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妖○荘の管理人になりました。  作者: えん@雑記
三章

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35/38

校則十一条

「晴嵐高校文化祭。一般開放は一日目二日目、最終三日目は生徒だけの文化祭です」

「何読んでるんだ?」

 俺は和服姿の久留米に声をかけられる、周りは和服姿の男ばっかりだ。

「ん、パンフレット。更衣室に入る前に持ってきた」

「ふーん。近藤は今日は午前だっけ?」

「そ、昼まで、明日は四時から」

 ちなみに男の着物は、長着と言うのか浴衣に似た衣装ですごい手抜きだ。

 久留米に言わせると、男が着る紋付袴などは数が足りなく簡便してほしいと。

 ちょうど遊び人の金さんみたいなスタイルになるので周りのクラスメイトは物真似をして着付けの先生に怒られてる。


 俺は久留米と別れ『和風喫茶葵(仮)』と書かれた看板を出した教室に入る。

「ういーっす」

 短い挨拶をする。

「あ。近藤おっはよー」

「おーっす」

「おはようございます」

 第一弾は俺とアヤメさんを含め十名と……。

「うわ……先生イメージ変わりますね」

 俺が入った扉と反対に、赤色が多い着物を着た加賀見坂先生が喋らないで微笑んでいる。

 何時ものただ縛っただけの髪とは違いうなじの近くに大きめのお団子を作っている、赤い口紅も着物と丁度合っていた。

「それでしゃべらなければモテますよ」

 にっこりと微笑み続ける加賀見坂先生、体を半回転させたと思ったら俺に草履ぞうりを飛ばしてくる。

 慌ててキャッチするも手が痛い。

「ちっキャッチしたか、近藤一言多いぞー。そしてソレ返してくれ」

 先生の言葉に周りのクラスメイトが笑いあう。


『まもなく文化祭が始まります、皆さんお客様に失礼の無いよう。そして事故の無いようにお願いします』

 スピーカーから流れる声と友に晴嵐高校文化祭が始まった。


 俺たち男子は主に裏方になるので走りまくった。

 教室内は火気厳禁なので保存が利かない物は、二階にある調理室で調理をし出来上がった物を運んで、お客に出す。

 今は水無月と使い終わった食器をカートで運んでいる所である。

「そこの二年! 廊下は走るなっ!」

「へーい」

 俺たちは見回りの先生から顔を隠すが着物姿なのでニ年なのがばればれだ。


「疲れたな」

「ああ」

 俺と水無月はカラになったカートをゆっくりと運んでいる。

 廊下では俺たちと同じ裏方の人間が所せましと動いているのが見える。

「おいあれ」

 水無月が俺の肩を小さく叩く。

 小さく指で窓の外を指している。

 窓の外にはいかにも不良ですって人種の人たちが四人ほど見える。

「変な問題起こさなければいいけどな、俺一応先生に報告しとくわ」

「そうだな」

 水無月の報告に俺は頷く。

「所でさ、あそこ居るのって近藤の親か……?」

 教室の入り口で俺たちに向かって大きく手を振っている母親が見える。

 隣にはマルタに八葉もいる。

「しゅうーちゃーん」

「ほら、しゅうちゃん行ってこいよ」

 水無月に突っつかれる。

 小走りに母親の所にいく。

「楽しんでる? もう喫茶は入った?」

「入ったわよ~、こういう空気は楽しいわねぇ。お父さんと出会ったのを思い出すわ」

 話が長くなりそうなので八葉に話を振る。

「まぁ低俗なお祭りにしては楽しい」

 見ると両手いっぱいのお土産を腕につけてる。

「何だ、その目は。これは貰ったんだ」

「八葉なぁ、行く先行く先で女の子から、お土産もらうねん」

 八葉のお土産をマルタが説明してくれる、マルタも楽しそうな顔をしている。

