凶星へのプレゼン ‐対価は食事で良いですか‐
ご覧いただきありがとうございます!
作者の文章力が足りなくて伝わりにくいかもしれませんが、鳥肉を食べながら丁寧に書き上げました。食事の美味しさが伝わることを祈っております。
朝からご覧いただく方は申し訳ございません!
全てタイトルに込めました!
「初めまして。わたしは、エトワール様の弟子で、ヴァイスさんの妹弟子の、ミツキと申します。渡り人です」
『………』
「この度は召喚に応じていただきありがとうございます。今回はご相談がありまして、喚ばせていただきました」
先手必勝、話しながら料理を一品ずつテーブルへと置いていきます。
マレフィックさんの視線が、料理へと向けられました。
「悪魔召喚には対価が必要とお聞きしました。手っ取り早いのは贄としてわたしだと思いましたが、果たして渡り人であるわたしは贄となれるのかと思いまして」
『………』
「体力を失って倒れても、決められた場所で復活します。何なら世界も渡ってしまいますし……なので、悪魔召喚の対価として渡り人のわたしは相応しくないかとも思いまして。それに満足する程のモンスターも用意できるか怪しいところです」
料理を出す毎に、料理へと視線が動きます。
よし、フルーツまで出し終えました。
「……結論を言いますと、これらのようにわたしの作った料理が、対価として成り立つかのご相談です」
わたしの言葉を聞いて、瞬いて、料理を見て、またわたしを見たマレフィックさんは、
『………ちょっと待って』
顔に手を当てて、黙り込みました。
「とりあえず冷める前に、どうぞ。あ、土足厳禁なのでブーツは脱いでいただけると助かります」
『…………え、あ、うん』
「お飲み物は何にしますか?水かスムージーかジュースしか無いですが…」
『……水で……?』
はてなマークを浮かべながらも律儀に返答してくれるマレフィックさんは、わたしの伝えた事を理解しているようで、ちゃんとブーツを消してマットへと進みました。
コップにサダルスウドの水瓶を傾けて貰って、マレフィックさんの近くに置きます。
『………星詠みの娘だよね?』
「はい」
『……渡り人なんだよね?』
「はい。あ、どうぞお召し上がりください」
『………………ああ、うん、食べる』
マレフィックさんはまだはてなマークを浮かべつつ、カトラリーを手に取りました。
どれから食べようか……と視線が動き、ハニーピグのステーキにナイフを入れました。
……マレフィックさん、悪魔なのに所作が慣れているというか、綺麗なんですよね。
◆◆◆
「右からにんにく醤油、おろし玉ねぎステーキソース、大根おろしソース、バター醤油ソース、シーオレンジの醤油を使ったソースです。お好みでどうぞ」
そう、一つ一つの小皿を指差しながら説明する渡り人の……名をミツキといった少女の言葉を理解すると、無意識に唾液を飲み込んだ。
悪魔であるオレの、コントロールされている欲が顔を出してきている。
わけがわからないまま召喚者の命に従って座って、告げられる言葉に耳を傾けつつ、目線は料理に向かってしまった。
何これ、めっちゃ美味そう。
今まで好き勝手殺して、食って生きてきたオレの人生で、見覚えのない料理もあって。
……まァ、食べていいって言うなら。
対価に相応しいか、見極めなければ。
一切れ、更に一口大に切り分けたステーキを、まずはそのまま食べる。シンプルな塩胡椒で味付けされた…これはハニーピグか。噛むごとに仄かな甘みを持つ肉汁と塩胡椒の香ばしい風味が、口の中に広がった。
……これだけでも十分美味いのに、ソースが何で五種類もあんの??
フォークに刺した肉を、にんにく醤油とやらのソースにつけて、口に運ぶ。
………!?何だこれ!?ガツンとくるガーリックの風味に……芳しいコクが……?これが醤油って奴か!?
「ご飯と一緒に食べると美味しいですし、ハニーピグのステーキはおかわり用にもう一枚ありますよ」
は??マジ??
ご飯……ああ、日輪の国の主食か。白米ってやつ。
とりあえず言われるがままに、次のソースを選んで口に運んだ後に、一口白米を運ぶ。
はァ??キレそう。
美味すぎ……何これ。玉ねぎの甘さと醤油の香ばしさが肉を引き立てて……え、白米ってこんなに美味いの?
