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麗子様は好き勝手に生きてやる!  作者: 古芭白あきら
第4章 中等部のみぎり

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第95話 麗子様は衝撃の真実に驚愕する。

 ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

 な、なんなのこの天使は!?


 たぶん初等部の新入生なんだろうけど、白の制服のせいでモノホンの天使かと思っちゃった。背中に天使の羽根をつけたら似合いそう。思わず叫び声が口から飛び出すとこだったわ。


 危ねぇ、危ねぇ。


 私からしたら初等部の菊花会(クリザンテーム)メンバーはみんな歳下の可愛い後輩だ。だけど、そんな粒揃いの中でもこの天使ちゃんは別格だわ。


 目なんかクリッとして大きいし、幼児特有の丸みを帯びた顔も整っていてお人形さんみたい。透き通るように真っ白な肌で、日本人には珍しい琥珀色の瞳が神秘的。


 窓から差し込む春の陽光に照らされ色素の薄い髪がきらめいて幻想的な姿と相まってまさに天使ちゃんと呼ぶべき存在だわ。


 上級生の子達も天使ちゃんを見て頬を染めてきゃいきゃいはしゃいでるもの。分かるわーその気持ち。こんだけ可愛い子だとテンション上がるわよね。


「あのぉ?」


 私が見惚れていたら、天使ちゃんの顔が不安そうに暗くなった。あーごめんね。私、決して怪しい者じゃないから。そんな不審人物を見るような目をしないでぇ。


「お姉様のその制服は中等部のものですよね?」

「ええ、その通りですわ」


 まあ、初等部のサロンに中等部の者が出入りしてたら、そりゃ何事かって思うわよね。私の顔ってばキツイから天使ちゃんを怯えさせないようにしないと。


 麗子スマーイルでなるべく威圧しないようにしてっと。


「私は先月までここに在籍していた……」

「このお方は清涼院麗子様ですわ」

「先月まで初等部のサロンを牛じ……じゃない、取り仕切っておられた大先輩よ」


 ちょっと、今『牛耳って』と言おうとしたでしょ!


 言ったの誰?って顔を向けたら後輩ちゃん達がいっせいに目を逸らしやがった。お前らみんな私をそんな風に思ってたんかい!


「えーと、そうそう、麗子様はサロンに多大な貢献をされた素晴らしい方なの」


 おい、今のなんか取り繕ってないか?


「ええ、なんせサロンの食文化を一段も二段も引き上げたかの食の清涼院ですもの」


 その名で呼ぶなぁぁぁ!!


「しかも、スイーツに関してはあの滝川様も一目置かれておられますし」

「ええ、ええ、麗子様こそまさに食の伝道師ですわ」


 誰が食の伝道師じゃ。また不名誉なあだ名を作りおってからに。テメェら私を食いしん坊だと思ってんだろ!


「しかも、才色兼備でいらっしゃるのよ」

「成績は学年トップ、運動神経も良くって体育祭でも大活躍なされておられたわ」

「あのリレーでの最下位からごぼう抜きは今でも語り草……あっ!?」


 キサマァァァッ! それはコロネの悪夢とドリル大魔神のことかーーーっ!!!


 あっやべって、慌てて口を押さえても遅せぇわ。


 くっ、菊花会(クリザンテーム)の後輩達は私のことをそんな風に思ってたのね。どいつもこいつも私を誰だと思っていやがるっ!


 もうっ、これじゃ天使ちゃんも怯えちゃうじゃないのよ。天使ちゃん、大丈夫よー。私、恐くないお姉さんですよー。


 にっこり笑って優しいお姉さんアピール。そしたら天使ちゃんがコテンッて小首を傾げたの。コテンッよコテンッ。めっちゃ可愛いの。


「もしかして、お姉様が()()清涼院麗子様なんですか?」


 ん? ()()


「『あの』かどうかは分かりませんが、私は清涼院麗子ですわ」

「この大鳳学園の初等部を今年卒業なされた?」

「ええ、そうですわね」


 どうやら天使ちゃんは私の事を知っているみたいだけど……まさか、ここの後輩達がいらん(デマ)を流してたんじゃないでしょうね?


 じろっと後輩達を見回せば、全員がもげるんじゃないかってくらいブンブン首を横に振る。


 あら、違うの?


「どうして私をご存知なんですの?」

「お姉様のお噂はかねがねお兄様からお聞きしておりました」


 お兄様?


 私を知っているんだから大鳳の生徒よね。しかも、天使ちゃんの様子から頻繁に私の話題を自宅でしてるみたい。だとすると、私に近しい存在の可能性が高い。


 そんな男子に心当たりは……はっ、まさか!


 天使ちゃんのお兄さんは粗忽(そこつ)迂闊(うかつ)!?


 い、いや待て私、落ち着け私。この地上に舞い降りたモノホン天使ちゃんが、あのヒョロの粗忽や七三分けの迂闊と同じ遺伝子であって良いはずがない!


 容姿だけではない。受け答えもしっかりしていて、とても小学一年生とは思えない。天使ちゃんのお兄様はかなりのイケメンでしっかりした人物に違いない。きっと、女の子にモテモテよ。


 うーん、そんなスパダリみたいな存在が私の身近にいただろうか……はっ、まさか!


 清涼院雅人——我がお兄様か!?


 確かにお兄様なら納得よね。だけどそれって、お父様に隠し子がいたってことじゃない。これがお母様に知られたら離婚は必至。清涼院家に嵐が吹き荒れるわ。


 お父様、不倫の代償は大きいですわよ!


 ——バンッ!


 私がパニクっていたら、サロンの扉が大きな音を立てて開け放たれた。こんな乱入してくるのは滝川和也しかいない。そういやコイツ置いてきちまってたな。


「おい清涼院、一人で先に行くな!」


 しっかし、コイツは扉を乱暴に開けないといけない病気にでもかかっとんのか。卒業しても全く成長していないな。


「滝川様、何度も申し上げておりますが、扉はもう少し静かに……」


 って、私が滝川を叱り飛ばそうとしたら、天使ちゃんが飛び出してきた。


「和也お兄様!」


 えっ、和也……お兄様ぁぁぁ!?


 滝川も天使ちゃんに気づいてニカッと笑った。


「おう、水面(みなも)か」


 そ、そんな、この超絶カワイイ天使ちゃんのお兄様が滝川なんですの!?


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