??王になります3
三人の文官が夜を通して話し合った結果、国は潤いを取り戻した。
「お主は凄いな、色々なアイディアを持っておる」
キララと差し向かいでチェスを指している。この世界にはトランプもチェスも存在する。これまでの召喚された勇者達が広めたのだろう。
「公共事業のことを言ってるのか?」
「そうじゃ、街道を整備して馬車を通り易くした。水源の確保や畑の効率化は、まるでセントセルス神興国の街並みを思い出したぞ」
「キララはセントセルス神興国に行ったことがあるのか?」
「数度商売でな。あそこは他の国と世界が違う。魔法を使った汽車と呼ばれる乗り物や、気球という空飛ぶ乗り物まで存在する」
セントセルス神興国は宗教国家であるため、全ては司祭や僧侶などの神に使える者達がルールを作り出す。これまでの召喚者たちを多く囲っていたのこともあり、発展が他の国よりも進んでいるのだろう。
「どうしてそんなに便利な物が広まってないんだ?」
「それは神の乗り物だと言って、セントセルス神興国が広めなかったからじゃな」
「なるほどな。それを見て作ったやつとかはいなかったのか?」
「いるとも。だが、見た目を似せることはできても、動かすことができた者はいないな」
「そうなのか?」
「ああ、だから言ったであろう?貴様の所業はそれみたいだと」
「多分同じ世界から来てるからなんだろうな」
「異世界というやつか?」
「そうだ」
キララは最初から見抜いていたので、異世界人を隠す必要もない。
「うむ、技術とは凄いものだな。何よりたった半年で、この国は変わった。貧しかった家族も、もうほとんどいなくなってきておる」
「貧しさは人それぞれだがな。何とか毎日二度は食事を摂れるぐらいにはなってきただろ?」
「そうじゃな」
キララとエビス、さらにバンガロウ全体の商人ギルド、冒険者ギルド、傭兵ギルドの協力の下、いくつかの公共事業や特産物の作成に着手したアクは悉くを成功させていた。元の世界の知識を活かしているだけなのでアクが考えたわけではないが、国を豊かにすることで飢えを無くすのが大前提だ。
バンガロウがアク達シルバーウルフに支配されて半年が過ぎようとしていた。
忙しくしていたアクの周りには何人かの護衛や秘書を置くようになった。エリスを筆頭秘書として、三人の秘書と七人の護衛に守られている。
七人の護衛は、いずれもエビスが隠していた奴隷たちで、いずれも他の種族の娘達であり、力も千差万別で面白い。
最初こそ警戒が強い者や怯えてこちらの話を聞かなかった者もいたが、なんとか普通に会話できるまでなり、はれてアクの護衛を務めるようになった。但しバンガロウ王国内では、表向きは普通の人間として扱われている。
そのため幼い彼女達を連れて歩くアクは、ロリコンハーレムとか言われている。アク個人としては断じて誰にも手は出していない。エリスがいるからな。
「連邦は、この三か月ずっとサントン王と臣下アクを召還して、会議を開こうと申し出をしてきているのであろう?どうするのじゃ?」
最初こそ慈善事業はしないと言っていたキララも、今ではアクの側近 (ロリコンハーレム要員)と言われている。
「最初は見捨てた癖にな。あいつらこっちが潤ってくるとすり寄ってくるように群がってきやがった」
「それは当たり前であろう。おこぼれに与りたいと思うのが普通じゃ」
「そういうもんか?やっとこっちも落ち着いてきたばかりで、他の奴の面倒とかみれねぇよ」
「そうか?むしろそういうやつに力を見せつければいいのではないか?」
「どういうことだ?」
「連邦を制圧してはどうじゃ?」
「連邦を制圧?」
「そうじゃ連邦と言うから同列として扱ってくる。それならいっそ」
キララは親指で首を切る動作をする。
「お主は王族が嫌いなのだろう?」
「別に嫌いじゃねぇよ。ただ一人が肥えて太ってるぐらいなら分け与えればいいと思うだけだ」
「この世界では甘い考えじゃな。じゃが嫌いではない」
キララは楽しそうに笑っている。
「まぁサントンと相談だな」
「そうじゃな。あの王もただ強いだけで学の無い男だと思ったらなんのなんの、民衆に慕われるカリスマ性はもっておるようじゃし、間違った考えをせず正しいく物事を見極めることのできる者じゃ」
「俺もそこまでは思わなかったが、サントンを王にしてよかったよ。それに仲間たちも上手くやってくれている」
現在、万人長にセントハルク、千人長にドイル、バルドベルド、ハッサン、百人長にダン、グルーなどその他今まで百人長をしていた者ハチ名、さらに暗部として、グラウスを総長とした新しい部隊も作った。
ゲオルグ、ダント、ボルス、バルツァー、ランドは引退を表明したので、それを受け入れて相談役という立場についてもらっている。後任の兵士育成に役立ってもらっている。
内務に関してはキララ、エビスを筆頭に商人を中心にして外部から集め、元々内務を担当していた者を選別して召し抱え直した。
現在内務大臣兼外務大臣をアク一人でこなしている。といっても外務に関してはキララの方が顔が利くので、使者として随分と動いてもらっている。
「面白い男も見つけたしな」
アクの中で一番の収穫と言えたのは元内務担当をしていたハックと言う男だった。ハックは計算ができ、文字が綺麗だった。綺麗な文字は他国に対して礼儀を尽くすことができ、何をするにも必要なのでアクはハックを優遇した。
ハックも自分の能力がそこまで評価されると思っていなかったらしく驚いていたが、アクの要望に応えようとしっかりと働いてくれている。
「これで基盤はできた」
アクの中で自分が居なくなった後のことを考えていた。自分は所詮異世界人なのだ。知恵は貸す、力も貸す、でも最終的にはこの世界で生まれた者が決めなければならないというのがアクの持論なのだ。
アクの中では内務大臣にハックを、外務大臣にキララを付けようと思っている。軍務、内務、外交のこれらが落ち着き、経済が安定すればアクの仕事はなくなったと言ってもいい。確かに雑務はいくらでもあるが、それはアクが居なくてもできることなのだ。自分が関わっていく仕事ではない。
自分を受け入れてくれた盗賊達に対しての義理は果たせただろうと、アクは考え始めていた。
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