイミングでやれるのが一番です。
つまり今の状態がベストですね!
「……よく、考えてみます」
「考えてくれるだけで嬉しい」
「全俺がガッツポーズしてる。武器見てもいい?」
「あ、どうぞ」
わたしも気になっていたので銃剣を眺めます。
ふおおおお銃身の部分に細かい装飾が!職人技!
……お値段も中々!想定していたよりも一桁多いですね!
「はーかっけえ。サブウェポンは何個あってもいいよな……?」
「お兄ちゃん銃剣も使うの?」
「ライフル射撃はやった事あるけど……いやまあソウくんが仲間になればいつでも見れるし。俺は槍とハンマーで……」
「と言いつつ視線は銃剣」
「使えないのに買うのも失礼だろ……」
武器を眺めていたら、遅い時間になってしまいました!
「あまり長居しても迷惑に……!そろそろお暇しないとね」
「相談にはいつでも乗るから連絡してくれよな」
「……はい、ありがとうございます」
「お邪魔しました!」
「失礼します」
ソウくんに挨拶して、カウンターの男性に会釈をして、店を出ました。
ひとまず島へ戻りましょうか。
◆◆◆
「場所、ありがとうございました」
「構わんよ。中々奇特な渡り人だったな」
「奇特、でしたか?」
「奇特だな。片や星とエメラルド、片や獣の気配がした。……何を迷っている」
「…………怖いだけです。新しい事に挑戦する事が」
師匠の言葉に、小さく言葉を返す。
別に人付き合いが苦手な訳ではない。
他人のプレイには合わせられる、呼ばれれば何処のパーティーでも入るし、ユアストをプレイしているクラスメイトの手助けもする。
……でも固定で長期間パーティーを組んだことはない。
他人を怒らせないように、邪魔しないように、なんて考えるのが面倒で。
一歩踏み込むと、気にしないといけないことも増えるから。僕は年齢的には、まだ子供に見られる事も多いし。
「……カーッ若えのに面倒な事考えてやがる。そんくらいの年の時は他人なんて気にせずにやってたけどな儂は」
「…………師匠はパーティーを組むときには相性とか、気にしないんですか」
「そもそも足手まといとは組まねえさ。儂の邪魔しねえ奴らと、気心の知れた奴らとしか狩りに行かんからな」
「……そう、ですか」
「フラフラしてねえで、一か所に留まるのもいい訓練になる。人付き合いやら、集団の雰囲気を掴んだりだとか色々とよ」
師匠の言葉を反芻する。
たまには一か所に留まるのも、訓練、か。
……後で姉にも相談しよう。
そしてふと思い出して、師匠に尋ねる。
「そういえば先生はどちらに?」
「あいつは出来上がった銃剣の試し撃ちをするために狩りに出ている。そのうち戻るだろうよ」
「そうですか……」
◆◆◆
「いい返事が聞けるといいねぇ」
「まあこればかりは縁だからな」
ホームへと戻ってきました。そこそこ遅い時間なので、自分の部屋に戻ります。
ログアウトする前にリゼットさんからいただいたレシピ本をチラ見しましょう。
フルポーション
魔力草+妖精の雫+ワルドゥの雫+精製水
フルMPポーション
魔力草+魔力キノコ+月光草+星の砂+ワルドゥの雫+精製水
蘇生薬
魔力神草+月光神草+カマル草+ワルドゥの雫+精製水
…………精製水ってなんですか!?
普通の水ではなく、精製水!?……今までも【精製】を使いながらポーション作っていましたし……サダルスウドの水で良いですよね!?最高の水ですから!
むむむ……ワルドゥの雫がもっと欲しいです。
フラワープラントを、倒さないと……!レダンのギルドで、依頼を探しましょうか。
今日はもう遅いので、明日以降で!
よし、ログアウトします!
十分にストレッチをしてベッドに横になります。
窓から差し込む月明かりを浴びながら考えます。
……昨日の今日みたいな合間で、誘うのは悪手でしたかね。もっと仲良くなってからの方が、良かったでしょうか。
……でもほぼ初対面でルーナ様の所まで連れ回してしまいましたし、今更でしたね!
とりあえず返事待ちです。
明日も学校ですし、寝るとしましょう。
おやすみなさい。
依頼こなして、そろそろ王宮に入りましょうかね……
月のお迎えはちゃんとしたものを用意しなければ!
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




