世界樹の世話と世間話
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イオさんがモンクスフードさんを引き離してくれるまで肩を掴まれてました。
中々の力でした……
「め、珍しいスキルですか?」
「初めて聞きましたよぉ!私は【植物知識】っていう植物の種類や生態がわかるスキルしかありませんからぁ!」
「俺も初めて聞いたな」
「私もです」
えっそうなんですか?学者というジョブがありますし多いのかと思ってました。
【植物知識】というスキルも気になりますね。
そんな事を話していたら、枝で背中を軽く打たれました。
あっ早く剪定しないと!
「催促されました!切らないと!」
「は、はいぃ!これがハサミですぅ!」
「……わたしがやるんですか!?」
「私は世界樹にハサミなんて入れられないですぅ!」
「うええええ」
お、王様にさせるわけにはいきませんしね。
王様をちらりと見ると笑みを浮かべて頷きました。
ええいままよ!わたしは剪定バサミを握ります。
でもどこで切ればいいんですかこれ!?
チョイチョイと葉が枝を指差す如く揺れています。
……ありがとうございます世界樹の枝さん!
葉が示す場所に剪定バサミをいれます。
次から次へと枝が目の前に下りてきます。
そんなに伸びてたんですね……
割とたくさんの枝を切りました!
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
瑞々しく絶好調。
《枝》:ありがとうスッキリした。枝と葉は好きに使うといいよ。あとは供物があればいいのあげるんだけどなぁ〜?チラッチラッ
「は?」
「急にマジトーンのは?は驚きますよぉミツキ様」
「あ、いえその枝と葉は好きに使えって言ってるんですけども」
「けど、なんだ?」
「供物があればいいのあげるんだけどなぁ〜チラッチラッってなんか、強請ってます」
「「「…………………」」」
急に図々しくなりましたね?
世界樹って供物どこから食べるんですか??
「……今までそのような事を言われた事無いな」
「いつもエトワール様がサッと終わらせてましたからね」
「……つまり、わたしはナメられていると言う事ですね?」
わたしは世界樹をちょっと睨みつけます。
すると慌てたようにわさわさ揺れ始めました。
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
瑞々しく絶好調。
《枝》:懐かしい果実の気配がしたから……欲しいなぁ。太陽の恵み、欲しいですお願いします!
「えっ」
「…どうしたミツキ」
「懐かしい果実の気配がしたと」
「………確実にミツキから貰ったアレだろう」
「…………お師匠様に相談します」
「……あぁ」
世界樹はわさわさ揺れています。
敬語になるほど欲しいのですか………
わたしは手鏡を取り出して、魔力を流します。
「お師匠様」
………反応がありません。
あっ
「エトワール様」
『……なんだい。何かあったのかい』
ほ、良かった。繋がりました。
「世界樹の枝には水をあげて剪定したんですけれど、なにやらプラムを供物に欲しいみたいで」
『…………なんだって?』
わたしは王様とイオさん、モンクスフードさんをちらりと見て会話を続けます。
「わたしの【植物学者】と言うスキルは、ちょっと細かく植物について知ることができるスキルだと思っていました。今までも、初めて魔力草を【鑑定】した時は、新芽だから摘まないでと鑑定結果のテキストに書かれていました。他にもポーションに最適だとか水分不足とか、植物の状態が細かくわかっていたのです」
『へぇ……それは珍しいスキルだね』
「今回はそれに加えて、何やら枝との会話がですね。一方的ですけど【植物学者】なら読めるね?と」
『……確かに世界樹の枝は意思ある枝と言われていたが、そこまで意思疎通できるとは、驚いたね』
「モンクスフードさんは、精霊の加護?があると会話できるとか言っていましたが」
『確かに精霊や妖精の加護があれば、木や花と会話できる。ただ世界樹は別枠だろう。それは世界を支える神樹だからね、話せるのは高位の賢者か森の民……エルフの中でも一部の者だろうね』
「……このスキルは、こちらの世界に渡るときに、女神ローティ様からいただいたものなので、入手法はわかりません」
『……そうかい。まぁ、渡してもいいんじゃないかね。世界樹に効果があるかはわからないが、無病息災になるなら万々歳だよ』
「…確かにそうだな。病にならないのは、我が国にとって喜ばしい事。………俺からも頼む」
「私からも、よろしくお願いします」
「何がなんだかわかりませんけどぉ、世界樹の為になるならよろしくお願いしますぅ」
「わ、わかりました」
アイテムボックスからプラムを取り出して、世界樹の根本に供えます。
すると、秒で消えました。
はわ………
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
瑞々しく絶好調。全状態異常無効となった。
《枝》:うっま!ありがとう!キミにはお礼に苗木をあげるよ。他の人間には軽い祝福を授けよう。
-世界樹の苗木を手に入れました-
「ひえ」
「ッ!?」
「なっ」
「!?!!?!」
せ、世界樹の苗木!?
そ、育てていいんですか!?
