商人になります終
文章は本当に成長しないです・・・すみません。
クック村を占拠して一日が過ぎ、混乱は意外とすぐに収まった。村の者も新たな支配者に逆らうことはなく、支配されることに慣れ過ぎていた。
クック村以外にもカシム村と、ソルト村を占拠することにも成功していた。
一週間という時間の中で、四人が潜入している間、盗賊団が黙って待っていたわけではない。ゲオルグとダントは盗賊団を二つに分け、それぞれカシム村とソルト村を占拠していた。
それはアクが考えた作戦でもあった。カシム村とソルト村の人口は100人にも満たない小さな村で、商店もギルドもないので人も集まらない、ならばどうして手に入れたか?そこには理由がある。
カシム村とソルト村には、表向きは支配などされてないこと装ってもらい、税を納めさせないようにする。その税をこちらがもらい、盗賊達を養うための食料庫として使うのだ。
「アクよ。クック村を占拠したことが明日には確実に王都にも知れ渡る。これからどうするつもりだ」
幹部会になりつつある、いつもの顔ぶれが揃う。丸テーブルを六人で座る。中央にゲオルグ、右からダント、グラウス、アク、ハッサン、サントスの順に座っている。
「お頭とダントさん達が、カシム村とソルト村を奪取してくれたことでこちらにも食料の余裕ができました。さらにサントンの言った通りギルドマスターが寝返ってくれたのは心強い」
「だから言っただろ。オッサンは良い奴だからな」
「殺そうとしたくせによく言うぜ」
ハッサンがサントンを見て呆れた声を出す。
「オッサンは殺しても死なねぇよ」
「そんな奴いるか」
二人のバカなやり取りを、アクは微笑ましく見つめる。
「二人共そのへんで、それよりもいつまでも盗賊団ではカッコが悪いと思いませんか?」
「盗賊団の何が悪い?俺たちは今まで盗賊団としてやってきた。今更変えられるか?」
「いつまでも盗賊団では王国を倒したときにカッコが付かないです。革命軍や解放軍の方がいいでしょ」
「なんだよそれ?俺達は自分達の住める場所があればいいんだぜ」
サントンは言葉にアクはそこから説明が必要なのかと頭を掻く。
「サントン、俺達は自分達が住める場所を確保するために王国と戦わなければいけないんだ。だからその時、盗賊団では王国に勝ったとしても他の連合群の奴らが認めないだろう?」
「俺にはそんな先のことまでわかんねぇよ」
「お頭、あんたに聞いたよな。王国と戦う覚悟はあるかと?」
「聞いたな」
「だったらわかるだろう。クック村みたいな小さな村じゃない一国を相手にするんだ。今のままではダメだ」
「そうだな。アク、お前のいう事が正しい」
ゲオルグは何度も頭を縦に振る。
「理解してもらえて良かった」
「但し譲れねぇものがある。シルバーウルフと言う名前だ。これには盗賊団を守ってきた意味のある名前だ」
「俺もシルバーウルフを変える気はないよ。盗賊団を解放軍に改名したいと思う。異論のあるものはいるか?」
アクは真っ先にダントを見た。この中で唯一アクの意見に反対しそうだからだ。
「問題ないだろう」
ダントが頷くと他に異論はなかった。
「もう一つ。決めてほしいことがある」
「今度はなんだ?」
まだあるのかとゲオルグはゲンナリした顔になる。
「次期お頭をこの場で決めてほしい」
「はっ?」
この提案にはゲオルグを含め、全員が唖然とした。
「何も不思議なことはないでしょう?戦闘が激化して、もしお頭に何かあったとき、指揮を任せる奴がいる」
「まぁ、そうだな。お前はいったいどこまで考えているんだ?」
ゲオルグが不気味な奴を見るようにアクを見つめる。
「どこまでって、別に王国を倒すとこまでしか考えてませんよ」
「王国を倒せるのか?」
「まだ情報が無さ過ぎてなんとも言えないのが現状です」
「わかった。次期お頭を決めよう」
「ゲオルグ、いいのか?そんな全てをアクの言う通りにして?」
ダントが慌ててゲオルグを見るが、ゲオルグの顔にはむしろ清々しさすら窺えた。
「いいも悪いもあるかよ。言っていることに間違いねぇならやるだけよ」
「ありがとうございます」
「そんかわり、ぜってい勝てよ。アク」
ゲオルグが威圧の籠った目でアクを睨む。アクも畏怖されないように見つめ返す。
「もちろんです」
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バンガロウ王国は歴史があまり長くない。精々200年ぐらいがいいとこだろう。建国された時は、獣人族との戦争の真っ最中だった。
連合が結成され、島をまとめていたバンガロウという部族がそのまま連合に統合されるときに王位についた。獣人との戦争が終結し、昔のように平等になると思っていた民衆は、王国の武力により支配されるようになっていった。
「何、クック村で反乱だと?」
褐色の若々しい肌をした新王は反乱と聞いて血気盛んに喜んでいた。
「まだ王国に逆らうという気概のあるものがいたか?それで規模はどの程度だ?」
「反乱などと烏滸がましいものです。二十人ほどの盗賊が、クック村を占拠したと聞いております」
「なんだ?たった二十か、つまらんな。シャリスに百の騎馬を与え、殲滅させよ」
シャリスはこの国の百人長を務めるもので、軍にはそれぞれの数に合わせて隊長が決められている。
下から十人長、百人長、千人長、万人長。
万人はバンガロウ王国はでは集まらないため、万人長が、バンガロウ王国での総大将という肩書になる。他の軍でいうところの将軍と呼ばれているものだ。実際に王国が保有している軍人は千人ほどしかいない。
徴収すれば四千まで集めることができるが、バンガロウ王国は一万ほどしか人が住んでいないため、動ける者の限界とも言える。
そのため百人というのも、数の上では多い部類に入り、その中でもシャリスは百人長の中で頭角を現しつつある王の側近の一人だ。
「たったの二十に百もですか?」
「お前はバカか、たった二十でクック村を出際よく占拠した者達だ。何かしらの準備もしていよう。百もいれば大丈夫だろうが、油断もしてはならん」
若き王、シシンガー・ルビストス・バンガロウは、こと戦闘に関して油断をしない慎重な男だった。
「強者は弱者を狩るときも全力を尽くすものだ」
王の命により、軍が出発したのはそれから二日後の事だった。
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