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アルヒラル遺跡 ⑫ 第二十一〜第二十二階層

ご覧いただきありがとうございます!


◆アルヒラル遺跡 第二十一階層


階段を下りると、石造りの通路に出ました。

おお、最初の階層の雰囲気に戻りましたね。


「今まで広い階層だったからか、少し圧迫感があるな」

「リュー、足元気を付けな」

「うおおおおお!?」


前を歩いていた兄の姿が一瞬で消えたと思ったら、アストラエアさんに片腕を掴まれて救出されました。


………あの時の落とし穴よりも深い落とし穴です。

え、底が見えません。


「やっべー落とし穴グレードアップしてるじゃん」

「……さすがに落とし穴に隠し通路とかないよね?」

「……」

「……」


前見た洋画で落っこちた先に通路が!っていうのを見ましたが………

兄とソウくんが顔を顰めました。それはどういう反応でしょうか!?


「ある時も、ありますね」

「でも進んで確認したくはないよな。下手したら死ぬ」

「そ、そう……」

「まあこの落とし穴には無いだろうね。風が流れている気配はないよ」

『うん。深いけど、底があるよね』

「……二人に任せればいっか」


わたしの言葉に兄が頷きました。

ソウくんは驚いたように瞬きます。


「ふふ、二人はすごく頼りになるからね。自慢の仲間だよ」


わたしの言葉に小さく笑みを浮かべたソウくんが、瞬時に銃剣を構えました。

む、通路の先にモンスターの気配がします。


この先T字路になっているのですが……右から引きずる音が聞こえます。

ふむ、これはバルトのようなスネーク系……?


呼吸を最低限に、気配を抑えて動かずに様子を窺っていると右から通路の半分を覆うような、巨躯で所々に矢が刺さった、朽ちかけたヘビのようなモンスターが右から左へと、真っ直ぐに通って行きました。


「ひっ」

「ゲェッ!?」

「なにあれなにあれなにあれぇ!」

「ぎゃああああ!!」


こちらを見向きもしませんでした。

思わず口元を抑えます。左にはプレイヤーのパーティーがいるようです。

えっ急にホラー……通路を這っているので何かしらの罠が作動してますが、矢が刺さってもなんら気にしてないようです。


モンスターが通り過ぎて、アストラエアさんが頷いたので小さく息を吐きます。


「……急にモンスターのテイストが変わったんだけど」

「アンデッド系か……?それとも何かの系統……ダンジョン特有の効果を受けている……?」

「朽ちかけているのを見るとアンデッド系の可能性と、何かの加護、呪いを受けている可能性もあります」

『……さっきのモンスター、石版の欠片を持ってるよ』

「ああ……この階層、奴しかいないよ。匂いが、奴の匂いしかない」


えっ?

…………つまり、石版の欠片を得るには、倒さないといけないと。


「……お兄ちゃん」

「階層モンスターがアイツしかいねえとか、あるんだな。にしても欠片アイツが持ってるのかよ」

「……その、石版の欠片とは?」


兄がわたしをチラ見したので、頷きます。

隠しても、この先まだ見つけると思うので……

ここは石版に巻き込ませて貰おうと思います。


「うちのラクリマさんがダンジョンで謎の仕掛けを見つけてな。そこから、石版の欠片を入手したんだよ。それを集めると何か起こるだろうって一応集めてるんだが……」

「……それを、さっきのモンスターが持っていると」


この通路で戦うには、狭すぎます。

この左側に、広い空間があれば……まだ戦いやすいです。


ソル様の祝福のおかけでHPとMPが継続的に回復しているので、星座を呼び出せば苦戦はしないはずです。

それに、恐らくわたしのレベルに合わせたレベルになっているはず。


「ソウくん」

「はい」

「倒しに行ってもいい?」

「……倒せる自信があるようですね。僕も、手伝います」

「俺もいますー」

「お兄ちゃんは引きずってでも連れて行くつもりだったけど……ソウくんには確認しないとだから」


でも手伝いますって言ってくれたので。

よし、そっとT字路を覗き込みます。……ふむ、いませんね。この先に、あの巨躯を収納できる空間があるかもです。



通路を進むと、広い空間がありました。

先程のモンスターと、恐らく追われていたプレイヤーパーティー……は、HPを無くして消えました。



−彷徨う階層の亡霊 アガースラ と遭遇しました−



「〈りゅう座(ドラコーン)〉〈うみへび座(アルファルド)〉!」

(【ブースト】【ハイブースト】【変光星】【魔力強化(星)】)


強化を施して、アガースラと呼ばれたモンスターを見つめます。



亡霊 アガースラ Lv.66

アクティブ アルヒラルの呪縛状態

【???】【???】【???】

【???】【???】【???】



あっ見えませんでした。

わたしと同じレベルですが、格上ですね!