「我が生涯に一片の悔いなしぃ!」
「も、モンクスフードさん!?」
モンクスフードさんはそう叫ぶと気絶しました。
すごい幸せそうな顔をしてます………
『……何とかなったみたいだね』
「……後で詳しく報告しますね」
『あいよ。じゃあね』
お師匠様との通信が切れて、手鏡をアイテムボックスへしまいます。
「………この枝と葉も、どうしましょう」
「…世界樹の枝と葉は、伝説級のアイテムです」
伝説級……滅多に入手できないものですね。
イオさんと頭を抱えていると、王様が丁寧に一掴みして、それをわたしの手に握らせます。
「これはミツキに。後はすまないが王宮で管理させてくれ」
「むしろこんなに!?」
「依頼の対価もある。……この後、茶にしよう」
イオさんが無言で部屋の外へ消えました。
まさかお茶の準備を!?
「さすがの俺も予想外の事ばかりでな……休憩に付き合ってくれ」
「わ、わたしで良ければ……」
わたしも色々ありましたので落ち着きたい所です。
王様がモンクスフードさんをソファへ運び、部屋の扉へと歩き出したので、わたしも後に続きます。
「サダルスウド、ありがとうね。今度お菓子作るね」
一連の流れをわたしと同じような反応で見ていたサダルスウドは、ぱぁぁっと顔を明るくして、嬉しそうに頷いて消えました。
最後にまた世界樹をみると、
ミゼリアの《枝》
世界樹から王都ミゼリアに伸びる枝。
瑞々しく絶好調。全状態異常無効となった。
《枝》:ありがとう、この国のマナを守ってみせるよ。ちなみに世界樹の苗木を育てると良いことがあるから育ててね。
まるで手を振るように、枝を揺らしました。
わたしも深くお辞儀をして、部屋の外へ出ました。
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普通に外です。
王城の敷地内の一角にあるのですね、世界樹の温室は。
警備は手薄に見えますが、魔法的なシールドでも張ってあるんでしょうかね。
王様は通路を迷いなく歩き出したので、距離をあけて後をついていきます。
はわ……道行く人が端へ下がって頭を下げます。
……わたしがされてる訳ではないのに、申し訳なく感じます。
なるべく気配と息を潜めて王様についていきます。
少し歩くと、開けた庭園に出ました。
おお、手入れがされていてとても綺麗です。
花の香りが漂ってきます。
「……あら、陛下」
「お父様」
「ローザとメーアか。……ふむ、少し混ぜてくれないか」
「構いませんよ。……あら、まあ!」
「!ミツキ様」
庭園でメイドさんと共にティータイムを楽しんでいたのはローザ様とメーア様でした。
「ミツキ様、どうぞこちらに!」
「よろしいのですか?」
「今は休憩中なのです。良ければご一緒に」
メーア様に手を引かれ、メイドさんが用意した椅子に座ります。
ローザ様の隣に王様が座りました。
わたしの目の前に紅茶とお菓子が置かれます。
「あ、ありがとうございます」
メイドさんは会釈をしてすすすーっとまた離れた所で待機します。
んぐぐ、なにやらロイヤルな雰囲気、慣れません。
わたしは紅茶に手を伸ばします。
おお、いい香りです。これはあまり紅茶に詳しくないわたしでもわかります。
アールグレイです!美味しい……渋みは一切ないです。
「ミツキさんは今日はどうしたのかしら?」
「今日は依頼でお邪魔させていただきました」
「世界樹の世話だ」
「まあ!今回はミツキさんなのね」
ローザ様は口元に手を当てて綺麗に笑います。
メーア様もわくわくしたような表情でこちらを見ます。
そ、そんな話せることなんてないですよ?
「ミツキのおかげで、我が国の世界樹は健康になったようだ」
「まあ!」
「そうなのですね!」
「……王様、その言い方は」
「その通りだろう」
健康どころか、全状態異常無効になりましたけどね。
やはりプラム、プラムは全てを解決してくれます………
ありがとうございますソル様、デイジーさん……
「ミツキ様は、他国に行ったことがありますか?」
「いえ、行ったことはないですね……」
「他国の世界樹も、それはとてもユニークな育ち方をしているそうですよ。……他国について簡単にご説明しますか?」
「お願いします!」
他国の事全然知りませんからね!
うっすらとカレンさんに聞いた覚えはありますけども。
メーア様はテーブルの端に乗せていた本を開いて、わたしへ見せてくれました。
「では隣国のレダン帝国の事からですね。レダンは広大な砂漠と密林に囲まれた獣人が暮らす国です。年々密林が砂漠化する問題を抱えていますが、とても人情溢れる素晴らしい国です」
広大な砂漠に囲まれる帝都、そして密林。
なるほど、イメージはアフリカ系ですね。
砂漠は人工的な明かりがなく夜は氷点下まで気温が下がるところもあります。とても星が綺麗に見えるんですよね!
楽しみです。
「日輪の国は、海を渡った先にある島国です。木造建築が多く、自然に溢れ風情ある国ですね。名前の響きはミツキ様と同じような方々がいます」
桜や藤の花、木造建築や京都のような街並みです。
これは日本モチーフですね!実家のような安心感です。
なにやら神社のような場所もあるようです!
