第459話
十数頭のフロウデスを倒した頃になって、ようやくフロウデスの皮が揃った。俺の皮鎧を作るにはフロウデスの尻皮が6頭分必要だそうで、余裕を見て8頭分の皮を集めることになったので1時間半ほど掛かってしまった。
いま、俺とミミルは中洲の南側へと渡る橋を歩いている。
〈しょーへい。空間魔法はどの程度まで使えるようになった?〉
〈ちょっと待ってくれ。技能カードを……〉
俺はポケットの中を探し、技能カードを取り出した。
前回と同様、重い鈍色をしたカードを指先に摘まみ、魔力を流し込むと文字が浮かび上がった。
――◆◇◆――
氏名:高辻 将平
種別:ヒト
所属:地球 日本国
年齢:36歳
職業:無職
スキル:
料理Ⅳ、目利き(肉Ⅳ)(魚Ⅲ)(野菜Ⅳ)、包丁術Ⅳ、狩猟Ⅱ、解体Ⅱ、皮革加工Ⅰ、短剣Ⅱ、弓術Ⅱ、身体強化Ⅱ、魔力強化Ⅱ、魔力操作Ⅱ、魔力探知
基礎魔法(無Ⅱ)(風Ⅰ)(土Ⅰ)(火Ⅰ)(水Ⅰ)(氷Ⅰ)(雷Ⅰ)(空間Ⅱ)
空間収納
四則演算
加護:
波操作、エルムヘイム語Ⅲ
――◆◇◆――
俺が手に持ったカードを裏から覗き、ミミルがフムフムとどこか満足気に頷いている。
〈お、空間魔法がⅡになっているな〉
〈本当だ。いつの間に……〉
基本的にアイテムや魔石がドロップすると、空間魔法を用いて空間収納へと仕舞うようにしていた。
第2層で食材集めをする際にキュリクスやファルを大量に狩ったので、その時に練度があがったのだろう。多少、直線上に無いものも拾うようになっていたのかも知れない。
〈だが、色はまだ鈍色のままではないか。そろそろ赤銅色に変わってもいい頃だが……〉
〈そんなに何度も変わるものなのか?〉
〈技能カードの色は、取り込んだ魔素の量を表す。第10層以降は空を飛べないと厳しい環境があるのだが、余裕を持って空を飛べるほどの魔素量を蓄えていて欲しい。そのためには、あと2回、色が変わる必要がある〉
カードの色は最初がブロンズのような赤銅色で、次が真鍮のような黄銅色、そのあとに鈍色になったはずだ。
〈この後はどんな色になるんだ?〉
〈自分で確かめろ。それもまた楽しみの一つだからな〉
〈なるほど……〉
ミミルに言われて納得した。
魔素を取り込んだ量が増えれば、この技能カードの色がまた変わる。その色がどう変化するのか、先に知ってしまうと魔物を倒すたびにカードが気になってしまうだろう。魔物を倒していたらカードの色が変わっていた、というくらいの方が俺の性格的にちょうど良い。
〈まあ、空間魔法の習熟度が上がっていたのはよかった。ただ、他の魔法がさっぱりなのは問題だな〉
〈ほとんど使っていないからなあ〉
基本的に俺が使っている魔法はエアエッジにエアブレードが主体。ミミルもそうなのだが、この2つが便利すぎる。一応、最近は簡易コンロに火をつけるときだとか、焚火台の薪に火をつけるときに火魔法を使ってはいる。水魔法も顔を洗ったり、料理のために鍋の中に出したりしているが、それだけだ。あと、バーベキューをするのに土魔法でブロックを作ったりもした気がする。
〈この草原で火を使うのは良くないからしようがないが、水と氷、土、風、雷は積極的に使え。特に空間魔法がⅡになったのなら、離れた場所から魔法を出す練習も合わせて使えばいい〉
〈そうは言うけどな……〉
〈まずは私の真似をしてみるといい――エスキュロ〉
ミミルは歩きながら手を突き出して、魔法を唱えた。
手の先からではなく。突き出した手の上、20センチほどの場所に、直径5センチほどの氷塊が出て飛び出す。
氷塊は一瞬で20メートルほど飛んで、勢いを失って地面に落ちた。
ミミルはどうだと言わんばかりに無い胸を張ってみせる。
「すごい」と、素直に俺は思ったことを口に出し、手を叩いてミミルを称賛した。
ミミルは照れることなく、平たい胸を張り続けている。
可愛いと褒めると照れるくせに、魔法を褒めると照れないのが不思議なところだ。まあ、魔法師団筆頭という立場であれば、魔法に関しては褒められ慣れているのだろう。
肝心なミミルのお手本は非常に複雑なことのように見えた。
俺はアイスバレットという魔法を使える。氷塊の大きさを直径3センチくらいにイメージし、男子プロテニスプレイヤーのサーブと同じくらいの初速――秒速60メートルで狙ったところに飛ばすイメージで魔力を込めて飛ばすものだ。1秒間に5発くらいまでなら連射できる。
そのアイスバレットに空間魔法を組み合わせるにしても、どうすればいいのかわからない。
〈氷塊を飛ばす魔法の中に空間魔法を組み込む、でいいのか?〉
〈指先から出る氷塊を空間魔法を通して飛ばすのではない。空間魔法で氷塊が出る場所――発現点を変えるのだ〉
発現点というのは、魔法発動する際にできる指先の薄い膜の先。
これまで空間魔法はドロップ品を拾うことに使ってきたが、今回は拾うのではなく、逆に置きにいくときのようにイメージをすればいいということか。
(まずは試してみるか)
俺は立ち止まって振り返り、試し打ちをすべく右手を上げた。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。