「【宇宙線(コズミック・レイズ)】!」

「【ブースト】【ハイブースト】!【ライトニング・スピア】!」

「【ブースト】【ハイブースト】!【オムニス・シン】」


【変光星】は、三等星の輝きを持ってわたしを支援してくれています。15分間だけ、全ステータス1.7倍です。

わたしの魔攻は200近いので、バフのおかげでおおよそ魔攻400までは盛れてるはずです。


なので、【宇宙線】の一撃で三割削れました。

アガースラの魔防が低いのか、ソウくんがステータスを下げてくれたのか……!


アルファルドとドラコーンがアガースラの体を押さえ込むように巻き付きます。

アルファルドは尾の方を、ドラコーンは首に近い場所です。

アガースラが口を開こうとする瞬間に、多頭化したドラコーンが全方位から押さえ込むように噛みつきます。


『シャァァァッ』

『させぬ!』

『この者、もしや痛覚を感じていないな!?このように締め上げて、身をよじることもしないとは!』


その朽ちかけている状態、というのがアルヒラルの呪縛状態とやらと関係あるのかは謎ですが!

押さえ込んでくれているので、攻撃が当てられます!


「【彗星(コメット)】!」

「うおおおおおお!」

「【麻痺弾(パラライズ・バレット)】!」

『でりゃー!』


わたしとラクリマで魔法を放つ間にアガースラは頭を動かして暴れていますが、ドラコーンとアルファルドによって完全に抑えられています。


これは動かないようにするのが正解でしたかね……?

蛇の道は蛇……と言うには系統が違いますが、ドラコーンとアルファルドはアガースラの行動を筋肉の動きから予測して、動き出す前に押さえつけているようです。


『!』

『離れよ!』


何かを察知したドラコーンが叫びます。

アルファルドが離れた瞬間、アガースラの体がどろりと溶けました。


「っ!」


地面に沈むように、泥を残して姿を消したアガースラ。これは……!


地面立っているのが少し怖くなり、軽く浮かび上がります。そして視線を動かして、些細な気配も逃さないよう集中して……


「……ミツキッ!」

「ハァッ!」


兄の声と同時に、背後に大きな気配を感じました。

思わず避けようと重力操作を解いて、右足に力を込めてから左斜め前に前転した瞬間、アストラエアさんの声と衝突音が聞こえ、すぐ真横にアガースラの頭部と、牙が見えました。


あっっっぶな!!!

わたしが転がったので、真横の空気を噛むだけで終わりましたが!!

そしてすぐに体を持ち上げられ、アガースラから距離を取りました。


「チッ!気配が読みにくい奴だね!」

「アストラエアさん!」

「横っ面を蹴り飛ばしてやったが、蹴り飛ばした感じだと実体はあるようだね」

『食らうがよい!』


ドラコーンの多頭から、ブレスが放たれました。

そこに追撃するかのようにアルファルドが波に乗って突撃し、兄がトニトルスに乗り手に持つ槍をアガースラに深く突き刺し、体内で雷を爆発させました。


「………【装填】【実体の無い銃弾(ファントム・バレット)】」


ソウくんの持つ銃剣が仄暗いオーラを纏うと、一発、銃弾がアガースラに命中しました。

それはアガースラの体表を傷付けず、HPだけを削ります。

す、すごい攻撃です!!どんな仕組みなのか!!


『シャ、ァア!ホシ、ィ!』

「………キェエエエシャベッタアアアア!!」

『アノ、カ、ガヤキ……ィ!』

「【宇宙線(コズミック・レイズ)】!」

「【エレメント・バレット】!」

「【ウェポン・コンバート】!【バラク・インパクト】ォ!」


HPが三割まで減ると、急にあばれるのをやめたアガースラ。何かを、見上げているような。

ほしい……?かがやき……?