「レティシリア共和国は、多くの領土が合わさって出来た共和国です。今は領主達が対立して、国王になるべく小競り合いがされているようで、今行くのはおすすめできませんね」
様々な民族衣装のようなものを着た人達、文化が合わさって出来た共和国のようです。行くのは少し危なそうですね………
「銀華帝国はとても華やかな国です。食事やアクセサリーに力を入れており、当代の帝様は女性ですので、とてもアクティブに他国と交流されています」
ほほう!中華です!中華街のような街並みです!
ちょっと行ってみたいですね………
小籠包とか、炒飯とか……ご飯のことしか考えられません。
「レペツェリア王国は、海に面しており豊富な海産物で栄えている国です。青い海の白い壁の街並みが、とても映えて美しいです。リゾート地として大人気ですよ」
わ!とても綺麗です!これあれです!サントリーニ島のような雰囲気です!歩きたいですねぇ!
なるほどリゾート地です。…………別荘、アリですね。
ユアスト、世界旅行みたいで良いですね!
「セレニア神聖王国は、特殊な宗教国家です。他国との交流は少なく、彼らが創造神と呼ぶ方を崇めていますね。…国境は封鎖されておりますので、セレニア神聖王国は今如何なっているかわかりません」
……王都と思われる都は、高い塀に囲まれてとても閉鎖的に見えます。神殿のような、教会のような建物をさらに塀で囲んでいます。
「……創造神とは、いらっしゃるのですか?」
「…その質問に答えるのは難しい」
王様が眉間に皺を寄せます。
ローザ様もメーア様も、似たような表情をされていますね。
……触れないで置いたほうが良さそうです。
「……わたしもソル様を崇める祭壇を作りたいんですけれどねぇ……」
「……ふふ、それは素晴らしいわね。私もお礼に伺いたいわ」
「もしも作れたら、その時はお招きしますね!」
「わたくしも是非!ソル様にはお礼を申し上げねばなりません」
「その時は王族総出で伺うとしよう」
……作るのは咎められませんでしたね!
ならば作りましょう!………王族の皆さまをお招きしなければならないですし!
ちょっと祭壇の作り方を調べてきましょうかね………
紅茶とお菓子をいただき、和やかな時間を過ごしました。
メーア様は将来ヴァルフォーレンへ嫁ぐため、武術も学んでいるのだとか。
ローザ様は遺跡の調査を行うための準備をしているそうです。
………王妃様自ら!?
「私考古学者というサブジョブなのよ。遺跡の調査も公務の一つよ」
ウィンクをしながら教えてくれました。
お、王妃様が遺跡調査……アクティブです。
王様は公務に飽きたらモンスターを狩りに行くそうです。
さすがSランク冒険者……
王族の皆さま割とアクティブですね………
護衛の騎士様とか大変そうです。
1時間程度お邪魔してしまいました。
そろそろお暇しましょう。
「む、こんな時間か」
「あら、休憩は終わりね」
「はい。わたくしも武術の鍛錬に戻りますわ」
ローザ様とメーア様は、小さく手を振り庭園から出ていきました。
「ミツキ、依頼書を」
「はい」
テーブルに依頼書を置くと、王様が懐から出した王印?のようなものを依頼書に押しました。
「報酬はそうだな……世界樹の葉と枝、後これも授けよう」
依頼書と共に、一つの小さな箱が置かれました。
恐る恐る受け取って開くと、紋が刻まれた勲章が収まっていました。
「これからお前にはアストラルウィザードとしても、翠玉の弟子としても、様々な依頼があるだろう。貴族の諍いに巻き込まれることもあるかもしれんからな。……これは俺が後ろ盾という意味を持つ。持つだけ持っておけ」
「こ、このような素晴らしいものを頂いて良いのですか」
「我らの恩人に報いる術は何でも使うさ」
王様は小さく笑います。
全てはプラムのおかげですけれど、断るなんて空気読めない事はできません。
ここは有難く受け取ろうと思います。
「ありがたく、いただきます」
「躊躇なくつかうといい」
………余程の時にしか使えませんね。
大切に保管しましょう。
「イオ、ミツキを送ってやれ」
「は」
「今日はお世話になりました」
「…今度は共に戦うのも良いかもしれんな」
「……確実に足を引っ張るのでもう少し強くなるまでお待ち下さい」
「ハハ、いいな。待っててやる」
王様に見送られて、イオさんと庭園を出ました。
「イオさん、裏門から出たいのですが…」
「はい。裏門へ向かっております」
「ありがとうございます…」
既に向かってくれていました。
イオさん有能すぎますね。
「ではミツキ様、本日はお疲れ様でした」
「ありがとうございました、イオさん」
「モンクスフードには後で色々言っておきますので」
「……そこそこにしてあげてくださいね」
私の言葉に笑顔を返すイオさん。
……モンクスフードさん、頑張ってください。
「お気を付けて」
大きくお辞儀して、扉をくぐり抜けます。
一旦ログアウトしてから図書館へ向かいますかね。
つまり巻き込まれるってコト!?()
これからもこの作品をよろしくお願いします!




