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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第52章 ダンジョン攻略

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第511話

 ミミルから鍵を受け取り、俺は3つ並んだⅠの文字の中央部分。穴になったところにその鍵を挿しこんだ。鍵はぴったりの幅で、何の抵抗もなく奥へと入っていく。


〈鍵って回して開けるものだよな。エルムヘイムでは開けるときは左回しなのか?〉

〈開く時は左回しだ〉


 俺は金色の鍵らしきものを最も奥まで挿し、鍵を左に回した。

 普通なら、鍵を開けるとガチャリだとか、カチッとか、なにか音がすると思うのだが、特に何も音がしなかった。


〈――おっ!?〉


 ただ、鍵が吸い込まれるように穴の中に入っていった。何の前触れもなく、鍵だけが吸い込まれて消えたので、俺は少々焦って声がでた。

 ミミルがジトリとした目で見つめてきたが、ミミルが怖がるようなことをしているんだから、想定外のことが起これば俺も驚くのは仕様がないと思う。もしミミルが鍵を挿していたりしたら、もっと大騒ぎになっていたんじゃないだろうか。いや、意外に動揺しているけれど、表情ひとつ変えることなく固まってるかも知れないが。


〈鍵、吸い込まれたぞ?〉

〈どういうことなのか私にもわからん。ただ、先に進むにはこの窪みにメダルを嵌めるしかなかろう。早くするんだぞ〉


 ミミルが第4層へ先に移動しようと転移石に手を伸ばした。

 でも、俺は慌てて制止する。


〈いや、ちょっと待ってくれ〉


 確かにミミルの言うとおり、先に進むにはこのままメダルを嵌めるのが正しいとは思う。だが、既に全層を一度攻略しているミミルが先に転移石に触って第4層に行った後、俺だけが違うところに飛ばされたらヤバい。

 俺がメダルを嵌めてから、同時に転移するようにしないといけない。


〈先にメダルを嵌めるから、一緒に移動してくれ〉

〈ふむ、それは別に問題ないが……一緒とは?〉


 ミミルが俺にたずねたが、先に俺はメダルを嵌めこんだ。すぐに転移石が光りはじめる。だが、今回はいつもと様子が変っていた。


〈ミミル、なんか色が違う気がしないか?〉

〈うむ、そうだな。これは何かあるのかもしれん〉


 第1層、第2層の転移石は白く光っていたが、今回は何故か青みを帯びた白にみえる。


〈チキュウには『テレビゲーム』というのがあって、いろんな『ゲーム』がある。その中でもダンジョンがある『ゲーム』ではこういう場合は『隠れボス』みたいなのがいることがあるんだ〉

〈その『隠れボス』とはなんだ?〉

〈隠し通路や、隠し部屋の中にいる強い守護者――と言うとわかりやすいかな?〉

〈強い守護者、か……〉


 ミミルは左手の指先に顎をのせ、左手の肘を右手で支えて黙考を始めた。

 おそらくだが、これまでにミミルが出会ってきた強い守護者を思い浮かべているのだろう。


〈まあ、チキュウの『ゲーム』での話だから、実際にそういう場所に飛ぶのかどうかは知らないぞ?〉


 俺の言葉を聞いて、ミミルは考え込むときのポーズを解いた。それもそうだ、とでも思ったのだろう。


〈では、とにかく転移石に触れて移動することにしよう。まさか第1層に戻される……なんてことはあるまい〉


 ミミルの話では、ダンジョン第一層から第3層まではチュートリアルのようなもの。実際に肉類をドロップする多くの魔物、野菜系の魔物、自生している野菜や穀物などがあることを考えると、第3層まで行けば普通に生活していくことができるのだろう。

 そして、第4層から難易度が変わると言っても、第3層の守護者を倒せたということは第4層に行く資格を得たということなのだ。

 だが、いま青白く光っている転移石の先は俺にとってはもちろんのこと、ミミルにとっても未知の世界だ。なのに、ミミルが一緒にいてくれることがとても頼もしい。


〈じゃあ、行くか〉

〈うむ、3つ数えたら同時に手を触れよう。ああ、て、手も繋いだ方がいいか……〉


 ミミルが少し恥ずかしそうに俯いて言った。

 街を歩く時は当然のように手を繋いでいるし、自分から俺の手に掴まってくるくらいだ。それに、他に誰かが俺たちを見つめている――なんてことはあり得ない場所なのだから、何が恥ずかしいのか俺にはわからない。

 でも、ミミルも初めて行くかも知れない場所に転移される可能性もあって、不安なのだろう。俺は左手でミミルの右手を取ってギュッと力を込めた。


〈行くぞ、1、2、3!〉


 ミミルの掛け声に合わせ、俺は転移石に右手を置いた。


 いつもと同じように、目の前が真っ白になった。

 また目を閉じるのを忘れていた俺は慌てて目を閉じたのだが、間に合わなかった。

 一瞬だけ、ふわりと体が浮き上がり、地に足がついていないような感覚が身体を襲う。だがすぐに地に足をついた感覚が戻ってきた。

 恐らくどこかに到着したのだろうが、瞼の中が真っ白で何も見える状況ではなかった。


〈なんだ。しょーへいはまた目を瞑るのを忘れたのか?〉


 ミミルの少し呆れたような声が、部屋の中らしき場所でこだました。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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