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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第96話 麗子様はまたまた衝撃の事実に驚愕する。

「どうして和也お兄様がこちらに?」


 天使ちゃんが頬を上気させて嬉しそうに滝川に話しかけている。


「おう、水面(みなも)に合わせたい奴がいて連れてきたんだ」


 いつも女子を煙たがる滝川もびっくりするくらい愛想がいいぞ。


「私に会わせたいお方ですか?」

「それがちょっと面白い奴でな」


 二人ともにこやかに会話している。あの滝川が美咲お姉様以外に笑顔を見せる女子がいたとは驚きだ。


 これは一目瞭然、二人はただの知己ではないな。ということは、この純真で無垢そうな天使ちゃんとコミュ障魔王滝川和也がマジで兄妹!?


 いやいやいやいや、ちょっと待って!


 滝川は一人っ子だったはずよ。少なくともマンガではそうだったわ。アニメもドラマも観たけど全て同じ。君ジャズヒーロー滝川和也は一人っ子のはずよ。


 だって見てよこの二人。確かにどっちも超美形よ。だけど容姿は似てないじゃない。それに性格だって魔王と天使ほどの差もあるのよ。


「もしかして、その方は清涼院麗子様ですか?」

「ああ、そうだが……なんだ、もう清涼院と挨拶を済ませたのか?」


 だけど、この気安い感じはホンマもんの兄妹にしか見えん。いや待て、天使ちゃんの目は恋する乙女のソレ。ならば、やっぱ兄妹ではないんじゃないか……って、考えてみれば私もお兄様に恋する乙女ではないか。


 素敵な兄に懸想するが妹の宿命(さだめ)……滝川が素敵な兄というのには疑問が残るけど。


「いえ、麗子様も今し方お越しになられたばかりで挨拶はまだ」

「そうか……おい、清涼院!」


 くっ、分からん。なにががどうなっているの?


「この子は水面(みなも)といってな……瑞…の……とで……」


 この二人の関係はいったい……はっ、まさか!?


 この天使ちゃんは不義の子なのね。それならつじつまが合うわ。マンガに登場してなくてもおかしくない。


 だ、だけどそれじゃ……あの素敵にダンディな滝川のおじ様がまさかの浮気!?


 ショック!!!


 不潔よ不潔、不潔だわ、おじ様。私というものがありながら。じゃなかった、あんな美人で素敵なちょい腹黒奥様とイケメンだけど残念無念魔王のちっとも可愛くない息子がいながら不義密通に(ふけ)っていたなんて。楓ちゃんと椿ちゃんに教えてあげなきゃ。


「おい、聞いているのか清涼院!」

「どわっ!?」


 いきなり耳元で大声出さないでよね。まったく相変わらずデリカシーのないヤツじゃ。私は滝川家の(ただ)れた私生活を垣間見て心配してやってたっつーのに。


「いったい何ですの?」

「人が紹介しているのにボーッとしているからだ」


 失礼な奴だ、ですって。こっちは滝川家のお家騒動を心配してやってたっつーのに。ほんのすこーしだけ面白がっていたけどさ。


「それで、その子を紹介したくて、滝川様は私を初等部まで引っ張ってこられたんですの?」

「まあ、それもあるな」


 ふんっ、これだけ可愛い妹なら自慢したくなるのも無理ないか。私だったら、こんな可愛い子が妹なら間違いなくあっちこっち自慢して回る自信しかない。


「もうご存知のようですが改めまして」


 滝川の妹ってのが引っかかるが、こんなカワイ子ちゃんとは是非ともお近づきになりたい。ここは愛想良くにっこりスマイルでペコリ。


「私は清涼院麗子と申します」

「なんだその笑顔は……気持ち悪いぞ。お前、本当に清涼院か?」


 失礼な!


 えっ、いつもはもっと澄ました顔してるだろって?

 そりゃ、不愛想なお前さんに合わせてるだけじゃ。


「まあいい、この子は今年大鳳に入学した『みなも』だ。水の面と書いてみなもと読む」


 水面(みなも)ちゃんかぁ。名前もかわえーのぉ。これで滝川の妹じゃなかったらなぁ。


「水面ちゃんとおっしゃいますのね」

「は、はい」


 おうおう、はにかんじゃって初々しいのぉ。マジでこれが無愛想な滝川の妹なんかぁ。信じられへん。


「とっても愛らしくて素敵なお名前ですわ。可愛いらしいあなたにとてもお似合いですわね」

「わ、私も気に入っているんです」


 顔まっ赤にして上目づかいとか殺人級の愛らしさよ。萌え死にしそう。


「あ、あの、麗子お姉様とお呼びしてもいいですか?」

「ええ、もちろんよろしくってよ」


 ウッヒョーッ!


 麗子、お、ね、え、さ、ま、ですってよ奥様。なーんて甘美な響きザマショ。もっと呼んで、もっと呼んで。


 やっべぇ、水面ちゃん、お持ち帰りしたくなったわ。ホントの姉妹になろうかしら。滝川家の隠し子なら家で引き取ってもいいんじゃなかろうか。


 きっとお母様も喜ぶに違いない。って、いかんいかん。こんな可愛い子を見たらお母様が暴走してドリルヘアにしてしまいかねん。水面ちゃんの髪型は私が死守せねば。


「それじゃあ、私も水面ちゃんって、お呼びしてもよろしいかしら?」

「は、はい、もちろんです、麗子お姉様」


 めっちゃ素直でええ子や。イヤン、麗子こんな妹が欲しい!


「滝川様、水面ちゃんを私に下さいませ!」

「ちょっ、落ち着け清涼院!?」


 おらおら、滝川家のご落胤なら持て余しとんのやろ。我が清涼院家が水面ちゃんを全面バックアップするから寄越せやコラァ!


「私の妹として責任を持って我が家に迎えますわ」

「お前なんかテンションがおかしいぞ」

「水面ちゃんならお母様もさぞ喜ばれるに違いありません」

「清涼院家はみんなおかしい!?」

「さっそく養子縁組いたしましょう」

「水面は犬猫じゃないんだぞ」


 良いではないか、良いではないか。


「だいたい俺にそれを決める権利も権限もない」

「そこをなんとか」

「なんともならん!」


 ちっ、けちんぼめ。いいじゃん一人くらいくれたって。


「だいたい、それを頼む相手が違うだろ」

「うーん、そうですか。それでは滝川のおじ様に……」

「どうして俺の父さんが出てくる」


 どうしてって……滝川のおじ様が外でこさえた子だからではないですか。


「お前やっぱりさっきの俺の話を聞いていなかったな」

「何のことですの?」

水面(みなも)は俺のじゃなくて瑞樹の……」

「二人ともずいぶん楽しそうだね」


 突然、私と滝川の会話に割って入る声。


 誰じゃい、いま重要案件の話し合いの最中だってーのに、って振り返ったら腹黒眼鏡がいやがったよ。なんか笑顔なのに目が笑っとらんな。


「こんにちは、清涼院さん」

「これはこれは早見様、ご機嫌麗しゅう」


 挨拶しながら堕天使(はやみ)を牽制していたら、水面ちゃんが飛びつくように早見に抱き着いた。


「お兄様!」


 えっ!? 早見も水面ちゃんのお兄さんなの!?


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