その後の勇者達 Ⅱ
後日談二話目です。
その他の勇者達はあまり人気がないですが……(;_:)
白雪 雫、金剛 護の両名は戦後はカブラギ皇国に帰り、静かな暮らしへと戻って行った。雫の体に宿った新しい命は産声を上げようとしていた。
「雫様。力んでください」
雫の主治医としてリリーセリアが分娩を務めてくれている。雫の病である魔力欠乏症は、リリーセリアを以てしても治すことは叶わなかった。
赤ん坊を産めば大量の魔力が赤ん坊に流れ、生命を魔力に換えている雫としては命の危険しかなかった。そのためリリーセリアは赤ん坊を殺すようにと金剛に告げたこともあった。
しかし、雫の意思を尊重するといった金剛の言葉を聞いて、少しでも雫が長く生きられるようにリリーセリアは研究を重ねた。
リリーセリアの研究が功を奏し、雫が赤ん坊を生んで死ぬことなかった。 延命治療になるが、雫の命を伸ばすことに成功したのだ。
生まれてきた子供の名前は金剛 絆と付けられた。生まれてきた男の子を抱くことができた雫は、嗚咽を漏らして涙した。しかし、彼女が絆といられる時間は長くはなかった。
「ごめんね。育ててあげられなくて、あなたのお母さんでいられなくて」
絆を抱くことはできたが、雫の命は絆が一歳を迎える前に費えようとしていた。リリーセリアの研究でも雫の延命ができたのは一年が限界だったのだ。最期の時を迎えようとしている雫のベッドの前には護と絆だけがいた。
「護、ありがとう」
雫は幸せな顔だったという。自身の死を受け入れ、護に大切な命を残せたことが彼女にとって幸福だったのだろうか……
余談ではあるが……
カブラギ皇国皇王 カブラギ アヤメは雫が死を迎える最後の日までアヤメに会いにきていたという。カブラギ史上最高の王と呼ばれる彼女は、友人を愛し、国を愛し、世界を愛した。
鎖国していた他国との交流を再開し、新しい物を多く取り入れていった。彼女が涙を見せたのは、友人の死が最後だったと言われている。彼女は絶貴と伴侶となり、多くの子を成した。その一人に雫という名前を付けて可愛がったとされている。
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金剛 護は、白雪 雫の死後。
カブラギ皇国を離れて、アスガルト共和国渡ったと言われている。元々アヤメ姫との不仲説が上がっていたため、彼がカブラギ皇国を離れたのは自然な流れだと言えるだろう。
だが、雫の墓はカブラギ皇国にあるため、年に数回、彼はカブラギ皇国で見ることがあったとされている。
金剛はアスガルト共和国に戻ると、アリスの下を訪れた。アリスはA級冒険者時代に貯めたお金で孤児院を開いていた。
金剛はそこに絆を預け、S級冒険者の仕事をしながらアリスの孤児院を支援した。アイスはアスガルト人と結婚をして子供を成したが、絆のことを我が子のように可愛がった。そこに護への想いが有ったことは彼女だけの秘密だ。
また暗黒大陸を花でいっぱいにしたいという神代 火鉢の願いに応じて、土の魔法を存分に発揮したともされている。
赤土と呼ばれ、砂漠化が進んでいるアスガルト共和国を救うことはできないが、暗黒大陸は再生可能な土だと判断され、金剛は地質調査を行いながら再生を行なっていった。
暗黒大陸が再生されるにつれ、物資が多く作られるようになり、飢えていた子供達が美味しいご飯を食べられるようになったのだ。
またS級冒険者としても多くの活躍を彼は残した。ある時は津波に晒されそうになった村を土の魔法で堤防を作って護りきったり、噴火により被害が出れば、人々が逃げるまでの時間を稼いだりと、天災あるところ金剛ありと言われるほど有名になっていく。
金剛は雫が眠る土地を護っていただけかもしれないが、彼に助けれた者達は彼こそが英雄だと称える声は後を絶たなかったという。
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