夏休みの想い出 ~ 課題が山のよう! ~
高3の二人
「マサくん!宿題一緒にやろう?」
「まだ、いいじゃん……」
「でも、終わらせないと、遊べないじゃない!」
「受験生が遊んでていいのかよ?」
「特別講義行ったからいいの!」
私は、家に帰らずそのままマサの家について行き、山のような課題を鞄から引っ張り出す。
問題集は、渦高く重なる。
受験生への宿題は、なかなか分厚い。塾の夏期講習も行って、この宿題もやるのか……と思うと、他の友人たちはすごいなと問題集を開いた。
「中学のときはさ、そんなに頭良くなかったのに、マサくん、夏休みの間にすごい成績伸びたよね?」
「あぁ、そりゃな?あれだけ、耳元で朝から勉強しろ勉強しろって囁かれ続けたら、しないといけないって気になるだろ?」
「まぁね!そのために、私まで特別講義に行ってたんだからさ!夏休み明けの模試で、どこに行くか、 最終的に決めるの?」
「俺、国公立って決めてるっていったじゃん!」
「まさか、マサくんから国公立って言葉がでるとは……」
「んだよ!俺だって、やればできるってとこ見せてやる!」
「ふぅーん、そっか。まぁ、頑張って!」
「なんか、アキラ、機嫌悪いよね?」
「べっつにぃー、マサくんの宿題、倍になればいいのに……」
マサが行きたいという国公立の大学に妬いても仕方がない。
やっと、気持ちが通じたのに……いきなり遠くに行くって……落ちればいいのに……口に出さなくても思わずにはいられない。
でも、マサが本当に国公立を目指していることは、一緒に特別講義に行っているから知っている。
嘘でも冗談でも、そんなこと言えるわけもない。
私が寂しいから……近くの大学に一緒に通おうだなんて……とてもじゃないけど、言えない。
「アキラはさ……」
「ん?」
「大学、地元なんだろ?」
「そうだよ!大学は推薦だからね。受かったら車校に通うつもり」
「車で大学に通うのかよ!」
「当たり前!電車だと結構時間かかるからね……それだと、困るし」
「じゃあ、特別講義に付き合ってくれたの、悪かったな……」
「なんで?私が一緒に行きたかったからいいの!それに、私がいた方が……成績もあがったでしょ?」
確かにと、マサは特別講義で出されたテストの結果を見ていた。
特別講義で1番最初にしたテストは、私は平均90点でマサは平均49点である。
夏休みが半分終わった頃に、また、テストがあった。
そのテストを見て、手応えを感じたようで、今日、特別講義の最終日のテストで私と同じくらいは点数が取れるようになったことで少しだけマサは自信が湧いたようだ。
「アキラって、頭いいのになんかイロイロ勿体ないよな?将来、何になるつもり?」
「翻訳者になりたい。それか、小説家」
「はい?」
「夢だったんだ……翻訳者。お母さんが何か国語も話せるからさ。私も話せたりするんだけど……」
「俺、知らない事実だな……」
「そうだね?夢とか語ったことなかったもんね!」
「で、翻訳者に小説家って……小説家って……」
「2度も言わなくていい!今、最終待ちだから!」
「最終待ちって?書いてるの?あの猛抗議受けてたのに?」
「書いてる!長編短編趣味合わせて、今まで150作くらい書いた。この夏休みも書いたよ!でも、まだ、1作しか世に出してないんだけど……最終残ってるの……ダメだったら……大学で学び直して出直すわよ!」
「アキラさ……ちゃんと、寝てる?」
「うん、寝てるよ!」
「いつ、書いてるの?その、小説って……」
「休み時間とか、授業中とか……思いついたときに、ちょこちょこっと……って、マサくんは、小説家って聞いても笑わないんだね?」
「笑うわけないし。好きなことを仕事にしたいっていうアキラを笑うわけないだろ?応援するよ」
ありがとうというと、むしろ私の方が恥ずかしくなる。
でも、マサなら夢を語ったとしても笑わないってことはわかっていた。
「だからか、アキラの書く小論文って課題に対しておもしろいの。俺、いつもアキラのを採点してたけど、違うヤツの読むと面白くないんだよな……」
「本当?小論文がおもしろいってどうなの?って思わなくはないけど……」
「惹きつけられるって意味だから、いいんじゃね?エビ先もメチャクチャ褒めてたじゃん?」
「確かに……特進の先生に褒められるとは、思わなかったけどね!」
「まぁ、夢に向かって突き進め!」
「ありがとう!それより、全然進んでない宿題をやっつけてしまおう!じゃないと……遊べない!」
「じゃあ、宿敵宿題に向かう前に、やる気を補充ってことで……」
ん?と小首をかしげていると引き寄せられる。
「せっかく、彼女が前にいるんで……キスだけ……」
「……マサくん」
「本当に、頑張るからさ……俺の方が、宿題終わってないの多いし」
「わかった!今日中に終わらせてくれたら、ご褒美も用意してあげようじゃないか!」
おっ?とやる気になるマサにニッコリ笑いかけて抱きしめる。
キスをした後は、真っ白だった問題集もきちんと答えの書かれ真っ黒に文字で埋め尽くされた。
「宿題!」
「何、いきなり?」
「5年後の花火の日にさ?」
「ん?」
「……秘密基地に来てくれる?」
「毎年帰ってくるけど……俺の秘密基地だし……」
そうでした……というと、宿題な……とマサは呟いた。
思い当たることがあるのか、ちょっと考え込んでいるような素振りを見せる。
「答えは、必ずあるやつだな。まぁ、5年先だから……気長にな?」
「そうだね……って、何かわかって……」
「さぁ、なんだろ?まぁ、俺の思うものと合ってたら、そのとき褒めてくれ!さてと、宿題も終わったし……明日は、どこか行こうか?」
デートのお誘いにソワソワしながら、少し離れた町にある水族館に行くことになった。
私の誕生日を覚えていてくれたのだろう。
もらったネックレスを付けていこうと微笑むのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
よかったよと思っていただけた方は、下方にあるポイントをポチっとお願いします。(o*。_。)oペコッ