攻撃の手を緩めずに放った魔法とアーツは、アガースラのHPを削り取りました。

その巨躯が黒い靄となり消える中で、空中に手を伸ばす人影のようなものが、見えたような気がしました。



−彷徨う階層の亡霊 アガースラを倒しました−

称号 悪を打ち倒し、救う者 を入手しました

種族レベルが上がりました

任意の場所へステータスを割り振って下さい

SPを2獲得しました

メインジョブレベルが上がりました

契約召喚:ラクリマのレベルが上がりました

討伐ボーナスとしてSP3を入手しました

アガースラの短剣を入手しました

石版の欠片を入手しました



多い多い!

久しぶりのアナウンスの多さです!レベルも上がりました!さっと操作します。




ミツキ Lv.67

ヒューマン

メインジョブ:アストラルアークウィザード Lv.9/サブ:薬師 Lv.17


ステータス

攻撃 66 +1

防御 96 (+67)

魔攻 199 +2 (+40)

魔防 94 (+67)

敏捷 62 +1 (+15)

幸運 97 +1




順調にレベルが上がりますね。

兄もソウくんもステータスを操作しているようなので、称号と貰ったものを確認しましょう。



悪を打ち倒し、救う者

彷徨う階層の亡霊 アガースラ を討伐した者に送られるもの

アガースラは、呪縛から解放された




……何か、不思議な称号ですね。

あのアガースラには、何かバックストーリーがありそうです。



アガースラの短剣

アガースラの意匠が施された短剣

一日に一度だけアガースラの幻影を召喚することができる

魔攻+20 魔防+20

【幻影召喚】【回避率上昇】【痛覚無効】



なん、ですと……

また見たことない性能している武器です。

しかも魔攻……今度使ってみましょうかね……?


『不思議な奴だったな』

『生きているよりは、死んでいるのに近いモンスターだったな』

「ドラコーンとアルファルド、ありがとうございました」


近寄ってきた二体を見上げると、うっすらと天井に絵が描かれているのを見つけました。

へ、壁画…………!


所々崩れたり、消えたりしているのでほぼ原型は無いですが!恐らく空と……地面と……他は薄くて見えませんね。

………アガースラは壁画を見つめていたんですかね?


「よし、色々終わったぞ」

「レベルが2も上がりました」

『欠片手に入った?』

「石版の欠片は手に入ったよ」

「もうモンスターの気配は無さそうだよ」


皆集まってきました。

色々と気になる事が多いですが……


「称号は皆手に入った?」


わたしの言葉に兄もソウくんも頷きました。

貰った武器は異なりますが、概ね効果は同じようです。


「……色々と気になるとは思うけど、魔法契約で詳しくは教えられないんだ、ごめんね」

「……いえ、僕も人と違うプレイしてるのは理解してますから。その中でもミツキさんとリューさんは……まあ見たことないジョブですが」

「俺もソウくんみたいなプレイ見たことないやあ」

「……ひとまず進む?色々報告とかしてたら時間かかるし」

「反省会は後でにするか」


そうですね。

まだ二十一階層ですし。次はどんな階層なのか……


もうこの階層には何も無さそうなので、下りるとしましょう。




◆アルヒラル遺跡 第二十二階層



階段を下りると大きく広い空間で……

あの、地面が途切れて、100m先くらいに階段へと繋がる地面が見えます。


え、底が見えない、真っ黒な空間が広がっているのですが………


「……ゲームで見たことあるぞ」

「……これは渡るタイプでしょうか」

「透明な床か全部通ってくタイプかなー」


兄とソウくんがジッと空間を見つめています。

思い当たるものがあるんですかね……?


「飛ぶことができる人は簡単そうだね」

「……妹よ。普通は飛べねえんだよ」

「スキルやアーツは使用禁止のパターンもありますからね」


そろっと、ゆっくりと崖に近付きます。

すると、ウィンドウが出現しました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スキルやアーツは使用可能!

不可視の床を通るだけ!

誰か一人でも渡りきればOKなボーナス階層です!

落ちればやり直しです!

