邪神になります 終
遅くなってしまい本当にすいません。
小説が全て消えたり、パソコンのせいで全部消えたり、自分の押し間違えで全部消えたりと何度も何度もやる気を失いかけましたが、何とかここまで辿りつきました。
光り輝く道を歩き続けている。
足は勝手にどこかに向かっているようで、身を任せることしかできない。
コウガに胸を貫かれた感触はあるが、胸に穴はない。
「よくぞ来ました。阿久井 重」
光り輝く道を抜けた先、真っ白な空間に巨大なエリスがいた。
「エリス!」
「私は創世の神です。あなたにはあなたの愛しい人の姿で見えていることでしょう」
創世の神をもう一度見る。
やはり巨大なエリスが、白い空間に浮いているように存在していた。
「だからエリスの姿をしているのか」
アクが創世の神の言葉に納得して、全体を見ていた視線を創世の神に合わせる。
「それよりもどうして俺はここに連れて来られたんだ?神を倒した罰でも受けるのか」
アクは足が勝手に動いている間、頭で様々なことを考えていた。
自分は死んで天国や地獄に行くのだろうか、それとも神を殺した罪によって魂ごと消されてしまうのだろうか。
考えることしかできなかったともいえるが、自身が思ったことを創世の神に質問してみた。
「あなたを罰することなど何もありませんよ。あなたは資格を得たのです」
「資格?」
「ええ。あなたは観察者を殺しました」
アクは観察者という言葉で、二人の人物の顔が浮かんでくる。
一人はアクと共に過ごしていたアモン、もう一人は再生の神になっていた天辰の顔が浮かんできた。
「その二人に間違いありません」
アクの心を読んだのか、創世の神が答えをくれる。
「その二人をあなたは同時に倒しました。観察者を殺すためには条件がいるのですが。あなたは条件を成し遂げた」
創世の神がいう条件について、アクなりに思い当たることがある。
「彼らは二人で一人の神でした。ですが、それぞれ自分達の仕事に夢中になるあまり、仲違いをしてしまい観察者として逸脱する行為にまで発展していました。罰を与えなければならないと思っていたとき、あなたが彼等を罰してくれました。彼らは彼らの仕事を全うしてくれさえすればよかったのに」
創世の神はエリスの顔で残念そうな顔をする。
破壊の神アモンを倒す条件も再生の神を倒す条件もアクには思い当たることがあった。
破壊の神アモンだけで言うならば、アモンは破壊の神として欠落してしまったのだ。
アクと過ごすことで、優しくなりすぎた。
破壊の神であるアモンならば世界を滅ぼすことを常に考えていなければならない。
だがアモンはアクと暮らす内に、人と暮らす楽しさ、人を思いやる優しさ、人といる幸福を知ってしまった。
心が優しくなった破壊の神など、根底を失っている。
「そう、彼らはその存在意義を自ら捨て去ったのです」
破壊の神が人を救い、再生の神が人を壊す。
二人の立場はいつしか壊れていいよったのだろう。
「その二人を倒したあなたには資格があります。次の観察者に成っていただけますね」
創世の神の言葉にアクは腕を組んで考える。
アクが何を考えているのか、創世の神にはお見通しだが、アクはかまわず思考を続けた。
いったいどれだけの時間が経った事か、アクが結論を出すまで創世の神はずっと待ち続けてくれた。
「成らせてもらう」
「よかったです。あなたに断られたら、もう一人の観察者殺しに頼まなければならなかったので不安でした」
「もう一人の観察者殺し、光の勇者か」
アクの質問に創世の神は答えなかった。
「ではあなたには、破壊の神に「それはちょっと待ってもらえるか」
「どういうことです?」
「俺はただ役目をこなす神になんて成りたくない」
「ではどんな神になろうというのですか」
「俺は、自由と秩序を司る神になる。良い神や悪い神でいうなら、悪い神になるのかもしれないが、神が介入する世界ではなく、人が考える世界を創りたいんだ」
「相反する言葉ですね。自由を求める者は秩序を護れず、秩序を求める者は自由に振る舞えない」
「そうじゃない。秩序があるから自由に感じられる。秩序が無い無秩序な世界では人は却って自由にできないものだ」
アクの言葉に今度は創世の神が考える番だった。
だが、創世の神はアクの言葉を反芻した後、笑顔になった。
「わかりました。あなたの申し出受け入れましょう。ではあなたは 自由と秩序の邪神 悪 です」
創世の神に命名されると同時に景色が歪む。
「次にあなたに会うことがあるとすればあなたを倒す者が現われたときでしょうね。あなたがどんな世界を創るのか楽しみにしていますよ」
創世の神の最後の言葉を聞いたとき、創世の神の傍らにアモンの姿が見えた。
アモンは笑っていたので、アクは少し安心することができた。
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次に目を覚ましたとき、見慣れた天井が広がっていた。
アクが城に泊まるときに使っているバンガロウ王国の天井が広がっている。
「マスター!」
アクが目を覚ますと傍らに寄り添っていたヨナが抱き着いてきた。
ヨナの頭を撫でながら、創世の神と会っていた記憶が頭の中に流れ込んでくる。
体を確認すれば、今までと何もかわらない。
ただアモンの存在は感じられなくなっていた。
その代わり、言いしれぬ力を自身の中に感じられた。
「おはよう」
泣きじゃくり喜んでくれるヨナの頭を撫でていると、ヨナの叫びを聞きつけたのか、扉が開かれエリスやルーが入ってくる。
「あなた!」
「ご主人様!」
エリスが口を抑え、ルーが嬉しそうに尻尾を振っている。
ずっと隠していたシッポや耳は隠さなくてもよくなったんだなと、アクが思っているとルーが胸に飛び込んでくる。
ヨナも退こうとしないので揉みくちゃにされながら、アクはそれでも帰ってきたと実感が持てた。
二人を優しく横に避け、エリスに触れるためアクは立ちあがる。
「エリス」
アクが名前を呼ぶと涙でグチャグチャになった顔を見られたくないとエリスが顔を背ける。
「ただいま」
アクはそれに構うことなく、背後からエリスを抱きしめる。
ずっと待ち続けてくれていた。
「おかえりなさい」
嗚咽を漏らしながら、エリスは何とか言葉を絞り出す。
未来永劫、何があろうとこの一時を忘れないでいようと思った。
エリスがいて、ルーがいて、ヨナがいることを・・・・
ご愛読ありがとうございました。
外伝やその後的なもの書けたら書きたいと思いますが、本編はこれにて完結です。
本当にありがとうございました。




