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夏休みの想い出  作者: 悠月 星花


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9/9

夏休みの想い出 ~ アイスコーヒーと宿題 ~

「また、ゲームばかりして……いつになったら宿題をするのかしら?」

「だって、せっかくの夏休みだし……お母さんだって、夏休みは遊んでたんじゃないの?」

「私は、早くに宿題は終わらせてたわよ!」



 うっそだぁーと言いつつ、ゲームのコントローラーを持ったまま大の字に寝そべる風花に私はため息をついた。



「お母さん、ため息ついたら幸せ逃げるよ?」

「そうかしら?私の幸せは、マサくんと風花とおばあちゃんがいれば、すぐに集まってくるもの!」

「何それ……」

「私の大好きな人達よ!あなたたちがいれば、私は幸せなの!ほら、私も見てあげるから、勉強しなさい!」



 はぁーいと言って、自室から宿題を持ってくるく風花。

 私は、アイスコーヒーを二人分用意して、今の机に向かう。



「お母さん、持ってきたよ!」

「はいはい、じゃあ、がんばろうか!」



 宿題を広げる風花と並び、問題を解いていくのを見ている。

 口を出したいが、出さずに終わるのをずっと待って、終わったことを見計らっていた。



「ふぅ……1ページ出来た……もぅ、疲れる」

「ふふ、じゃあ、見せて!」

「えっ!お母さんにわかるわけないじゃん!」

「わかるわよ!私、勉強は出来たんだから!」

「お父さんと違って?」

「お父さんも……高校生のときから勉強はできたよ!」

「それまでは、バカだったんだ!」



 それ以上は何も言わない。100点満点のテストで10点とか取っていたなんて、いくらマサくんでも、子どもに知られたくないだろう。



「お父さんはね、頑張って国立大学行ったのよ!だから、バカではないよ。ただ、ちょっとやる気の問題」

「ふぅーん、お父さんにも聞いてみる」



 風花はあまり、勉強は得意な方ではないらしい。学校の成績を見ても、中の下くらいなのだ。

 無理に勉強をとも思わなくもないが、出来て困ることはないのでなるべく言うようにはしているけど、なかなか本人には伝わらない。

 私は基本的に放置されていたから、私も風花をと思っていたけど、私と風花では違うのだと思い声をかけるようにしていた。



「コーヒーでも飲んだら?見てあげるから!」

「わかった。お母さんって、なんでそんなに勉強勉強っていうの?」

「大人になれば、わかるよ!もっと勉強しておけばよかったなって思う日がくるし、もっと遊んでおけばよかったなって思う日がね……よく遊んで、よく学んで、風花が好きなことを見つけなさい!」



 よし、採点できた!と風花に返すとこんなに間違っているの?とへこんでいる。

 今度は、私がコーヒーを飲む番だ。

 カランとコップの中の氷が揺れる。手は、コップがかいた汗でベタベタになった。



「これ、本当に?」

「本当に!説明してあげよっか?」



 得意げに言うと、ぶすっとして教えてという風花。

 1つ1つ丁寧に解いていけばいいものを、途中でこんがらがっているからダメなのだ。

 見ていると、マサくんそっくりで笑いそうになる。



「あっ!この問題、マサくんも間違えてたやつだ!」

「えっ!どれ?お父さんも間違えてたの?」

「そうそう、もっとへんてこりんな答え書いてた気がする。ふふふ」

「俺、そんな変な答え書いた覚えないぞ?」



 頭の上からいきなり聞こえてきた声に驚いて思わず、母娘で悲鳴を上げる。



「なんだい、騒々しいね……」

「ばあちゃん、ごめんな。アキラと風花が……」

「マサくんの話してたら、いきなり声かけるんだもん!驚いただけだよ!」

「そうかい、そうかい。あんたら二人はいつまでも一緒だな……」

「当たり前じゃん。俺の嫁さん!」

「違う、私の旦那様!」

「どっちも一緒……惚気るのは、この宿題の解説が終わって、私がここからいなくなってからね!」

「惚気てなんか……」

「お父さん、それが惚気てなくて、何が惚気なんだか……お母さん、いつまでたっても可愛いもんね。仕方ないよ!近所でも美魔女だって有名だし!」



 そうなの?とマサが聞いてくるが、私だってこの町に住んでから20年以上たつのだ。

 そんなお世辞に心は動かない。



「嘘だよ!みんな、いつまでたっても私とマサくんのこと悪ガキとか思ってるんだって!」

「お母さんが悪ガキってイメージつかない!」

「そう?私、これでも……」

「アキラは、もろ都会っ子な。俺が連れまわしてたけど……」

「お母さんたちって……何?そんな前から好き合ってたの?」



 ただの幼馴染だし……と答える私をよそに、俺、こっちに引っ越してきたときから……とかいうマサに照れる。



「あぁ、はいはい……お母さん、お父さんにもコーヒー出してあげたら?」

「わかったわ!ガムシロ2でミルク3でいいよね?」

「あぁ、お願い。俺、その間に風花の宿題見ててやるよ!」



 ゲッと風花が思わず声を出した。

 まさか、マサが見てやるだなんていうとは思っていなかったようだ。



「はい、アイスコーヒー!」

「サンキュ!って、また、間違えてる。ここは、主人公がこの女の子に恋をしている情景が書かれているんだよ。ほら、考えてみ?って、いるのか?」

「いるもん!」



 馬鹿にされたと思い、思わず言ってしまったようである風花はしまったという顔をした。



「マサくん、もう、そういうお年頃だからね……ハンカチの用意はしておいてあげるよ!」

「冗談でも、嫌だ。風花、嫁には行くな!お父さんが、一生養ってやるぞ!」

「マサくん、それは無理。マサくんの方が、先に死んでしまうからね。風花は風花の大切な人を探せばいいんだよ!焦らなくていいし、しっかり見極めてね!ほら、マサくん、止まってる暇はないよ!」



 そういうと、アイスコーヒーを飲む私と風花。

 マサは、いずれはと思っているさと寂しげに言う。



 ◆◇◆



 15年後……



 風花が、一人の青年を連れてくる。



「アイスコーヒーでよかったかしら?」



 氷がコップの中でカランと動く。

 マサと私は、風花と青年と対面に座り、二人に向け微笑むのであった。




 - END -

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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