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閑話 その他の勇者達40

 砂丘サキュウ 修二シュウジはその時からこの地に留まり、魔王ベルの種を持った魔人が生まれる度に討伐してきた。

 そして魔王を封印することで得た永遠の命は魔王の管理者としての役目を担っている。


「まぁここまでが昔話だな」


 砂丘は聞きたいと言われたから話したが、自身の過去を語ると言うのは気恥ずかしいものだと思った。

 話を終えて、改めて聞いていた4人の顔を見る。

神代カミシロ 火鉢ヒバチは俯き、アンジェリカはハンカチで目を覆い、エルフェルトは砂丘を見ないように後ろを向き、安城 風香は砂丘を見ながら号泣していた。


「おいおい。どうしたんだよ。お前ら、お前らが昔話を聞きたいって言ったから話したんだぞ」


 砂丘は4人の態度に困った顔をする。

突然風香が立ち上がり、砂丘に抱き着いてきた。


「どうしたんだよ」


 砂丘は久しぶりに戦い以外で人と触れ合うので、ドキドキしながら風香の頭を撫でてやる。


「修二さん。あなたはなんて不憫な人なんですか」


「不憫。おいおい、俺は不憫じゃないぞ」


「いいえ。不憫です」


 風香に続いてアンジェリカも涙で濡れた頬をハンカチで隠しつつ、砂丘に抱き着いた。


「アンさんまでどうしたんだい。俺は今の生活も満更じゃないと思ってるんだぞ」


「では不憫とは申しません。ですが、世界の為にありがとうございます。私はできるならば一生お仕えしたいと思います」


 アンジェリカの一生仕える宣言の後ろでは、エルフェルトが今までルールイス王や火鉢にもしたことがないほど敬意を込めて膝を突き頭を下げた。


「あなたこそが我が主に相応しい」


「何なんだ。本当に」


 砂丘的に憐れみを貰いたく話したわけではないのにと・・・溜息を吐くとずっと黙っていた火鉢が顔を上げる。


「我は決めたぞ。旦那様」


「旦那様?」


「そうだ、旦那様。我は旦那様を心から愛する。そうすることであなたを支えたい」


 今までスリルと命のやり取りにしか興味を示さず、魔王を夫にしたのも戦う為だった火鉢が、強くなる為とずっといっていた火鉢の宣言に4人は目を丸くする。


「どうした?熱でも出たか」


「失礼な。貴方は魔王なんかじゃない。本当に素晴らしい人だ。肉体だけじゃなく、その心にも私は惚れたぞ」


 火鉢は本当に嬉しそうに満面の笑みで宣言する。


「はははっはははは。お前は本当に素直だな。ありがとうな、火鉢」


「ズルイでヒーちゃん。それは私が言うセリフやで」


 風香はいつもの似非関西弁に戻り、火鉢をけん制する。


「そうです。火鉢様ズルいです」


 なぜかアンジェリカにも責められて火鉢は戸惑うが、自分の言った言葉に嘘偽りがないことに証明するために胸を張って砂丘を見続ける。


「私は思ったことを言っただけだ」


 砂丘は火鉢の頭を撫でてやる。


「ありがと」


 砂丘は優しく4人に笑いかける。

ここまで心を許したのは、ガイルやカブラギといたときぐらいではないだろうかと砂丘は昔馴染みの顔を思い出す。


「砂丘様。まだお聞きしたいのですがよろしいでしょうか」


「うん、何だ?」


「その後の勇者や国はどうなったのか知りたいのです」


 エルファルトの中で、すでに砂丘が主で間違いなのだが、歴史の証人を前にして好奇心を抑えきれない。


「別にいいけど、何が聞きたいんだ」


「そうですね。では私が仕えていた国。ルールイスとはどうしてできたのですか?」


「ルールイスか・・・あそこが正統なレギンバラの国なんだろうな」


「正統?」


「そうだ。レギンバラ王の血と勇者の血を両方受け継いでるからな」


「「「えっ」」」


 砂丘の発言に他の女性陣が驚きの声を上げる。


「うん?どうした」


「いやいや、先程の話の中だと勇者は皆さんお相手がいて、レギンバラの人と結婚できる人なんていませんよね」


 女性陣の声を代弁してエルファルトが答える。


「そういうことか。お前らちゃんと聞いてたか?確かに水の勇者 時東はカブラギと結婚した。風の勇者 木場は光の勇者エレアが好きだった。だけどエレアは木場とは結婚してない。木場は教祖だったがエレアと破局して傷心のところをレギンバラ王の姪と恋仲になって結婚したんだ。元々木場は民衆をまとめるのが上手かったからルールイス王国を作るのも容易かったそうだぞ」


 砂丘の言葉を聞いて4人は驚きと、人の恋路はわからないと思った。


「あとはそうだな。ここは今は暗黒大陸とか呼ばれてるけど、本来はここがレギンバラ城が建っていた場所だとか、勇者達で土地を分けたとかかな」


「なんだかとんでもない歴史の謎を聞いている気がする」


 エルファルトは興奮を処理しきれなくなり頭を抱えだした。

それを見て砂丘は笑いながら食事の支度を始める。

 話しているうちに日が沈んでいた。

アンジェリカが砂丘の後を追い、料理の支度を手伝う。


 いつの間にか当たり前になった風景に誰も何も突っ込まなかった。


「じゃさっき言ってた暗黒龍を倒すって、また復活してるってことなんかな?」


 風香が砂丘の言葉を思い出して言葉を紡ぐ。


「ああ。今度はこの暗黒大陸じゃない場所だからな、めんどくさいけど行くしかないだろ」


「暗黒大陸じゃない場所」


 火鉢が首を捻る。

本来暗黒大陸の最北部にいるはずの暗黒龍の話を聞いていたのに


「あいつは歴史の節々で現れるんだよ。今回は確かエレアのところだったな」


「エレアさんのところですか」


 アンジェリカがどこかわからずに聞き返す。


「確か神興国・・・そうだ。セントセルスとか言う名前だ」


 砂丘の言葉にエルファルドが正気を取り戻して質問する。


「神興国に何かあるのですか?」


「まだわからないさ。行ってみないとな」


 砂丘はちょっと買い物に出るようなノリで軽く話している。


 戦乱の兆しが近づいている・・・



いつも読んで頂きありがとうございます。

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