非日常でしか体験できないスリルを、あなたに!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「「「…………」」」


本当に、通るだけです??そのCMみたいなフレーズも気になりますけど……

んむむむむ………


「………わ、わたしが」

「ん?」

「わたしが、行く!!」


落ちかけても、瞬時に浮けますから!

足を踏み外しても、カバーできます!


「いやまあそこまで覚悟決めなくてもよ、一歩一歩確かめながら行くだけだし……」

「高所恐怖症とか無ければ、進めますからね」


けろっとした二人を凝視します。

こわくないんです!?


「おし、皆で行こうぜ」

「その方が速そうですからね」

「判断がはやい!」

「後ろをしっかり付いてこいよ」


ううう……一歩一歩踏みしめながら進む兄の後を付いて行きます。

ラクリマの羽が羨ましいですね……

こう、高所恐怖症って訳ではないはずですが!

この何も見えない床を、歩くのが少し怖いだけで!


……つまり高所恐怖症なんですかね、これ。


「………怖ければ、僕のこのベルトとか掴んで構いませんよ。死なば諸共ですから」


兄の足元を凝視しながら進んでいると、余程変な顔していたのか、ソウくんが自身のアウターのベルトを引っ張りながら声をかけてくれました。


年下に心配させてしまいました……!でもこわいものはこわいんですよ!

でも何かを掴むのは安心するので……言葉に甘えてベルトを掴ませてもらいます。


うおおお下は真っ暗で、何も見えません。

ととと、途中で床が無くなったりしませんよね?


「……下を見ると恐怖を覚えると聞きます。リューさんの背中とか、見るといいかもしれません」

「……そうするね……ありがとうソウくん」

「俺も恐怖を覚えながら進んでるからな!?俺を励ましながら進んで!?」


……結構必死な声音です。

兄も怖いもの、あるんですね。


「えっと……頑張れ!」

「安直!」

「……かっこいいです」

「ありがとうソウくん!」

『落ちそうだったら引き上げてあげるよ』

「めっちゃ安心した。ありがとうラクリマ」

「皆でラクリマに命綱繋いでもらえばいいじゃないか」

「「……それだ!」」


アストラエアさんの言葉に、わたしと兄が叫びます。ラクリマの安心感です。

一歩一歩……時間をかけて進み、ようやく反対側に辿り着きました。


「地面の安心感……!」

「地面!地面!」

「……しっかり、二人ともしっかりして下さい」


地面の安心感を堪能していたら、兄も地面に両手両膝をついて、地面を連呼しました。


「少し休憩しようぜ……神経使った」

「何も無さそうだし……セーフティエリアで少し休もう……」

『うん、何も無さそうだね』

「お宝は無いねぇ」


二人が言うなら間違いないです……

階段の手前に、四角い空間があります。セーフティエリアですね。ワープポイントもありますし。


「……甘いもの、食べる?」

「食べる……」

「はーい」


ウォーターボールで手を洗ってもらい、アルフレッドさんが作ってくれたフルーツブルスケッタの皿を取り出します。


「ソウくんもどうぞ」

「あ、ありがとうございます」


よし、いただきます!

んー!蜂蜜の甘さと、フルーツの甘酸っぱさ!素晴らしい……美味しい!

兄も頬がゆるっゆるです。

ソウくんも……あ、瞳が煌めいてます。気に入ったようですね。


休憩したら、次の階層へと向かいましょうか。



戦闘……戦闘が難しい……!想像は容易でも文章化が難しい……!世の物書き達は凄いですね……!


これからもミツキの物語をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ…?PTって7人いけるんでしたっけ…? ミツキ・リュー・ソウ・ラクリマ・アストラエア・ドラコーン・アルファルド 召喚枠とかで扱い違うとかでしたっけ?
[良い点] うるせえ兄と天然妹に対してナイスツッコミですソウくんw 即席なのにバランスの取れたいいパーティだぁ。 [一言] ホラーな目に遭わされた先行パーティー目線も気になりましたw 掲示板回が楽しみ…
[良い点] 落とし穴… また、落ちたのですね、兄。 隠し通路のある落とし穴はよくあるパターンですね。 幻影のバンジステイク(穴の底につき立った槍がある)ピット(落とし穴)なんかは、わりと定番(笑) 変…
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