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いざマルムへの道 ③

ご覧いただきありがとうございます!



黄昏時です。

……ちょっと言ってみたかっただけです。


ハイペースで走って森を進みます。

夜はモンスターの動きが活発になりますからね。

こう走っている間にも、モンスターが近付いてくるのがわかります。


「ガアアアアアッ!」

「っ!」


頭を下げてその勢いのまま前方へ転がります。

すぐに立ち上がって杖を構えます。


目の前では、目玉のない大型のウルフがいました。


「っ!」

「グルルアアアアッ」


所々骨となっている大型のウルフは、目が無いのにこちらを正しく認識します。


そして速いです。

これはっ逃げ切れません!


「ファイアーウォールッ!〈ペルセウス座(ミルファク)〉!」

「ギッ!?」


ファイアーウォールで目くらましをしながら、ペルセウスさんを喚びます。


魔法陣から出てきたペルセウスさんと同じタイミングで、炎の壁を気にせず駆け抜けた大型のウルフがこちらへと跳びかかってきました。


(…よく喚ばれッ!?)

「グオオッ!?」


素早く剣を抜き切り上げさらに下から蹴り上げ、わたしを掴んでペルセウスさんは空へ飛びました。


(…運が悪いなお前は。引き寄せる天才か?)

「わ、わかりません!夜が近いので、出てきたものだと思ってました」

(……チッ黄昏か)


ペルセウスさんは空を見て舌打ちしました。

こちらの世界でも黄昏時は、何かしらありそうですね。


(黄昏時は境界が曖昧になる。この手のアンデッドは完全に夜にならねば出てこないはずだ)


地面から唸りながらこちらを見上げるウルフ。

な、なるほど、アンデッド……



ブラックウルフ Lv.49

アクティブ アンデッド

【爪撃】【共食い】【???】

【闇魔法】【光脆弱】




初めて見ました。

そしてレベルも高いです。

ちょっとこのエリア危険すぎませんか??


(ならば、コイツをアンデッドにした術師が近くにいる筈だ)

「アンデッドにした、術師が?」



『おやおや若い餌だと思ったら、中々聡いねぇ』



ぞわりと背筋が冷たくなるような気味悪さを感じました。

ブラックウルフの隣に、闇が広がります。


『ちょいと散歩してみたら愉快愉快。それになんだか忌々しい星の力を感じるねぇ』

『ああ忌々しい(エトワール)の!』

『その男も星の力を感じるねぇ……食えば強くなれるぞウルフよ』

「ガアアアアアッ」


闇から出てきたのは、絵本に出てきそうな鼻の曲がった老齢の魔女のような雰囲気を持った、モンスターでした。

アイコンが赤いので、モンスターとわかります。


でも会話が可能で、肌を指すようなピリピリした気配を持つモンスターは、おそらく、




■■の魔■ レダ・カ■■■ジ Lv.■■■

アクティブ ■■■■

【???】【???】【???】



バチッ


「あうっ!?」

『覗き見とは感心しないよ小娘』

「っ……し、失礼、しました」


目に直接電撃を食らったような、痛みが走りました。

片目を抑えるわたしを、空中で苦い顔をしたペルセウスさんが支えてくれました。


『レディを覗き見すると痛い目をみるからねぇ……ヒヒッ』


すでに痛い目を見ました。

お師匠様と因縁のありそうな目の前の推定魔女さん、恐らく勝てません。


逃げられる、でしょうか。


(……ミツキ、ハマルを喚べ)

「っ!」

(背から落下すれば即死するが、落ちなければ()()()()()()())


おひつじ座(ハマル)の特性!

とある兄妹が生贄にされそうになった時に、背に乗せて逃げ切った、最高神の遣わした牡羊!


「〈おひつじ座(ハマル)〉!」


空中に出現した魔法陣からハマルが出てきました。

そして空中に浮かびます。

ハマルは空飛ぶ牡羊!飛べるんですね!


(俺がウルフを抑える。お前はハマルと共に奴のテリトリーから出ろ)

「!」

(この刺すような冷たい気配が無くなれば、出られたと言えるだろう。出たら名を喚べ)

「まっ!」


そう言ってペルセウスさんは、わたしをハマルに乗せて地上のブラックウルフに空中から攻撃しました。そして兜を被り、ウルフを翻弄します。


『ヒッヒ!召喚者想いだねえ』



!にげ、ないと!

わたしはここにいたら恐らく死にます。

ペルセウスさんの、言うとおりにしないと。


「っハマル!お願い!」


ハマルは小さく鳴くと、空を駆け出しました。


「【魔力強化(星)】、【魔力強化(太陽)】【魔力強化(月)】!」


ありったけのバフをペルセウスさんとハマルにかけます。

黄昏時なので、どちらに効果するかわかりませんが!


