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妖○荘の管理人になりました。  作者: えん@雑記
第二章

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裏規則十一条

「いやー食べた食べた」

 夕暮れから夜に掛ける空をバルコニーから見ながらお腹をさする。

「美味しかったですわねー」

「どや、最高だったろ」

 覚えてるだけで三回目のどやだ。

 俺の横に二人が並んでくる。

「改めて、マルタにアヤメさん。島に連れてってくれてありがとう」

 目をキョトンとしている。

「なんや突然」

「いや、ちゃんとお礼言ってなかった気がしたし数ヶ月前の俺ならこんな事全然考え付かなかったからさ、アヤメさんにも会わなかったら下手したら今頃俺、アマゾン川で泳いでる所だよ」

「そっか、なんにせよ有難うな。ウチも楽しい夏を過ごさせてもらってる」

「私もです」

「所で八葉は?」

「あっち」

 首で教えられたほうを見ると、椅子にすわって懸命に焼トウモロコシを食べている。

「リスか」

 俺の言葉で二人とも笑う。

「シューイチ君って高校二年やろ? 受験はするん」

 突然の事で驚くが素直な気持ちを述べる。

「突然な、そーですねー。特にやりたい事も無いので大学は行かないかもしれません。親のコネで親の会社もと思ったけど、俺の家の両親なんの仕事してるかよくわからないんだよね。」

「それニートまっしぐらの思考や」

 白い目で見られて反論が出来ない。

「そういうマルタだって……」

「そやな、此処まで深く関わってるんだし少しぐらい話してもいいか。ウチな妖怪専門の国際警察の一人なんよ」

「へ?」

 驚く俺とは対照的にアヤメさんは普通の顔だ。

「アヤメの父親もそうや。主な仕事は妖怪絡みの犯罪や事件、勿論命を落す事もあるし楽な仕事ではないで。ま、そうは言っても最近は平和なので事件も何もないけどな。シューイチ君も将来どうや? 別に大学など関係ないで」

「へえええええええ、何時も酒飲んでるだけの人じゃなかったんですね」

「前にもチラッと言ったとおもうんやけど」

 白い目で見てくる。

「冗談と思ってました」

 なんでやねん! と強力な突っ込みを返される。でも正直そんな道があるとは思ってなかった。

「アヤメはどーするん?」

「そうですね。看護士なども視野にいれてますし料理の道も目指して見たいですし」

「まぁこっちは、将来誰かのお嫁さんなれば問題ないわな」

 アヤメさんの話を話半分で打ち切りこっちを見てくる。期待に添えられるか心配になってくる。

「もう、私も結構悩んでいるんですよ!」

「さて、今日はもうそろそろお開きにして自由行動や。疲れてるはずやし、はよ寝るんやで、ウチは少し泳いでくるさかい」

「夜の海を?」

「そや、星空の光で気持ちいいんやで」

 空を見上げると遠くのほうで星空が綺麗に見える。

「うわー……あっちじゃ見れないほど綺麗な星空ですね」

「そやろ?」

「俺は部屋から星を見ることにするよ。アヤメさんは?」

「そうですね、では私は少し此処で星空を見てから部屋にいきますね」

 俺は二人と別れ、八葉にも声をかける。

「八葉~先にねるぞー」

「ん? ああ、シュウ。おやすみー」

 部屋に入って布団に倒れこむ。先ほど聞いた将来の話が頭を過ぎる。

「妖怪専門の組織か、俺はどうしたらいいのかなー……」

 アヤメさんの父、源太郎さんの姿を思い浮かべる。筋肉もりもりの山男だった。

 俺の腕を見てみると、ある程度の筋肉はあるがふよふよだ。

 無理じゃね?

 こんな俺でも就職できるならそのほうがいいのかなー、このまま卒業しても運が良くてフリーター、最悪無職だ。

 あのアパートの管理人だって将来的には無理だろう。

 ベッドの上でゴロゴロ回る。

 考え事をしながらまぶたが重くなる、将来胸をはってアヤメさんの彼女だ! と言える様にはなりたいな…………


 ドアがノックされる。その音で目が覚めた、部屋には既に朝の光が差し込んでいる。

「いまあけーまーす」

 ドアをあけると八葉が立っていた。

「シュウ、もう朝だぞ。ん? もう着替えて……シュウ、昨晩着替えなかったのか?」

「ん?ああ……寝てしまった」

 Tシャツに手を入れて腹をかく。

「汚い奴だな……着替えて顔洗ってさっさと来い」

 そうそうにドアを閉められてしまった。

 確かに汚いな、自分の体を見渡す。


「おはよーっす」

 俺は居間にいる三人に声をかける。

 アヤメさんはパンを切り、マルタはコーヒーを飲んで、八葉はサラダを取り分けている。

「おはよーさん、お。さっぱりした顔してるんやねー」

「昨日あのまま寝てしまって、顔ついでにシャワーを浴びてきた所です」

「おはよう御座います。秋一さん、パンは何枚ほど食べますか?」

「アヤメさんおはようです。取りあえず二枚ほどお願いします」

「はい、直ぐお持ちしますので座っていてくださいな」

 俺は言われるままにソファーに座る。

「さて、シューイチ君。本日の予定なんやけど、今日は森林のほうにいかへん?」

「俺はなんでもいいですけど、何かあるのかな?」

「ちょっとした洞窟があるんや、その近くでは露天風呂も作ってあってな」

 俺は先日の混浴事件を思い出す。

「大丈夫や、今回は全員水着着用やで」

 俺の心を読んだのか、まだ声に出してないのに返事がくる。

「いいですね。明日には帰らないといけないし、行って見たいです」

「よろしい、素直な返事はおねーさんうれしいわ」

 急におねーさんぶる。どちらかと言えば浪花のオカン……

「グッフゥ」

 声に出してないはずなのに鋭い突っ込みがみぞおちに入る。

「はい、お待たせしました。パンとコーヒーです、あれ? どうしたのです」

「どうしたんやろな~」

 突っ込みを入れたマルタは鼻歌なぞ歌ってる。

「あー……なんでもないです、パンとコーヒーありがとう」

「どういたしまして」

 アヤメさんの顔で心が癒される。

「所でマルタ、何か必要な物とかあるの?」

「んー特にない、前に来た時に調べたからなー徒歩1時間ほどや。本当は昨日行ってもよかったんやんけど、夜は道が危ないさかい。んじゃシューイチ君の意見もそろったし、そやなー昼過ぎたら出発しよか? それまでは各自泳いだり自由って事で」

 合図のように手を二回叩くマルタ。

「よーし、シュウ。今日は一緒に泳ごう」

「昨日も一緒だっただろうか、まぁお手柔らかに」

「アヤメさんとマルタは?」

「どうしましょうか、ではご一緒させて貰います」

「そやなーウチも昨日は一人で泳いだだけさかい、混ざろうかな」

「えーマルタも一緒に泳ぐのー?」

 八葉が不満声をだす。

「なんや、不満かいな」

「だって、マルタ。直ぐ僕の水着取るんだもん」

「あっはっは、あったなーそんな事、今日はしないから安心おし」


 俺達は午前中をめいっぱい楽しんだ、午後に森林にいくので三時間ほど遊んでからの休憩だ。


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