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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第54章 レセプションそして開店へ

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第536話

 レセプションは無事終了した。

 全ての来客を送り終えた俺たち『羅甸』のスタッフは、客席の椅子に座ってひと息ついた。


「司会、お疲れさまでした。ありがとう」


 まずは田中君を労った。緊張で手と声を震わせながらも頑張って司会を務めてくれた。欧米ならハグして礼をするところだろうが、それをするなら先に裏田君にしてからでないとセクハラになる。


「あ、いえ。大きな失敗がのおてよかったです。それに、ええ経験になりました」


 安堵のせいか、それとも疲れのせいか……少しトロンとした目をして田中君が言った。もしかしたら、司会の重責で前日から眠れなかったのかも知れない。費用をケチらずにプロの司会を呼べばよかったかな、とは思ったのだが、彼女自身がこの経験を良い糧だと思うのならお願いして良かった。


「裏田君、俺がバタバタとしている中、厨房をきちんと任せることができて本当に助かった。ありがとう」

「いや、僕は自分のやることをやっただけです。それよりも、『鮓藤田』の大将と友だちやったら、今度連れてってください」

「みんなを連れて……っていうのは難しいが、考えとくよ。一昨日、ミミルと行ったんだけど、その時のお会計に見合わない胡蝶蘭が届いたからね。もっと店に来いってことなんだろう」


 俺が自嘲気味な笑みを浮かべて言うと、裏田君は「はい、是非!」と言った。本気ではなかったのだろうが、俺からの思いもよらぬ返事に満面の笑みで返事した。

 でもそうなると裏田君の妻である千尋さんも黙っていられない。


「え、旦那だけですん?」

「いや、それは……お子さんもいらっしゃるし、相談はしてみますけど」

「冗談ですやん」


 バシッと肩を叩きながら千尋さんが笑った。皆も、俺の困った様子と千尋さんの楽しそうな笑顔を見て笑う。

 まあ、こればかりは揶揄われてもしかたがない。

 貸し切りにできれば、いまのメンバー全員が入ってもあの店は問題ないだろうが、予約が取れるかどうかだな。


「で、千尋さん。今日は応援、ありがとうございました。田中君が司会で、俺が主催者という立場上、動けないところで上手くフォローしていただけて本当に助かりました。乾杯の時の手際の良さは本当に、素晴らしかったです。ありがとうございました」

「そんな褒めても、何も出ませんよ。でもまあ、なんかあったらまた言うてください」


 俺の言葉に、千尋さんが照れ臭そうに言った。

 ダンジョン第21層は無事攻略を終えたし、ダンジョンの種ができるまでは本格的な攻略をするつもりはないが、もし万が一、ダンジョンで俺の身に何かあったら……そのときは裏田君が社長になってこの店を切り盛りしてくれるだろう。その裏田君を千尋さんが支えているなら安心だ。

 これは過大評価でも何でもないと思う。


「はい、遠慮なくお願いすることにします」

「うちも仕事あるから多少は配慮して欲しいかな」

「もちろんです。本当に今日はありがとう」


 最後になったが、岡田君、本宮君の2人にも俺は礼を述べた。

 アルバイトと言え、今日は料理の補充や飲み物を配るために絶えず店内を歩きまわってくれた。最初は覚束なかったトレイの扱いも、レセプションの中では目を向けることなくグラスを運んでいたと思う。


「じゃあ、ひと休みしたことだし。残り物で少し我々もお祝いをしよう」

「なんや、わかったはるやないの。挨拶だけで終わるんかと思てしもたわ」

「すんません、こういうヤツなんで……」


 念のためと料理は多めに用意している。50人招待して、最終的に来た人たちは48人。うち3人は同窓生の飛び入りだが、なかなかだと思う。


「じゃあ、俺は2階へ行って、陽菜ちゃんと陸くんを呼んでくる。先に始めててくれ」

「了解です」「はーい」


 裏田君とその妻の千尋さんが返事をするのを見た際、ミミルが視界に入った。ムスッとした顔で、何か怒っているようにも見えた。


『ミミルも、陽菜ちゃんや陸くん、秦さんの相手をしてくれてありがとうな』

『手伝いが必要なら、また言うといいぞ』


 念話で帰ってくる言葉はいつものように偉そうなのだが、伝わってくる雰囲気はどこか嬉しそうだった。


 2階から裏田君の子どもたちを連れて下りてくると、皆が瓶に残ったワインやビールを飲んで楽しそうに食事をしていた。陽菜ちゃんと陸くんは千尋さんのもとへと走って行った。

 裏田君が少し寂しそうにそれを眺めていたが、俺の視線を感じたのか、こちらに視線を向けた。


「オーナー、ボクがピザ焼いてもええですか?」

「もちろん問題ない。好きな具材で作っても構わないよ」

「ありがとうございます」


 裏田君は慌てて厨房へと走って行った。既にテーブルの上にはマルゲリータ、クワトロフォルマッジ共に残っていない。陸くんが嬉しそうにマルゲリータに噛り付いている。

 子どもにはクワトロフォルマッジは食べづらいだろうし、マルゲリータは物足りなさそうだ。もっと生ハムやサラミが載ったピッツァの方が嬉しいだろう。制限を撤廃したのは正解だったようだ。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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