わたしは必死にハマルにしがみつきながら、ハマルと共に空を駆け抜けました。




『ヒッヒ!今回は見逃してあげようかの』

『次は殺して星へ届けてやろうなぁ』



老女は牡羊と共にかけていった少女の背をみてニヤリと笑った。

そしてブラックウルフと戦う星の気配を持つ男を見て、手元に黒いオーラを纏わせるのであった。








どれくらい駆けていたのか、空は星が瞬くほど暗くなっていました。

肌を指すような冷たいピリピリとした感覚も、無くなっています。


周りにモンスターがいない事を確認し、地上へと降ります。

遠くにぼんやりと明かりが見えました。


「……ありがとう、ハマル。【簡易結界】」


微かに震えるわたしにそっとハマルが寄り添いました。

初めてですが【簡易結界】を使いました。

透明な壁が、わたしを囲いました。


「〈ペルセウス座(ミルファク)〉」


ぽそりと魔力を込めてペルセウスさんを喚ぶと、出現したペルセウスさんがドサリと音を立てて地面に倒れました。


「ペルセウスさん!?」


ペルセウスさんの負った傷の周りが、黒く変色しています。

これは、一体……


(……触れるな、呪いだ)

「ペルセウスさん!」

(お前の、右眼も呪われている)


咄嗟に右眼を手で抑えます。

な、何も感じませんでした。



ステータスを開きます。




ミツキ Lv.47

ヒューマン ■■の呪い状態

メインジョブ:アストラルハイウィザード Lv.18/サブ:薬師 Lv.9




「呪われてます」

(そう言ったろう)

「ほ、星のキュアポーション!」


わたしは慌ててアイテムボックスから星のキュアポーションを取り出します。

一つはペルセウスさんに、一つは自分用にです。


(今回の呪いであれば、それで解呪できるだろう)

「……今回、の?」

(……チッ手加減されていた。でなければハマルも喚べなかっただろうな)


ペルセウスさんは荒々しく星のキュアポーションを呷ります。

わたしも呪われてますので、同じように呷りました。


ステータスを確認し、読めませんでしたが呪いの状態が消えている事を確認しました。


右眼の周りをペタペタ触りますが、特に変わった様子はありません。


(……消えている)

「……ありがとう、ございます」


とても、怖かったです。

あれが、死の恐怖というものなのかもしれません。

まるで心臓を、掴まれたかのような……

ハマルを撫でて、心を落ち着かせます。


「ペルセウスさん、その傷は、」

(このまま還るか、星の光を浴びていれば治るから気にするな)


ペルセウスさんは星空を見上げます。

わたしもつられるように、星空を見上げました。


明かりのない草原のど真ん中にいるので、邪魔する光がないのでよく見えます。

……いつもより、一番星の光が眩しい、ような?


(……過保護か)

「過保護ですか?」

(……コスモスがこちらを見ている)

「えっ!?」


ペルセウスさんを見ていたので、勢い良く星空に目を向けます。

………いつもより光が強いことしかわかりませんが!


(コスモスの気配は俺達は把握できる。お前が心配でこちらを覗いているんだろう)

「な、なるほど……心配ありがとうございます。大丈夫ですよ」


ひとまず手を振ってそう伝えてみると、一番星は一際明るく瞬くと、いつもの明るさに落ち着きました。


ほあ……すごいですねコスモス様。

……わたしも少し落ち着きました。


運の悪いエンカウントでしたね。

お師匠様と因縁がありそうでしたし、後で報告しましょう。




恐らくあのぼんやりと明るい方向が、国境の街マルムでしょう。

マップにも表示されています。

なるべく戦闘を避けて、向かいましょうかね。


「なるべく戦闘を避けてマルムへ向かいます。ペルセウスさん、ありがとうございました。ゆっくり休んでください」

(……お前が街に着くまでは居る)

「ほあ」

(…心配、じゃない。ここで還るとアンドロメダも煩いからな)


ペルセウスさんは小さくため息をついて立ち上がります。

そして身体を軽く動かして、地面で休んでいたアルゴルを腕へ巻き付けました。


……心配させちゃいましたね。

もう少し強くならないとです。


「…では、よろしくお願いします!」

(ああ)


立ち上がったわたし達に合わせて、ハマルも立ち上がったので恐らくついてきてくれるのでしょう。



ペルセウスさん、ハマルと共に、マルムの方角へと歩き出しました。



次は掲示板回挟みます!

他のプレイヤーの状況ってどのくらい詳細に見てみたいとかありますかね??

一応はイベント中の閑話や掲示板で足りるように書いていく予定です。


これからもこの作品をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] RPGでよくある、話を進めるためだけの強制負け戦闘には個人的に一種のアンチテーゼがありましてねえ。 壁は叩き壊してこそ面白いと思うんです。
[一言] これはまた厄介な相手に眼を付けられた感じですね。 システム上はモンスター扱い? 実質的には敵対的NPCって感じで撃退しても消えずに何度も絡んで来そうですね。 逆に主人公が成長するためのキー…
[一言] モブから見た無名の主人公は掲示板回の醍醐味 有名になった後もいいけど、無名の主人公が話題になったり、認知されていったりするのは独特の楽しさがあると思う
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