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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
最終章 What a Wonderful World

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最終話 聖剣士に愛され、魔弓を愛した少年の物語

 屋敷に戻り、ロイは虎のシェンフーを抱っこし、思いっきりモフモフした。


『おかえり、早かったなー』

「まあ、挨拶だけだしな。よしよし、モフモフで気持ちいいな。今日は可愛がってやるぞ」

『ん~……お? ねえロイ、帰ってきたよ』

「え?」

 

 と、屋敷の鉄門が開き、エレノアとユノ、アオイ、ついでにセレネが来た。

 いきなりで驚いていると、エレノアが言う。


「ちょっと!! 王都に来てたんなら顔見せてよ!! セレネのとこで聞いたわよ!? あんた正門まで来て入れないからって帰らないでよ!!」

「ロイ、せっかく久しぶりに一緒に遊べると思ったのにー」

「ふむ。いささか薄情であるな。うむ」

「ごめんロイ。あなたに会ったら『もういいかな』って思って。パン屋、知り合いにあげて引っ越してきちゃった」

「お、おいおいおい。マテ、落ち着け、落ち着けって」


 迫るエレノア、ユノ、アオイ。そしてセレネ。

 デスゲイズが弓から人の姿になると、ニヤニヤしながら言う。


「くっくっく。今夜は長い夜……いや、朝までかかるな。ロイ、死ぬなよ」

「「「「………まあ、確かに」」」」

「いや待て、いきなり全員は……」


 この日、ロイはたっぷりと全員を愛し、満足させるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 エレノアたちはしばらく休日とのこと。

 屋敷のリビングでのんびりお茶を飲み、今後のことを話した。


「あたし、しばらくは家での~んびりしたいな。ねえロイ、ここって綺麗な湖あったよね? みんなでピクニック行かない?」

「いいな。ユノはどうしたい?」

「ロイとゲームしたい。王都や魔界でボードゲーム買ってきた。みんなでやる」

「よしやろう。アオイは?」

「読書だな。しばし、書斎で時間を忘れ、読書に没頭する……ロイ、お前も一緒に」

「いいよ。そういう時間も大事だ。セレネは?」

「やりたいことっていうかお願いだけど……庭の隅っこでいいから、パンを焼く窯が欲しいかも。せっかくパン屋の技術あるし、みんなにおいしいパン食べて欲しい」

「わかった。じゃあ、村でパン窯の図面もらって作るか」


 それぞれ、やりたいことを話す。

 デスゲイズはニヤニヤしながら言う。


「我輩は、オマエたちに付き合おう。くくく、ず~っとロイと一緒だったからな。ヤリたいことは特にないなあ」

「「「…………」」」

「おいデスゲイズ、煽るな。みんなしっかり仕事して金稼いでんだよ」

「おいその言い方、我輩が何もしていないみたいじゃないか!!」


 デスゲイズがギャーギャー騒ぐと、みんな笑った。

 楽しい休日は、始まったばかりである。


 ◇◇◇◇◇◇


 平和な日々が続いた。

 エレノアたちとキャンプし、ボードゲームで盛り上がったり、みんなで読書したり、パン窯を作ってみんなで生地をこねたり。

 狩りに出かけたり、一日中屋敷で愛を確かめることもあった。

 そして、エレノアたちの休暇が終わり……王都へ。

 途中、オルカとユイカの宿に泊まり、みんなでお酒を飲んだりもした。

 ユイカの子供が間もなく生まれると聞くと、エレノアたちも子供を欲しがったり……近い将来、実現する可能性も低くはない。

 そして、エレノアたちが王都へ。

 ロイ、デスゲイズは屋敷に戻ると、二人きりだった。


「そっか、セレネとシェンフー、買い出しに行ったのか」

「久しぶりに二人だな」


 ロイとデスゲイズは、森を散歩した。

 そして、見晴らしのいい高台に到着し、丸太を横倒しにしただけの特製ベンチに座る。

 この高台から、トラビア王国はよく見えた。


「……いい景色だな」

「ああ。素晴らしい景色だ」


 こうして、のんびり過ごすのは好きな二人。

 相棒であり、武器。

 ロイとデスゲイズの日々は、これからも続く。


「なあデスゲイズ。お前はさ……俺が死んだら、どうなるんだ?」

「決まっている。我輩も一緒に消滅するさ」

「……でも、俺の命の元になっている権能はお前に戻るんだろ? お前は不変の魔王だし……俺が死んだあとも」

「興味はない」


 デスゲイズは、はっきり言った。

 立ち上がると、風が吹き……白銀の髪がなびく。


「我輩の人生は、お前と共に始まり、終わる。最初は復讐だったが……今は、お前と共に人の人生を歩むことが人生の目標だ」

「……デスゲイズ」

「我輩は、死んだあとの世界を少し信じている」

「……死後の世界?」

「ああ。魔王がいるんだ、神様だっている。きっと、神様の国は、いいところだ。お前が死んで、我輩も死んで、いつかエレノアたちとも再会する。そうすればきっと、楽しいぞ」

「お前の前向きなところ、本当に最高だよな」


 ロイも立ち上がり、デスゲイズの隣に立つ。


「これからもよろしく頼むぞ。俺の愛しい魔弓デスゲイズ」

「ああ。これからも愛してくれよ、旦那様」


 と、顔を寄せ合いキスをしようとした時だった。


『グァァオォォォォォ!!』


 なんと、上空に漆黒のドラゴンが現れた。しかも、十体以上。

 ブラックドラゴンズ。討伐レートSS。魔界で恐れられる、群れで活動するドラゴンたち。

 一体一体が街を、国を亡ぼすレベルの強さで、それが群れで行動するのだ。パレットアイズが討伐の手配をしたが、逃げられて人間界まで飛んできたようだ。

 たまに魔界から飛んで来るのだ。魔獣なら地上で聖剣士が撃退するのだが、雲の上を飛ぶ魔獣は見逃すことも多くある。

 ロイとデスゲイズはキスをやめ、顔を見合わせ苦笑する。


「おあずけか?」

「だな。じゃあ……やるか、相棒」


 ロイが言うと、デスゲイズは弓に変わり、ロイは久しぶりに言う。


「『黒装(トランス)』!!」


 漆黒のコート、仮面、矢筒。

 世界最強の弓士『八咫烏』は、矢筒から一本の矢を抜き、番え、構えた。


「さぁ──……三分で、ケリ付けようか!!」


 虹色の矢が、青空に向かって放たれた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 聖剣に嫌われ、弓に愛された少年の物語は続いていく。

 聖剣士に愛され、魔弓を愛し、魔王に愛された少年の矢は、これからも世界を射抜く。


 ─完─

これにて完結です!!

応援ありがとうございました。

コミカライズはまだ続きますので、↓のリンクからよろしくお願いします!!

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〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
【コミカライズはこちらから↓】
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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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[一言] 2年間の連載お疲れ様でした! しっかり完結していただき感謝です。
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