目を見開いたオレに、目の前の少女が嬉しそうに微笑んだ。
……ッ、やば、がっついた姿を見られた。
オレは気恥ずかしさを隠しつつ、次の料理の説明を求める。
『……コレは何?』
「それは卵と野菜を使ったオムレツです。一応ケチャップソースと、ウスターソースはありますが、お好みで選んでくださいね」
なるほどわからん。聞いたこともないね。
一切れフォークで刺して、そのまま口に運ぶ。
ふわっとした卵の中にごろごろとしたジャガイモがいた。噛むとほくほくとしてて、ピーマンや玉ねぎ、ハム……仄かに、にんにくの風味がついてて、これだけでもシンプルに美味い。
ケチャップソースって奴にディップして口に運ぶ。
はァ??これトマトソースみたいなもんかよ美味い。
ウスターソースって奴……よくわからんが美味い。
ハッと気付いた様に白米を口に運ぶ。
全部美味えなクソ!!キレそう!!
『……コレは?』
「それはファイヤーバードのガーリック醤油焼きです。元々ファイヤーバードのお肉はピリ辛なので、ご飯が進みますよ」
無言で口に運ぶ。
ガツンとしたガーリックに、焼いた事で香ばしさが増した醤油、そしてファイヤーバードのピリ辛な……これも胸肉だな。柔らかく、でも噛むとしっかりとした弾力のある肉から肉汁がじわりと出てきて、パリッとした皮も美味い。鳥肉って肉汁出てくんの?
……やばい、白米美味い。何これ、何にでも合うじゃん。
『……美味い』
「!ふふ。サラダとスープも合間にお召し上がりくださいね」
嬉しそうに微笑んだ少女の勧めの通りに、サラダを口に運ぶ。新鮮な野菜はシャキシャキで、ここにもファイヤーバードの胸肉がいる。でもそのピリ辛さは、このかけられたソースでマイルドになっている。
……駄目だ美味すぎ。レタスにも合うし肉にも合うってなんだこのソースは。
えぇ……こわ……人間の食への執着なに……美味すぎ……
心を落ち着けるためにスープカップを口元へと持ち上げる。
コンソメの香ばしい香りに、落ち着くどころか食欲が倍増した。柔らかく煮込まれた野菜は、口の中でとろけ、野菜の旨味がスープに溶け込んでいるのがわかる。
……こんなにゆっくりと食事をしたのは、久しぶりかもしれない。
奈落では、一日二食の食事と瞑想ばかりしていた。
反対側に収監されている奴と話したり、冥界の掃除をしたり……明らかな罠に乗ったり。
贄の対価という打算はあるだろうけど、ここまで手が込んで、オレの為に作られた料理なんて、初めてだ。
……にしてもマジ美味いなこれ。ちょっと泣けてきた。
◆◆◆
黙々と食事を食べ進めていたマレフィックさんの動きが止まりました。
おや、味が気に入らないものありましたかね?
ふと顔を見上げた時、その真紅の瞳から、滴が落ちました。
「!?!?!!?!?!」
『!?!!?!』
ラクリマと二人で声にならない叫びを上げました。
な、涙が出るほど!?
サダルスウドも慌てて、水瓶から水を溢します。
「美味しくないものありましたか!?」
『どれ!?次はもっと美味しく作るから、ミツキが!』
「もしや苦手な!?苦手なものが!?」
『人間食べられないものあるし、悪魔も食べられないものあるよね!?』
わたし達の慌てように、目を瞬いたマレフィックさんが、小さく笑いました。
『……いや、美味いよ』
「そ、そうですか?」
『オレの為に作ってくれたんでしょ?美味いよ』
……なんというか、作られたものではなく、マレフィックさんの自然な笑顔……です。
ほ、良かったです。美味しいと言って貰えれば、わたしも嬉しいので。
『このフルーツも美味しいや。何処の?』
「あ、それは太陽島で採れたものですね」
『ンゴフッ』
噎せたマレフィックさんが、慌てて水を飲みました。
悪魔も太陽島について知ってるんですねぇ。
『……マジ?』
「マジです」
『……君、普通の星詠みの娘じゃないな??』
「そんな事は……」
そんな事は……無いかと……?
否定しようとしたら、両隣のサダルスウドとラクリマがブンブン頷きました。
あれ?
『……ん、満足した。いいよ、食事が対価で』
‐ 異端の悪魔と 契約 しました‐
‐称号 異端の悪魔との契約者 を入手しました‐
「ほえ」
『…じゃあ改めて、オレはマレフィック。星詠みと契約している悪魔だ。今は奈落に収監されてるけどね』
マレフィックさんはテーブルに肘をついて、こちらを楽しそうに見つめ始めました。
「…しょ、少々お待ちください!」
えっと、称号!?
まず称号を確認させていただきたく……!
