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建国祭 14日目 ④ ヴァルフォーレン領の戦い

ご覧いただきありがとうございます!

山の麓の戦闘の話です。



「さて、私達も移動するわよ」


ヴェロニカの合図で、冒険者達が移動を始めた。

ハイドレンジアとリーフも、最初にこちらに話しかけてくれた冒険者に着いて行く。


「あの、お二人はヴァルフォーレン所属の冒険者なんですよね?」

「名前とか、聞いてもいいっすか」

「お、そういや名乗って無かったな。俺がラルフ、槍使いだぜ」

「俺がグラム。双剣使いだぞ」


ヴァルフォーレンの冒険者達は、皆軍服に似た装備を身に着けている。

そこに肩当てやら肘当てやら、盾などを装着しているようだ。


「……かっこいいっすね、その装備」

「だろだろ?ヴァルフォーレン所属の冒険者は、呼び出された時はこの格好すんだよな」

「この格好みればヴァルフォーレンってわかるようになってっからな」

「身が引き締まるんだこれが」


そんな会話を続けながら街を出ると、各々示し合わせたかのように冒険者達が四方八方へと駆ける。


「……そうだな。お前ら、レベルと得物は?」

「私が56で、弓を使います」

「俺は57で、斧を使います」

「なるほどな…」


ラルフは考え込むように顎に手を当てて、周りを見渡した。

そして頷くと、こちらを振り返る。


「……今日の俺達は、お前らのサポートでもするか」

「んにゃ、ヴァルフォーレンの冒険者だしな俺ら」

「え、あの」

「んー、少しレベル足らねえけど、まあ倒せるだろ」

「頑張ろうぜ。俺達はあっちで戦うとすっか」


ラルフとグラムは、きょとんとするハイドレンジアとリーフの背を軽く叩いて、己の武器を片手に指を指して歩き始めた。


ハイドレンジアとリーフは、自分のレベルが低い事は自覚していた。

なので後ろから、一撃でも当てられれば、他の人の戦いを見られればと思っていた。

しかし、ここまで親身になってくれる冒険者がいる事に、少なからず驚いた。


そして街から離れ、山からも少し離れた草原に立ち止まって、山の方向へと身体を向けたラルフとグラムに倣って、ハイドレンジアとリーフも武器を構えて視線を向けた。


「ヴァルフォーレンに所属してる冒険者達はさ。討伐数で稼いでるんよ」

「そうそう。だから必然的にみんなあっちに集まるんだよな」

「その分荒くれ者が多いから、俺達は離れた所でモンスター倒すって訳よ」

「俺達はお前らを鍛える名目もあるから、討伐数少なくても怒られないと思いたいな」

「まあ冒険者として先輩だからな。この辺のモンスターとは戦い慣れてるから、お前らはとりあえず攻撃な」

「「は、はい!」」

「んじゃまあとりあえずだな」


そう言ってグラムは双剣を構えた。

視線の先には、赤い角の生えた、闘牛のようなモンスターがこちらへと突進する動作を取っていた。


「来る敵を倒そうぜ!」

「っしゃあ!行こうぜ!」



-特殊クエスト ヴァルフォーレン領での戦い を開始します-


ハイドレンジアとリーフの耳にアナウンスが響き、グラムの掛け声でリーフは斧を片手に走り出し、ハイドレンジアは矢を番えた。


「っつってもああいう突っ込んでくるモンスターとの戦い方は3つだ」

「そら、リーフ見てろよ!オラァ!」


ハイドレンジアの近くで槍を構えながらラルフは言う。

ハイドレンジアはその言葉を聞きながら、矢先をモンスターへと向ける。




レッドバイソン Lv.71

アクティブ

【???】【???】【???】

【???】【???】【???】


勢い良く駆けるレッドバイソンの前に立ちふさがり、掛け声とともに双剣を振り下ろしたグラム。

その双剣を角に合わせ、突進を止めたのだ。


「あれは武器に優しくないからお前達は余程の時以外はやらない方がいいぞ」

「は、はぁ……【アローレイン】!」

「残りの2つは突進を躱して攻撃仕掛けるか、遠距離攻撃で倒すかだけどな」


ハイドレンジアは困惑したような返事をして、周りを囲むレッドバイソンの群れへと矢の雨を降らせた。

ラルフも苦笑して、近寄るレッドバイソンをその手の槍で貫いた。


グラムは角を受け止めた双剣を弾くように振るい、すぐに右手の剣をレッドバイソンに突き立てた。


「来い!リーフ!」

「オラァ!」


剣を突き立てられた事により硬直したレッドバイソンの胴体へ、リーフが両手で握りしめた斧を振り下ろした。

レッドバイソンは悲鳴のような叫び声をあげ転がり、すぐにリーフが追撃とばかりに斧をバットのようにスイングした。


「近接攻撃を主とする俺らがやることは追撃だ!モンスターが起き上がらないうちに倒すなりしねぇとな!」

「うっす!」


次々とレッドバイソンの脚を切り裂き、転がしていくグラム。

リーフも狼の獣人としての俊敏性を生かし、突進を避けたタイミングで斧頭をレッドバイソンへと打ち付ける。

上から強烈な一撃を打たれたレッドバイソンは地面へと勢いよく沈んだ。

そしてその転がったレッドバイソンに、木の蔓が拘束するかのようにまとわりついた。


「ナイス!んでなんだこの蔓は!?」

「姉貴…ハイドレンジアだと思うっす。確か木魔法使えたはずです」

「なるほど!もしかしてウッド・シューターだったか!」



(ご明察ね!)


