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邪神になりました19

三日ほど休暇を頂きましたので、今日は二話目投稿です。


どうぞお間違えなくお願いします<m(__)m>

 夥しい数のモンスターに囲まれている。

しかも上からは気持ち悪い者に見られている。


「さっきは危なかったね。本当に殺されちゃうよ。ねぇねぇ早く全部殺しちゃおうよ」


 耳元で囁く声は怯えるような、おどけたような声でアクに力を使うことを要求してくる。


 抱き着いているモコモコのモンスターを弾き飛ばすことは簡単にできるが、できるだけ傷付けたくない、どうしたものかと考えていると、拘束していた4つの魔力もモコモコモンスターも自分から離れていく。

 モコモコモンスターは離れなくてもよかったが、まぁこれで敵意を向けている白いのとデカい奴を倒すことができる。


 しかし、白い奴の前にデカい奴が立ち、その前に新しいのがやってきた。

新しいのはなんだが暖かい光を出している。

 

「あっ、これはマズイかな?」


 耳元で囁いていた奴がなんだが、嫌な相手が来たと言っている。


 そんなに恐ろしい奴なのだろう。

それにしては暖かくて、気になってしまう。

 暖かい奴は色々な奴に指示を出すと炎を上げていたモンスターの乗り物が消火され、夥しい数のモンスターが息を吹き返した。

 やっぱり敵なんだろうか、でも暖かいから倒したくない。

モンスターは持っていた剣を鞘に納めて、片手を伸ばしてきた。

 なんだろう友好を持ってくれるのかな、さっきの白いのとはなんだか違うのかな。


「ダメだよ。その手を取ったら殺されちゃうよ」


 耳元で囁いている奴が本気で怒っている。


 こいつも僕を心配してくれているのかな、なら手を取るのはやめた方がいいのかな。

でも目の前の暖かい奴を見ていると懐かしいような気がして、手を取りたくなる。


「あ~あ、上の奴と戦うまでは出て行かないでおこうと思ったけど、これはダメだね」


 先程から耳元で囁いていた奴の声が、体の中から聞こえてくる。


「今からは僕の体だよ」


 体から聞こえていた声は今度は正面から聞こえてきている。

自分自身が体からはじき出されたことが分かった。


 そして目の前にいる体は、暖かいモンスターの手を取らず胸を抉った。


「君の邪魔に成る者は僕が排除するね」


 まるで何もなかったように体の感覚が戻り、耳元で囁かれる。


ーーーーーーーーーー


「王~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」


 セントハルクの絶叫が木霊する。


 サントンはアクが握る自分の心臓を見た後、もう一度アクを見る。


「悪いな、お前を救ってやれなかった」


 サントンは崩れ去るように落下して行った。

アクは持っていた心臓をサントンが落ちて行った所に落とし天を見る。

ルーだけが、アクの微妙な変化に気付いた。

アクの瞳が一瞬緩んだのだ。

 涙は流れていない、だけどアクは泣こうとしたのではないだろうか。


 サントンを抱きとめたセントハルクは落ちてくるサントンの心臓を壊れないように掴み、物凄い勢いでリリーセリア・ミシェル・ルールイスの下にサントンを連れて行く。


「酷い」


「必ず助けてください。世界の王となられるお方です」


 セントハルクの鬼気迫る表情と、サントンの状態を見てリリーセリアは言葉に詰まった。

そこに絶貴がやってきた。


「できる限りのことをしよう」


「頼みます」


 セントハルクは心臓とサントンを絶貴に預け、背中にしまっていた剛槍を抜いてアクに急接近する。

セントハルクとアクは戦術勝負で一度勝負したことがある。

 その時はアクが圧勝した。

セントセルス神興国との戦いでもアクの策によって、敵を食い止めることができた。

 だが一度もセントハルクはアクに負けたと思ったことはない。


「王に手を出したこと後悔してもらうぞ」


