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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第47章 治癒の魔法

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第465話

 草原を掻き分けるように向かってくる3頭のルーヴに相対し、俺は外側に広がった2頭を狙って左右のナイフを振った。魔力視を纏っていればその魔力の刃が見えるのだが、第3層あたりの魔物はそこまで器用ではない。眉間にザックリと魔力の刃が突き刺さり、俺に飛び掛かる前に断末魔の叫びさえ上げることなく2頭のルーヴが倒れた。

 残る1頭はただ俺に向かって一直線に駆けてくる。おそらく、残りの2頭がどうなったかなど見えてもいないのだろう。

 残り10メートルくらいになったところで、ルーヴの大きさが3メートルほどあることに気が付いた。とても大きな顔は、ライオンをイメージさせるが人間で言えばもみあげから顎の下まで髭が伸びているような感じで(たてがみ)らしきものが生えていた。

 まともに正面から受けるには体格差がありすぎる、と直感的に感じた俺はサイドステップを踏んで避けようとした。だが、ルーヴは大きく咆哮を上げると猫のようにしなやかな身体を使って突進コースを変えてきた。


「アイスバレット!」


 咄嗟に右手を突き出し、空間魔法を使って発現点を変えた氷弾の魔法を唱えた。ナイフを持つ手の周囲に3つの白い光が発生し、そこから氷弾がルーヴに向かって飛び出していく。

 ほぼ最大速度で俺に向かってきたルーヴは、初速で時速200キロを超える氷弾をまともに顔に受けて怯んだせいで、額から俺にぶつかるように飛びついてくる。

 アイスバレットを射出した姿勢から俺は緋色に輝く右手のナイフをルーヴの眉間に突き立てた。勢い止まらぬルーヴは既に白目を剥いているが、俺を押し倒すように草原に倒れる。その衝撃で俺は右手のナイフを手放してしまった。

 力なく俺の上に横たわるルーヴは体格的に相当な重さがあるが、いまの俺であれば苦も無く動かすことができた。俺はすぐに西側正面から向かってくるルーヴへと対応するため、左手のナイフを右手に持ち替えて構えを取る。だが、それとほぼ同時に2頭が咆哮を上げて順に飛び掛かってきた。

 彼我の距離は7メートルは残っていたが、最高速度まで上げたルーヴからすれば十分届く距離だった。だが、空中に身体があれば、容易に方向を変えることはできない。

 右から1頭目、少し遅れて2頭目が左から来る。


「クソがぁっ!!」


 こんなところで怪我をするわけにもいかない……そんな思いが脳裏を過り、俺は気が付くと右足を使って全力の回し蹴りを1頭目の顔に叩き込んでいた。

 鉄板の入ったブーツの先が、ミシリと音を立ててルーヴの蟀谷に当たると同時、その反動で俺の身体は右側へと意図せずに飛ばされた。逆に1頭目のルーヴは俺とは逆の方向へと向きを変え、後ろからやってきた2頭目が進路を塞がれて衝突した。2頭が接触する音は、交通事故でも聞けないような迫力ある低音で、骨の砕ける音なども混ざっていた。

 期せずして2頭と少し距離を置くことができた俺は、先ほど倒したルーヴの眉間からナイフを抜き取り、再度両手にナイフを持って注意深く2頭のルーヴへと視線を向けた。

 1頭目は思いっきり脳が揺れたのか、フラフラとなんとか立ち上がる。2頭目は下顎の骨が折れたようで、ダラダラと口から血を流しながらも立ち上がって俺の方を睨みつけている。

 完全な近距離戦になってしまったが、俺の両手に持ったミミル特製ナイフは緋色の輝きを保ったままだ。

 俺は再び両手のナイフを左右に振って、ヴィヴラを飛ばした。狙いは1頭目の首。

 目に見えない2枚の刃が未だ朦朧としている1頭目の首を見事に切り落した。2頭目は瞬時に倒された1頭目の姿を見て、1歩、2歩と後退(あとずさ)る。顎が割れてしまっては、噛みついて俺を殺すなんてことは不可能だ。それを自分自身で認識しているのだろう。だが、俺は容赦はしない……いや、このまま生かしておく方が、治癒魔法のないダンジョン世界では酷というものだ。


「――マイクロウェーブ」


 俺のアイスバレットやストーンバレットではまだ致命傷を与える力はない。そのことを牽制のために使ったアイスバレットで認識した俺は、確殺できる魔法を使うことにし、顎の割れたルーヴに向けてこれまでにない出力で電磁波を放った。

 瞬時に毛や皮の焼ける匂いが漂い、ルーヴが藻掻き苦しみ始め、5秒も経たずに口から泡を吹いて倒れた。


 残りは左――南西からやってくるはずの2頭だ。だが、その2頭がやってくる気配がない。

 視界全体にも草を掻き分けて進んでくる様子は見えない。念のため、音波探知を使ってみるが、どこにも反応がなかった。


 空を見上げると、ミミルが腕を組んでこちらを見下ろすように宙に浮いていた。


『こっちの2頭は、間引いてくれたのか?』

『いや、劣勢を悟ったのか逃げて行ったぞ』

『そうか、それはよかった』


 ミミルの説明を聞いて、安心したのだろうか。緊張の糸が解れ、俺は全身から力が抜けてその場に仰向けになって倒れた。

 見あげた空にはイチゴ柄のパンツをはいたミミルの姿があった。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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