ハイドレンジアは心の中でグラムの言葉に肯定した。

現在転職を経て木魔法を主で扱う弓使い…ウッド・シューターのジョブとなっているハイドレンジア。

木魔法を込めて作り上げた【木矢】を番えて、ハイドレンジアは弓を引く。


「【ヴァイン・ショット】!【デッドリー・シュート】!」


放たれた矢はレッドバイソンに命中しその身体に巻きつくと、その体躯を拘束する。

そして放たれた追撃の一矢が、レッドバイソンの眉間を違わず貫いた。


「…上手いな。命中率も高い」

「ありがとうございます、ですが、まだまだです」


こうして何も身を隠すことの出来ない平原の真ん中でモンスターを狙うことが出来ているのは、ラルフがハイドレンジアへ近寄るモンスターを片っ端から倒しているからだ。


(私も何か近接武器を持とうかしら)


ミツキも短剣を持っているのだし、遠距離は近寄られたら戦いづらいもの。

ハイドレンジアはそう考えながら、転がされたレッドバイソンへ次々と矢を放つのであった。






「……ふむ、弓の師事受けてたりするのか?」

「いえ、元の世界でも弓を引いてるくらいで、今は特には」


ラルフはふと、モンスターの襲撃が途切れた瞬間にハイドレンジアへと尋ねた。

首を横に振りながら、ハイドレンジアは弓を見つめる。

弓道も、己と向き合いながらやっているもの。

いまは教わっていないけれど、とハイドレンジアは考える。


「へぇ……狙いもいいし、構え慣れてると思ったら普段から弓に触れる機会が多いんだな」

「そう、ですね」

「ふむ…アーツの事は理解しているか?」

「……いえ、使って試して、理解する途中でしょうか」


試してみてもわからないアーツもあるが。

ハイドレンジアは顎に手を当てながら、自身のアーツを思い出すように首を傾げた。


「ふーん、そうか。じゃあ俺が前に弓使う仲間から聞いた奴、知ってるかもしれねえけど」

「!有り難いです」

「おー。とりあえず見た感じ、木魔法の矢も使えるんだろ?」

「はい」


木魔法で作る、【木矢】というアーツがある。

その名の通り木で作られた矢だが、この矢を使うことによって使えるようになるアーツがあるのだ。


「属性の矢は他のアーツを使う起点になるって言ってたけど、あの敵を拘束するアーツはそれ関係だろ」

「はい」

「ん、属性の矢は魔法ダメージで、普通に矢を作る【弓矢生成】は物理ダメージってのも大丈夫か?」

「……うっすらと思っていましたが、物理ダメージ扱いなのは確信持てていませんでした」


木魔法で作り上げる矢が魔法ダメージなのはうっすらと思っていたが、普通の矢が物理ダメージなのは、何となくそうか程度のものだった。


ダメージ表記がされるゲームではないし、物理ダメージという概念があるかもわからなかったが、魔法の関わるアーツでなければ、通常攻撃は全て物理ダメージという考えで良いのかと、ハイドレンジアは考えた。