「高校の文化祭で小さい子供は人気あるからね。吹雪さんは?」

「あっちや」

 教室内を指さす。

 見ると、吹雪さんと加賀見坂先生が熱心に話している、心配になりマルタに尋ねる。

「何かあったのか?」

「美容について話してるだけや」

「あそ……」


「こらー! そこお客様に迷惑かけないサボらないー」

 後ろで女子の声が聞こえる。

「やっべ、それじゃ俺行くから。他にも教室あるしゆっくり回って、俺とアヤメさんはあと1時間もしたら自由行動になるから、それでよければ一緒に~」

 俺は大きく手を振って裏方に戻る。


 昼になり俺達午前の部は自由時間となる、自由といっても帰れるわけではないが。

「近藤くん~交代にきたよー」

 そう喋るのは着物姿の五月雨達。

「いやーアヤメさんのお母さんも、近藤君のお母さんも若いね」

「俺の所は三十になる前から年齢忘れたって言ってるからな」

「本当? 面白いお母さんだね」

「今日は接客か?」

「あたし? あたしはほら、今日は料理のほうに回るよ、ちょっと動きにくいけどね」

「女子は大変だなー、んじゃ、頼む」

 五月雨達との会話を終わり先生の所に報告しにいく。

「それじゃ先生、交代が来たんで代わりますー」

「ちょっとまて、近藤」

「あい?」

 加賀見坂先生に呼び止められる。

「さっき水無月から聞いたんだが、ガラの悪いのが来てるらしいな。見回りの鳥島先生に見かけたら質問を出来ればボディチェックと頼んだが、何かあったら騒げ。ああいうのは騒ぎに弱い」

「はぁ」

「毎年くるんだああいう馬鹿は……」

「そういえば、去年も居ましたね」

「去年は私が見回りだったからな、淑女しゅくじょな対応をしてお帰りになってもらった。ただ、今年の鳥島先生はな……」

 少し歯切れの悪い喋り方をする。

「力弱そうですもんね」

 深く頷いた後、俺を見て笑う。

「本人には内緒だぞ、すまんな引き止めて」

 出入り口をみると、すでに俺の母親や吹雪さんなどが待っていた。


「お待たせ! さて何処行く?」

「お母さん、しゅうちゃんに任せるわ」

「私も秋一君にまかせようっと」

 二人の母親に言われて困惑する。

「あ、そだ俺も腹減ったし校庭の屋台見に行っていいかな」

「せやなーウチも小腹が減ってきた」

「それじゃ秋一さん行きましょうか、ほら八葉。手を繋ぎましょう」

 俺達は校庭に移動する、校庭では主に三年生が屋台などを手がけている。

 所狭しと良い匂いが漂ってる。

「マルタ? どうした変な顔して」

「いや、焼けこげた臭いがするからなー何処からやろとおもって、まぁ多分気のせいや」

 あっちもこっちも鉄板からでる煙が凄い。

 俺達は三年の先輩達に冷やかされつつも、焼きそば、たこ焼き、お好み焼きなど軽食を楽しむ。

「それにしても八葉はお得だな……行く先行く先で本当に……」

 少し離れた所のあるベンチで休憩をする。

「だから言ったろくれるのは嬉しいがそんなに食べれない」

 八葉はさっきから屋台に行くたびにサービスを貰う。

「八葉はもてもてだね」

 そう喋る京子さんや俺の母親も何かと割引してもらってる、男女ともに美人に弱い学校だ。

「しゅうちゃん、あれ何かしら?」

 指差されたほうを見ると、校舎裏から数人の男が走ってくる、その後ろには鳥島先生が赤い顔をして追いかけてるようにも見える。

 

 その姿は大きくなっていき、男たちの手には缶ビールを持った袋も見える。

 もちろん高校の文化祭でアルコールなど売っているわけが無い。

 つまりあれは。

「不良かな……」

 俺は母親の質問に答えるが、目は不良を見たままだ。


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