閑話 その他の勇者達37
「我に従え」
コウガは眠りに就く度に、何かの声に苦しめられていた。
神を体に宿したその日から・・・
「ハァハァ」
コウガが体を起こして頭を掻き、喉が渇いたと思って水を飲むため水場に行く。
現在は大聖堂から与えられた聖騎士達が住む寮に住んでいる。
大聖堂は目と鼻の先で、窓を開ければ目の前に見える。
コップに水を注ぎ一気に飲み干す。
「畜生。どうして俺がこんなに苦しめられなければならないんだ。俺は光の勇者だぞ」
コウガは召喚されたとき、自分こそが物語に出てくるような主人公だと思った。
実際にルールイス王国では他の勇者よりもコウガを優遇してくれていた。
コウガも気分を良くして訓練に勉強に励んだ。
しかし、土の勇者との戦いで敗れて、そこから予定が狂ってきた。
見知らぬ土地に飛ばされなんとか地位を確立した。
そして新たな主人公としての一歩を踏み出すはずだった。
結果は惨敗……
コウガが編み出した技は全く通用せず、相手に良いように遊ばれて負けた。
だが敗戦しようとセントセルス神聖国で、コウガの扱いはむしろ高められたと言える。
神を宿した聖騎士・・・白銀の聖騎士は神を宿してセントセルスの軍神となった。
コウガにとって悪夢の日々……
何者かに体を蝕まれていく感覚、そして他者から向けられる尊敬や敬愛の眼差し、全てかコウガにとって重くのしかかり体の自由を奪っていく。
「おい。おい、コウガ」
「うん……?」
窓の外をぼんやりと見ていたら、いつの間にか隣にテリーが立っていた。
テリーもコウガと同じく神を体に宿している。
しかし、テリーは神と折り合いをつけて今では神を従えている。
コウガもテリーに続くように宿されたが、上手く行っていない。
「どうしたんだ?お前、最近おかしいぞ」
テリーは一度コウガと戦って負けた経験がある。
そのときから自身の未熟さを恥じて常に鍛錬を怠らない。
またテリーの性格はまじめで実直、悩む前に前に進むタイプなのだ。
「悪い。少し寝不足が続いてるんだ」
「そうなのか、一度医者に診てもらえよ。それよりもうすぐ聖女様がいらっしゃるからしっかりしろよ。頼むぞ」
テリーに声をかけられていると謁見の間の扉が開き、聖女と枢機卿が現れる。
二人は常に行動を共にしていて、聖騎士達が頭を下げて二人を迎える。
ここは王国でいう謁見する王座の間、大聖堂では聖女が一番の権力者であり、次に枢機卿と続く。
「皆の者、面を上げよ。これから信者達の謁見を始める。しかと護衛頼みましたよ」
聖女の微笑みに大半の聖騎士は見惚れて眩暈を覚える。
聖女は妖艶な見た目をしているので、セントセルス神聖国の導き手である聖女でなければ誰もが触れてみたいと思う美女なのだ。
妖艶な笑みで激励をもらえれば、聖騎士達は躍起になって働きだすこと間違いなしだ。
「では、謁見を始めます」
コウガはこうしてバンガロウ王国との戦いの後は、朝は聖女の護衛、昼に訓練や大聖堂が受ける依頼をこなして一日を終える。
つまらない普通の日常。
だがコウガの中で着々と何かが変わろうとしていた。
「やっと目を覚ましましたか」
コウガの意識はない。
目の前には聖女が座り、意識の無いコウガが膝を突く。
「遅くなってしまい申し訳ありません」
「待ちましたよ。我らが悲願叶えましょう」
それはいつも使徒に向ける優しくも妖艶な笑みではなく、悲しみと怒りの炎を含んだ獰猛な笑み。
「アポロン、いえ、光の勇者、エレオノール・シルビアよ」
聖女の口から出た名前は初代 光の勇者として召喚されたエレオノール・シルビアだった・・・
二人は真っ赤なワインをグラスに注ぎ、お互いの口に流し込む。
それは、契約の印・・・ワインを飲みほし、聖女はコウガの体にキスをする。
「もうすぐです」
服を脱ぎ、聖女がコウガを受け入れる。
妖艶な唇がコウガの体をなぞり、白くて細い指がコウガの服を脱がしていく。
豊満なバストが厚いコウガの胸板を撫でながら、指がコウガの股間を撫でさする。
「エレオノール、あなたを待っていたのよ」
聖女の目にコウガは映っていなかった。
二人は聖女の部屋にある大きな天蓋付きベッドに倒れ込み、激しく体を合わせる。
この日からセントセルス神聖国でコウガを見る者はいなくなった・・・・
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