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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第97話 麗子様は荒ぶる。

 ど、ど、ど、ど、どういうことぉぉぉぉぉ!?!?!?


 今、水面ちゃんが早見を「お兄様」って呼んだわ!

 でもでも、水面ちゃんのお兄さんは滝川なのよね?


「えっ? えっ? えっ?」


 滝川の妹の水面ちゃんのお兄さんが早見で、水面ちゃんのお兄さんの早見は滝川と爛れた関係のジル×セルで、ジルベールとセルジュも実は兄弟だったってこと?


 私の頭の中は風と木の大合唱で大混乱よ。麗子、大パニック!


 まさか三人とも血縁関係だったなんて。そんなことがあり得るだろうか。いえ、やんごとなき血筋の家ってけっこうドロドロした昼ドラも真っ青の裏事情があったりするものよね。


 ここは落ち着いて整理しましょう。


 水面ちゃんは滝川を「和也お兄様」と呼んでいた。そして、滝川も水面ちゃんと親しい様子。どうやら滝川のおじ様が道ならぬ恋の果てにやらかしちまった隠し子らしい。


 そこへ早見が登場して水面ちゃんは「お兄様」と呼んだ。これは滝川へではなく、間違いなく早見に対してだった。だって、水面ちゃん嬉しそうに早見に抱きついてたもん。


 つまり、水面ちゃんには二人の兄がいるってことになる。それも滝川と早見という日本有数のトップ企業の御曹司の。


 さて、その滝川と早見だが、彼らの出生ははっきりしていて両親も別々なのは確定。決して血の繋がりはないはずだ。


 そんな二人が水面ちゃんの兄になるなんてあり得ないはず……はっ!?


 滝川のおじ様の不倫相手は早見のおば様だったのね!

 これで全ての点と点が繋がって一本の線になったわ!


 つまりこいうことね。滝川は素敵にダンディな滝川のおじ様とバリキャリ美人な滝川のおば様との息子。早見は和風ダンディズムな早見のおじ様と儚い系美女早見のおば様との息子。


 そして、水面ちゃんは滝川のおじ様が掠奪愛で早見のおば様との間にデキちゃった望まれぬ娘。


 水面ちゃんにとって二人は異父兄妹だったのよ!——Q.E.D.証明終了


 きっと、滝川のおじ様と早見のおば様はもともと恋仲だったのね。だけど政略結婚で泣く泣く別れたの。でも、恋って諦めようとして諦められるものじゃない。それは熾火(おきび)のごとく燻り、火がつかないまま想いだけが熱くなっていったのね。やがて高まった想いは爆発的に燃え上がって、ついに二人は一線を超えてしまったのよ。


 そんな禁断の愛の結晶が水面ちゃんってわけよ。くっ、滝川のおじ様と早見のおじ様が早見のおば様を巡って繰り広げられた愛憎の三角関係。


 やがてその想いは遺伝して滝川、早見、水面ちゃんの三人も兄妹でありながら思いを止められなくなるのね。


 親子二代に続く泥沼の三角関係……あゝ、なんて悲劇!


 楓ちゃんと椿ちゃんに教えてあげなくっちゃ!


「言っておくが水面は瑞樹の妹だぞ。俺とは単なる幼馴染みだからな」

「…………もちろん分かっておりますわ」


 ちっ、面白くもねぇ。もっとドラマチックな話題を提供しろや。我が清涼院派閥は娯楽に飢えとるんじゃ。いつもいつもテメェにはガッカリだよ、滝川。


「ははは、清涼院さんはまたおかしなことを考えているみたいだね」


 こいつも相変わらず人の心を読みやがる。


 さすが真っ黒な堕天使だ。しっかし、水面ちゃんが早見の妹ねぇ。まったく水面ちゃんに悪影響だわ。このままではマイエンジェル水面ちゃんまで堕天しかねん。


 やっぱ、水面ちゃんは我が清涼院家で……


「あげないからね」


 にっこり笑って拒否されちまったい。早見もどうやらお兄様と同じくシスコンだったらしい。こいつも死す魂(シスコン)の持ち主だったとは意外だ。


 腹の中まで黒に染まった堕天使は穢れなき純白の天使に憧れるのやもしれん。人とは自分の失ったものに、いつまでも執着するものだからな。


 うーむ、だけど早見と水面ちゃんも全く似とらんな。主に内面が。って考えていたら、くいっくいっと私の手をちっちゃな手が引いた。


 何事かと思ったら私の手を握って水面ちゃんが上目使い。かーわいー!


「麗子お姉様、こっちでお茶にしませんか」


 はい、よろこんでー。


 水面ちゃんとおてて繋いでランランラン。

 私が良く座っていた奥のテーブルへゴー。


「懐かしいわ。ここは私がよく座っていた場所なんですのよ」

「まあ、麗子お姉様もなんですか」


 私もここがお気に入りなんですって嬉しそうに笑う水面ちゃん。天使か。天使だった。


「麗子お姉様と一緒です」

「うふふ、想いが通じ合っているなんて相思相愛ですわね」


 えへへへって水面ちゃん照れ笑い。イヤン可愛い!

 私の隣に天使がおる。ここは天国か。天国だった。


「相変わらずこの場所が好きだな、清涼院は」

「まだ一ヶ月も経ってないのに懐かしいね」


 ちっ、来るな寄るな魔王と堕天使が。せっかくの天国が地獄へ変わっちまうやろがい。


「よく三人でここに集まったよね」

「あの時のガレット・デ・ロワとポムデュデジールの味が忘れられん」


 お前らが勝手に寄ってきたんだろーが。それから滝川、お前は食べ物のことしか頭にないんか。私を食の清涼院とか呼んでおいて、お前の方がよっぽどじゃねぇか。


「お兄様達は仲がよろしかったのですか?」

「まあ、幼馴染みだからね」

「ふんっ、ただの腐れ縁だ」


 ざけんな。お前らが勝手に絡んできたんだろーが。それから滝川、お前はスイーツの件で私に借りがあるよな。いい加減返せやゴラ゙ァ。


「いーなー。私もお兄様達みたいに仲良しな関係に憧れます」


 は? どこに憧れる要素が? コイツらと仲良し小好しなんかじゃないからね? 勘違いしないでよね、水面ちゃん。


「水面ちゃんならもっと素敵なお友達ができますわ」


 スイーツバカと腹黒眼鏡みたいな不良物件よりはな。むしろ、コイツらみたいな悪いお友達はそうそうおらんぞ。


「私には無理です」

「そんな事ありませんわ」


 誰だって水面ちゃんみたいな天使とはお近づきになりたいもんよ。私が同級生だったら突撃して無理にでも友達になるわ。絶対に絶対よ。


「水面ちゃんなら大丈夫。いっぱいお友達ができますわ」

「でも……でも……クラスで……私」


 水面ちゃんが唇を噛んで俯いちゃった。何かあったのかしら?


「自己紹介の時に……クラスの子がおかしいって言うの」


 目に涙を溜めて水面ちゃんが今にも泣き出しそう。


 まさか、こんなに可愛い水面ちゃんをイジメてるヤツがいるの!?


 なんてこと。私の水面ちゃんを泣かせるなんて。オラオラ、どこのドイツじゃ。清涼院家の権力を駆使して潰すぞゴラ゙ァ!


 安心して水面ちゃん。麗子お姉様がそんな不届き者はとっちめてあげるから!


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