 アクの前までやってきたセントハルクを、止められる者はいなかった。

その鬼気迫る表情もさることながら、放たれる覇気はサキュウをも凌駕しているのだ。


「我も手を貸そう」


 青い巨大な竜がセントハルクを自身の背中に乗せる。


「手綱を取るがいい」


 白扇がアクの蛮行を見て、覚悟を決めたのだ。

セントハルクはここにきてドラゴンマスターへとクラスチェンジしたのだ。


「これならば力も入りやすい」


 白扇の上は地上に立っているときと変わらない安定感があった。


「足は任せよ。お主はマスターを倒すことに専念されよ」


 セントハルクと白扇の二人がアクへと迫る。

セントハルクの剛槍がアクに突きを放つ。

アクが腕を上げて止めようとするが、剛槍はアクの腕をすり抜けるようにうねり、アクの喉を突く。

 戦いが始まって初めてアクへの攻撃が叶った瞬間であった。

セントハルクは勢いに乗り、数多の槍を繰り出し続ける。

そこに蒼い光が宿り魔法の力が付加される。

 セントハルクの精霊が力を貸しているのだ。

さらに白扇が飛行術と水の魔法でアクが攻撃を仕掛けるのを阻止する。

セントハルクと白扇の連携は、今回が初めてだと思えないほど完璧なものだった。


「これほどまでか」


 それを見ているサキュウも驚きを隠せずにいた。

正直セントハルクとサントンの戦闘能力が高いことは知っていたが、自分に近くドラゴンマスターになったセントハルクは空中戦においてはサキュウを超えている可能性すらあった。


「今の内に精霊に最大の攻撃を行なえるようにしておくんだ」


 セントハルクが孤軍奮闘してくれているのはありがたい。

だが、アクにダメージらしいダメージを与えられていないとサキュウは判断している。

 ならばそれを行なえる者は力を溜める時間を稼がせてもらったと思えばいい。

 

 5人の勇者プラス、テリーを入れた六人は精霊を体に宿し力を溜める。

それぞれの力を合わせればアクに届くはず・・・・


ーーーーーーーーーー


 少しづつ視界が開けて来ていた。

先程からぼんやりとモンスターと思っていた者達がどんなモンスターなのか見えてきた。


「さっきの奴のお蔭かな。君の力がもう一段階解放されたね」


 耳元で囁く奴が嬉しそうな声をあげる。


 もう一度辺りを見れば、先ほどのモコモコのモンスターは獣人だった。

犬耳をした可愛らしいモンスター。

 もう一人は魔人かな?紅い目をしている。


 それに白い奴は白い鎧を着た。鎧モンスター。

他のも赤や緑などの鎧を着ている。

 モンスターに変わりはないがなんだが全員人の形に近い。


 そう思っているとドラゴンの背に乗った金色の鎧モンスターが槍を振り回して襲い掛かってきた。

槍を受け止めようとしても、槍が手を避けていく。

 魔法を放とうとしてもドラゴンの方が、攻撃してきて集中できない。

なんだこの二匹は、まるで一匹のモンスターじゃないか。


「う~ん死にはしないけど、うっとうしいね。早く何とかしてよ」


 耳元で囁く奴が鬱陶しそうにしている。


 鬱陶しいならさっきみたいに自分でどうにかすればいいのに。

そんなことを考えながらドラゴンと金色のモンスターを観察する。

 鎧モンスターの動きは速い、速い上に変化のバリエーションが多く、読むことができない。

ならば足場になっているドラゴンはどうだろうか、ドラゴンは観察していると、どこか悲しそうにそして覚悟を決めた目でこちらを見てくる。

 

 囮になろうとしているのかな。

確かに足場になっているドラゴンの方が狙い易い。

 ならばこれは誘い、なのだろうか、あれ?さっきよりも頭がスムーズに働いて考えることが楽しくなってきている。

 もしかしたらこの二人の心臓を奪えばもっと視界がはっきりして頭が働くのかな?


 少し動いてみよう・・・・ 

いつも読んで頂きありがとうございます。



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