異端の悪魔との契約者
異端の悪魔と契約した者に送られる称号
対価は食事と定められている
運営:……幼い頃に家族を失って復讐心をお持ちの方では無いですよね……?
健在ですが???
運営のその具体的なコメントは何なんでしょう?
そしてこの、異端とはなんでしょう。
「…いくつか質問しても良いですか?」
『いいよ。今回は話がしたいんだろ?』
許可が出たので、気になる事は聞いてしまいましょう。
「……異端の悪魔とは」
『ああ、それか。悪魔って別に仲間意識とかある訳じゃないけど、悪魔の王には忠誠誓ってるんだよね。でもオレは強い奴には挑みたいタイプだからさ、悪魔王サマに楯突いて挑んで負けたんだよねぇ……ボロボロでこの世界に落とされた時冥界に収監されたんだ』
お、おおう……悪魔の王様に戦いを挑んで、負けてしまって奈落に収監されたと。
『もし悪魔との戦いがあったら喚んでよ。役に立つよ?』
「……そ、その時はお願いします」
『フフ、約束だよ。その約束の対価に、オレの瞳を貸してあげる』
‐【凶星の瞳】が 限定付与 されました‐
このスキルには使用制限があります
『人に紛れる悪魔を見分けられるよ。きっと役に立つ』
「な、え、なんっ!?」
『なんか同族の気配するんだよね、この国』
……レダンで、悪魔の気配!?
まさか本当にそろそろ悪魔の侵攻が!?
『……オレからも質問していい?』
「はい、何なりと」
『……君、なんか色々なのに目をつけられてない?』
ジト目でこちらを見つめるマレフィックさんに苦笑します。
目をつけられているというか、目をかけて貰っていると言いますか……
「……わたしの保有する島に、世界樹と概念的存在を祀る祭壇があるんですけど、マレフィックさんはそう言うの平気です?」
『……君本当に普通の渡り人??まあ、ちょっとダルくなるくらいだけど』
「……島ではあまり喚ばない方がいいですね。あ、この間冥界で追いかけた渡り人いたと思いますが、わたしの仲間なので、今度は追いかけるのやめてくださいね」
『……あー、あの死の気配がする子か。わかった……なるほど、懐かしい気配は星の気配だったか』
うんうん頷くマレフィックさん。
なんならクランメンバーはお師匠様特製のアクセサリーつけてますので、それかもしれませんね。
『あとそこのモンスターも、オレ今まで生きてきた中で見た事ねえのよ』
「…ラクリマの事ですか?」
『ラクリマの事?』
『そ。ラクリマって言うんだ』
『うん。ラクリマはラクリマ』
「わたしと契約している、契約召喚の召喚獣ですね」
ねー。とラクリマと笑いあいます。
わたしとラクリマは姉妹みたいなものなのですよ。
そしてわたしは反対側でニコニコしているサダルスウドの頭を撫でます。ジュースあげましょう。
「……あ、見ておわかりかと思いますが、わたしそんなに強くはないので、何かあったら助けてください」
『……完全にウィザードってワケ?』
「避けるのに必死です」
『……まァ、君が倒れたらどうせオレも還されるんだろうし、気に掛けとくよ』
よし!!!言質取りました!!!
思わず拳を握ったら、それを見られて笑われました。
『この後はどうする?』
「……今回の目的はお話だったので、何も予定はないですね」
『ふーん…じゃあ』
マレフィックさんが立ち上がると、マットから降ります。
そして身体を伸ばすと、こちらを見てニヤリと笑いました。
『どれくらい動けるか試そう。立ちなよ』
「え」
笑みを浮かべて手招くマレフィックさんに……わたしは諦めて、マットとテーブルを片付けるのでした。
マレフィックさんとの手合わせを終えて、島に戻りました。……何度も砂に転がされました!!
ぐぬぬ……悪魔と比べたら非力なのですよこちらは……
疲れたので、ログアウトしましょう。
今日は砂漠横断して、マレフィックさんのために料理もしましたし……
明日はスフィア様の所へ向かって、人形を受け取らないとです。
わたしはベッドに飛び込んで、ログアウトしました。
ベランダでストレッチをして、空を眺めます。
春の星座が傾いて、そろそろ夏の星座が見える頃です。
夏……今年の夏は、ゲームも楽しめます!
勿論天体観測も!キャンプもです!
夏はやれる事もいっぱいです。
よし、明日に備えて、寝ましょう。
おやすみなさい。
???:計画通り(ニチャア)
ちなみに【15:悪魔】を使うことでミツキにバフはありません。【悪魔召喚】のアーツが解放され、喚ばれた悪魔にバフが付与されます。
これからもミツキの物語をよろしくお願いします!




