表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廻る学園と、先輩と僕 Simple Life  作者: 九曜
那智くんと、ひとつ屋根の下
92/93

その4 新学期初日編(2)

 新学期初日にやることなんてたかが知れている。

 クラス分けの発表があって、始業式があって、教室に戻ったらロングホームルーム。急いで決めなくてはいけないことを決めたら、明日からさっそく六時間授業だと言われて大ブーイングで解散だ。

「司、どっか寄って帰ろー」

「ごめん。今日はパス」

 先生が教壇から降りるか降りないかのうちに、クラスメイトから誘われた。でも、断る。家にはお腹をすかせたかわいい男の子が待っているのだ。

「そう言えば司ってひとり暮らしはじめたんだよね? 今度行ってもいい?」

「もうちょっと落ち着いたらね」

 と、今度は曖昧な言葉で誤魔化す。たぶん部屋に上げることはないだろう。人に言えない秘密を抱えてしまったし。これからの一年間、これを隠し通さないいけないと思うと、ちょっと楽しいかもしれない。

 彼女たちとは駅前まで一緒に帰った。

 まっすぐ家に帰らず、駅前まできたのには理由がある。――それは、ひとつすっかり忘れていることに気がついたのだ。

 ショッピングセンターに入り、まずは目的の雑貨店で買いもの。それからスーパーで二人分の食料品を買い込んでから帰る。

 玄関の鍵はすでに開いていた。那智くんはもう帰ってきているようだ。

「ただいまー」

「あ、先輩。おかえりなさい」

 リビングでテレビを観ていた彼が迎えてくれる。

「あれ? 買いものですか?」

 わたしが手に持っていたレジ袋に気づき、聞いてくる。

「言ってくれたら、一緒に行ったのに」

「そう? じゃあ、今度一緒に行きましょ」

 一緒に買いものは魅力的だけど、聖嶺の生徒が乗り降りする駅の前にあるスーパーになんか行ったら、遅かれ早かれ誰かに見つかってしまうような気がする。日曜日なら大丈夫だろうか?

「それよりも那智くん――見て。こんなの買っちゃった」

 わたしはキッチンのテーブルのレジ袋を置くと、雑貨店で買ったものを手にリビングに戻った。

「何ですか、それ」

「あら、知らない? お弁当箱というのよ」

 そう、買ってきたのはお弁当箱だった。

「いや、それは知ってますけど。ピクニックにでも行くんですか?」

「それもいいわね。どこがいいかしら?」

 思いつくのは、少し遠いけど、都市公園。あそこなら季節の草花が楽しめるので、天気のいい日に芝生でお弁当を食べるのもいいかもしれない。

「本当なんですか!?」

「まさか」

 いいアイデアなので検討する価値はあるけど、お弁当箱を買った理由はそこではない。

「那智くん、明日からお昼はどうするつもり?」

「んー? そりゃあ無難に学食で……って、ええっ!?」

 答えている途中で気がついたようだ。

「もしかして先輩が作るんですか!?」

「ええ、もちろん」

 わたしは得意げにうなずいた。

「わたしも最初はそのつもりだったんだけどね。でも、そんなのもったいないわ」

 高校に入ってからの二年間、わたしはずっと学食でお昼をすませていたし、残りの一年もそのつもりでいた。でも、ふたりいるなら別だ。ひとり分を作るのは面倒なだけだけど、二人分なら手間はかかっても経済的だ。

「というわけで、こっちの大きなほうが那智くんのね」

 お弁当箱はふたつ買ってきた。わたしの分と、那智くんの分。同棲、もとい、ルームシェアをはじめてからの食べっぷりを見て、わたしのお弁当箱よりふた回り大きいものを選んだ。

「ありがとうございます」

 那智くんはわたしが差し出したそれを受け取った。

 そうしてから今度は、わたしの手の中にあるものと自分のものを交互に見比べはじめる。

「どうかした?」

 わたしが問うと那智くんはひと言、こう答えたのだった。


「おそろいですね」


 無邪気に笑う那智くん。

「え? あ、そ、そうね」

 そして、どういうわけか、わたしの顔の表面温度が上がった。

 確かにそうだ。同じデザインでサイズちがいのお弁当箱。しかも、中身は同じものになるだろう。見事におそろいだ。誰かに見られたら大変なことになる。

(でも、ちょっと誰かに見られたいかも……)

 誰かに見られて、「ふたりはどういう関係!? どういう関係!?」なんて、興味津々で詰め寄られたりして。

「先輩? すっごいニヤニヤしてますけど、どうかしたんですか?」

「え? な、なんでもないわ」

 そんなことになったら、どう誤魔化そうか――なんて考えていると、那智くんの声ではっと我に返った。……そうか。ニヤニヤしていたのか。ぺち、と自分の頬を叩く。

 確かに楽しい想像だった。ただ、残念なことに、わたしと那智くんが一緒にお弁当を食べるような場面がないのだけど。

「さ、お昼にしましょうか。すぐに用意するわ」

「僕も手伝います」

「そう? じゃあ、一緒に作りましょ」

 明日からのお弁当も大事だけど、まずは今日のお昼ごはんだ。

『廻る学園と、先輩と僕 Simple Life2』、発売日まで後4日です。

早いところだと明日には店頭に並ぶ、かも?

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