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町家暮らしとエルフさん ――リノベしたら庭にダンジョンができました――  作者: FUKUSUKE
第一部 出会い・攻略編 第45章 アニメ

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第443話

 発泡スチロールの容器の中、大量に入ったウニの殻を割って空間収納に仕舞うという作業を30分ほど掛けて済ませ、俺は厨房へと戻ってきた。

 田中君はせっせとサヴォイアルディやアマレッティを焼いていたらしく、出来上がった菓子が山積みになっていた。


「田中君、あと何回くらい焼かないといけない感じかな?」

「それぞれ、あと1回くらいやと思います」

「50分ってとこか」

「はい」


 サヴォイアルディ、アマレッティ共に焼き時間は20分ほど。但し、温度がサヴォイアルディは160℃、アマレッティは170℃なので別に焼かざるを得ず、残りを焼き上げるにも1時間くらいはかかってしまう。

 時間は既に20時になろうかという時間帯だ。普段の営業時間帯なら21時くらいから賄いを出すことになるので、そろそろ準備したい。


「裏田君は何をしているんだい?」

「今は他のホワイトソースの仕込みしてます」

「そっか。賄い、どうしよっか」

「このところ、オーナーに作ってもろてますよって、今日は僕がやりますわ。これもひと段落出来そうですし」

「いいのかい?」

「ええ、それよりも表の3人、そろそろ中に入れたらんと」

「あ、そうだったな。じゃあ、賄いは頼んだよ」

「オ・カピート」


 珍しくイタリア語で返事を返してきた裏田君に、少し苦い笑みを返しつつ、俺は店の外へと向かった。

 たまに返事やオーダーの通し方までイタリア語でやっている店がある。うちはスペイン料理も出すし、普通に日本語で良いと思うんだけどな。


 既に5月も終盤。結構、外気温は高い。


 残ったチラシが少なくなったのか、ミミルと岡田君、本宮君はひと塊になって配っていた。


「どうかしたか?」


 俺は3人の前へと移動して声を掛けた。


「あ、はい。何も問題はないです」

「そろそろ酔った人がいたはるんで、ミミルちゃんが絡まれへんようにしてたんです」

「そっか、ありがとな。そろそろ中に戻ってくれ。ミミルも頑張ったな」

「ん、ミミル、がんがった」

「ああ、頑張ったな」


 拳を握って頑張ったアピールしてくるミミルの頭に手を置くと、俺は店の扉を開いた


「ん、がんがった。がん、ばった」


 慣れない発音を懸命に直そうとするミミルだが、その様子を見て、「はうっ」と岡田君が声を漏らし、本宮君は「かわいい」と追いかけるように小さく呟いた。

 何故だか、俺も口元が緩んでいる気がする。


「かわいいは、ほめることば。ミミル、わかる」

「おう、そうだな」


 辞書的に言えば、「可愛い」というのは、幼いもの、小さいもの、愛嬌がある様子を情愛や愛着をもって表現する言葉だ。そのままだと子ども扱いしているように感じるかも知れなかったのだが、少なくとも子ども扱いしているという訳ではないと理解してくれたようならありがたい。


「チラシ配りをはじめたときに、男の人から『かわいいなあ』と言われたときは不機嫌な顔をしていたみたいです。でも、女性に囲まれて騒がれていると、だんだんと嬉しそうになってきました」


 女性の「かわいい」は好意としての表現だし、多人数で共感されると凄まじいエネルギーを持つ。ミミルの場合はその好意のエネルギーをまっすぐに受けることで、自分が褒められているという風に感じることになったのだろう。

 逆に男性が感じる「かわいい」は、女性とは違って()()()()()という意味合いが強い傾向があると思う。かく言う俺も、当初はミミルに感じる可愛さは()()という感覚が強かった。敏感にもミミルはそれを感じて不機嫌な顔になったんだと思う。


「そうか。かわいいと言われてミミルも嬉しいんだな」

「ん、ほめるはうれしい」


 だが、ここで俺が言うのはなんか違う気がする。それに俺がミミルに向かって可愛いとか言うと何故か殴られるんだよな。

 仮初(かりそ)めの関係とはいえ、俺は皆の前では父親を演じないといけないんだから、褒めたいんだけどなあ。

 ニコニコと笑顔をみせるミミルを見て、褒める代わりに撫でそうになった手を引っ込めた。


「あまいもの、たべる」

「あ、そういえばそんな話もしてたな」


 岡田君、本宮君とチラシを配るときに約束した「甘いものを食べられる」と話したことをミミルは覚えていたらしい。

 でも、既に裏田君が賄いを作ってくれているはずだ。


「もうすぐ夕食だぞ。先に食べたら夕食が食べられなくなるんじゃないのか?」

「ミミル、たべられる。だいじょうぶ」

「ほんまに?」


 俺の代わりのように岡田君がたずねた。ミミルが夕食前にケーキの2つ、3つくらい食べても食欲を落とさないことくらい、俺は理解しているのだが、裏田君を含めて皆は知らないからしようがない。


「ミミル、たべる、できる。ごはん、もたべる」

「そうだな、でも夕食のあとにしよう。皆と一緒に食べた方が美味しいだろう?」

「食べる、あと、ドルチェある。ミミル、損する」


 どうやら、スイーツのことをドルチェと言うことは完璧に覚えたらしい。


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。


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