「お、いい的みっけ」


ラルフは担いでいた槍をおろして、握り直した。

その視線の先を辿ると、全身岩に包まれた羊のようなモンスターがいた。


「あれはロック・シープだな。特徴はもふもふの筈の毛が岩のようにガチガチになってる所」

「……シープのアイデンティティは何処へ」

「本当だよな。あれ、弓で攻撃すんの大変だよな」


見るからに硬そうな毛…岩…にハイドレンジアは素直に頷く。


「あれ、岩壊せれば魔法がよく効くんだよな」

「そうなんですか」

「仲間とかに壊しそうなやついる?」


……ハイドレンジアの脳内に、拳を振るうレンとソラが思い浮かんだ。


「まあ後はリーフとかに壊させて、ハイドレンジアが魔法で狙うとかがいいんだけどよ。後はソロなら、魔法アイテムとか使うのも手だな」

「魔法アイテム、ですか?」

「錬金術師がよく作るんだが、爆弾とか作るの得意な奴多くてよ。こないだ知り合いが炎魔法で作り上げた超火力の爆薬くれてよ」


そう言ってポケットから小さな小瓶を取り出して、ラルフはロック・シープと呼ばれたモンスターへと軽く放る。


響く爆発音、爆風に思わず目を閉じ、開けたときにはまるで毛刈りでもされたかのように、岩が剥がれた姿のロック・シープが起き上がろうとしていた。


「あれなら倒せるだろ?」

「そ、そうですね…」

「以前のより爆発が局所的になってるな。改良したって言ってたし、いい感じって伝えておくかー」


……それでもとんでもない威力だったが。

ハイドレンジアは心でそう呟いた。


確かにゴーレムのような敵にも、中々攻撃が通りにくいのがネックだった。

故に近接武器や、ミカゲの作った爆発薬を使う事を視野に入れていたが……

そもそも爆発薬…アイテムは何ダメージになるのか。

少しわからなくなったとハイドレンジアは頭を悩ませた。



「……勝つ為には、手段は選んでられないですね」

「自分の有利なように戦闘を行うのも冒険者だぜ」


笑みを浮かべたラルフに、ハイドレンジアも笑みを浮かべる。

動く敵を狙うのは困難だが、だからこそやり甲斐がある。でもそればかりは疲れるし、ストレスだ。

動けなくして敵を倒せるようにするのも、戦術としては歓迎だ。


ハイドレンジアはラルフにお礼を告げて、再び弓を構えた。








「なぁラルフ」

「あぁ」

「やっぱおかしいよな」


そうして平原にいるモンスターを二人の力添えを得ながら倒していたハイドレンジアとリーフ。

そんな中ラルフとグラムは山を見据えながら呟いた。


「霊峰のモンスターが下りてこないよな」

「おう。いつもは下りてくる時間帯なんだが」

「霊峰で何か起きたか…?」

「それなら姉御から何かしらのコールあるだろうな」


ポーションでHPを回復し呼吸を整えながら二人の会話を聞いていたハイドレンジアとリーフは顔を見合わせる。


「…ミツキ達に何かあったのかしら」

「王様一行とミツキさんの師匠さんもいるし、無事だとは思う」

「そうね」


見つめる先にある霊峰は、特段変化なく聳え立っている。

…?何か、騒がしいような気がしたハイドレンジアは、目を細めた。


「…うお!下りてきたぞ!」

「…何か、様子がおかしいが」


目前に迫るモンスターを視認し、そのレベルの高さにハイドレンジアとリーフは息を呑んだ。



スピリット・ラビット Lv.82

アクティブ 恐慌状態

【???】【???】【???】

【???】【???】【???】



「【チャージ】【シャドウ・スピア】!」


ラルフが槍を地面に突き刺すと、スピリット・ラビットへ向けて地面から影でできた何本もの槍が突き刺さる。

そして左手に出現させた手槍を、違うスピリット・ラビットへと勢いよく投げつけた。


「【アローレイン】!【ハンギングツリー】!」

「【狂化】ウオオオオオッ!」


ハイドレンジアが地面に手を当てると、一本の大樹が出現する。

それは器用に枝を動かし、【アローレイン】を避けたスピリット・ラビットを捕え宙吊りにする。


リーフが宙吊りになるスピリット・ラビットへと、両手に手斧を握り飛びかかる。


「【デュアル・スラッシュ】ッ!」


勢いよく振り下ろされた手斧の一撃、そして地面へと打ち付けられた衝撃で、スピリット・ラビットは大ダメージを受ける。

レベルの割に動きが単調なことにリーフは疑問に思うが、背後から飛んできた矢がスピリット・ラビットへ突き刺さり爆発し、咄嗟に爆風から顔を庇う。


「…ダメージは無いけど爆風はあるんだよな!」

「ごめん遊ばせリーフ。次も行くわよ」

「あーもう!【ウェポン・コンバート】」


リーフはHPが2割まで減ったスピリット・ラビットへ、勢い良く地面を踏み抜いて飛び上がり、斧を振り下ろした。

何度か爆発し視界が遮られたが、どうにか気配を探って攻撃した。

そうして身体の消えたスピリット・ラビットを見つめ、リーフは息を吐いた。


「いやあ驚いたな」

「お前ら大丈夫か?」

「ええ、どうにか」

「恐慌のデバフかかってたから攻撃あんまりされなかったろ?なんか怖いもんでも見たのかねぇ」


怖いもの…これは確実に霊峰で何かあったとハイドレンジアとリーフは考えた。

後で報告もあるだろうし、ひとまずはここで戦闘を続けるのがいい。

アイコンタクトでお互いの考えていることをなんとなく読み取った二人は、ラルフとグラムと共に戦闘を続けるのであった。



作者はゲームやると大体片手剣を選びがちになるので、弓の使い勝手とかはわからない所もあります。

皆様は好きな武器や自分だったらこの武器使いたいとかありますかね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 片手剣、ファンタジー武器の基本にして王道!
[一言] 高レベル帯がいきなり来たら、デバフかかっててもびびりますよねぇ… 15くらいの低レベ狩ってたらいきなり80↑の高レベネームドに襲われることもよくあるんですけどね ゼノブレイドっていうんですけ…
[良い点] いやスピリット・ラビット Lv.82 レベル高 スキルほとんど見えないやん  [気になる点] うーんジアちゃんはやっぱり片手剣ですよね ダーガ系もありですね [一言] 自分はゲームだと槍系…
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