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夏休みの想い出  作者: 悠月 星花


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夏休みの想い出 ~ ビキニとパーカー ~

高3の二人

「野球部も負けちゃったね……」

「あぁ、これから受験だなぁ……」

「野球推薦とかないの?」

「何校かは話来てるって言ってたけど、俺、高校までにしようって決めてるから断った。勉強か……俺、宿題やるのも精一杯なんだけど……」

「宿題なら、明日から一緒にやればいいでしょ?塾とか行くの?」

「あぁ、母ちゃんに行けとは言われてる……金ないから……国公立……狙えって、俺の頭で?って思わねぇ?」

「ハハハ!確かに!じゃあ、明日から二人で勉強しよう。宿題も減るし、一石二鳥」

「あぁ、そうしたいけど……夏期講習行こうかな?」

「それなら、お金のかからない学校の先生を捕まえて教えてもらっちゃおう。特講やるって話もあったから……」

「それって、特進のやつら用じゃないの?」

「特進が、学校で勉強なんてするかってーの!」



 私はマサを連れて、明日から学校へ行くことになった。

 夏休みの間、学校で行われる特講に通うのだ。

 スケジュールは、すでに押さえてある。



 ◇◆◇



「アレ?アキラも補習?」

「私?私は特講だよ?マサくんと」

「マサくんね……ふぅーん」

「コウスケは、補習なの?」

「えっ?あぁ、まぁ……」

「じゃあ、ねぇ!」

「待って、アキラ!」



 引き留めるコウスケに振り返り、何?と聞くと、クラスの仲いいやつらで休みの日に海に行かないかと誘われた。



「マサくんも行く?」

「……俺?」

「行かないなら、行かないけど……」

「行くだろ?マサ!」

「えっ?まぁ、休みなら……」

「うん、じゃあ、行く!また連絡しておいてね!行こっ!遅れるとまずいから……」



 私はコウスケに空いている手でバイバイと振り、マサを引きずって教室へ入った。



「いいのかよ?コウスケの誘い、俺も」

「海だよ?マサくんいないと、危ないじゃん!」

「はぁ?それなら、断れよ!」

「一緒に行きたかったんだから、仕方ない。彼氏よ!頑張って、変なのから私を守ってね?」



 ケラケラ笑いながら、席につけば、授業が始まる。

 席の近いもの同士グループになるようで、わからないところを補いつつワークシートを進めて行く。

 意外と身になっているような気がして、おばあちゃんちへ帰ってからもマサと二人で宿題を片付ける。

 休みにとは言ったが、まさか……明日の休みになるとは思ってもみなかった。



「明日か……水着あるの?」

「うん、確か、中2のときのが……あったはず」

「はい?そんな前の?」

「うん、海なんてそれっきり行ってないし……今晩にでも来てみてダメそうだったら……借りるよ」

「あぁ……そう」

「マサくんはあるの?」

「ある……」

「ふぅーん、あるんだ?」

「なんだ?その疑ってますって顔」

「べっつにぃ?」

「言っとくけど、プール掃除を手伝ったときに必要だから買っただけだからな!」

「そうなんだ?」



 そうとあっちを向くマサに、とてとてっと四つん這いになって顔を覗きに行く。



「もう、子どもじゃないんだからさ……無防備すぎる!」



 部屋着でうろついていると、最近、マサに叱られるな……としょぼくれるのであった。



 ◇◆◇



「マサくん!泳がないの?」

「泳がないな……アキラが俺も行かないと行かないなんて言うから……いけないって言えなくなったんだから、俺はここでじっとしてる。あと、パーカーか何か羽織れよ!」

「暑いじゃん!」

「暑い云々じゃありません。目のやり場に困るんで、着てください!」

「おっ?それはそれは……失礼。寄せてみるもんだね……」

「あほう。こんなところで、寄せるな!」

「ないより、あった方がいいって……みんなに言われたから……」

「寄せな……じゃなくって、普通でいいんだよ。元々、スタイルいいんだから!」

「ふぅーん……そんな風に私のこと見てるんだ?」



 マサの背中側に回って、私はコテンの背中を預ける。



「せっかく、ビキニ着てきたのにな……褒めてくれない」

「誉め言葉なんて、さっきからあっちでもこっちでも言われてるだろ?」

「マサくんに褒めて欲しいんだよ?他なんて、どうでもいいのさ!芋め!」



 もういいと立ち上がり、砂浜の方へ歩き出す。



「アキラ!」



 呼ばれて振り返ったら、顔にパーカーが飛んできた。



「着てけ、あほう!」

「マサくんも、あほう!」



 私はマサのパーカーをいそいそと着て歩きただす。別に泳ぎたいわけでもなく、みんなと遊びたいわけでもない。



「私って意外とひどいな……」

「お姉さん一人?」

「……」

「ねぇってば。可愛いね?遊ばない?」

「残念、一昨日きやがれ!」



 プイっと顔を逸らせると、私はまた歩き始める。

 ただ、このナンパ……しつこい。



「アキっ!」



 グイっと手を引っ張られ驚いた。



「マサくん……」

「彼女になんかよう?」

「あ……彼氏ときてたんだ、そうだよね……うんうん、仲良くねぇー」



 ガタイのいいマサをみたナンパ男は去って行った。



「あのさ?」

「ん?」

「たまたま、俺が気が付いたからいいものの……危機管理しようよ?」

「じゃあ、マサくんが、私の側をついて歩けば問題ないね!ん、手」



 はぁ……と、大きなため息をつかれるが気にしない。

 波打ち際を二人で歩いた。



「中2のときにね、海に行ったの。あっ!あった、あった!」

「何それ?」

「シーグラスっていうんだよ!波とかで角が削られたガラスなんだけど……綺麗じゃない?」

「あぁ、綺麗だな」

「あの日はね、クラスの子たちと海にきてたんだけどね……同じように。今みたいに一人で散策して、シーグラスを見つけてね……木陰で夕方まで海眺めながら、マサくん元気にしてるかなって考えてたよ。今は、近くにいられるからいいね?」

「そうだな……」

「……志望大学、近くのじゃないんでしょ?」

「あぁ、一度この町を離れようと思ってる」

「そっか……大学受験、頑張ろうね?」

「そうだな……」

「今度は、逆だね。私がこっちで、マサくんが街に出るんだ……帰ってこなさそう!」

「そんなことは、ないよ、たぶん!」



 あのときは1人で岩場の木陰で休んでいたけど、今日は二人で座る。



「そういえば、Tシャツ脱がないの?」

「知ってる?野球部の灼け方……」

「俺、足白いじゃん?」

「もしかして、Tシャツで隠れてる部分も白いってこと?」



 照れたように顔をそむけるマサに私はへぇーとニマつく。

 そぉーっとめくると、確かに白い鍛えた腹が見えた。



「いいものお持ちで……コウスケより、断然堅そうなお腹だね?」

「コウスケは部活上半身裸でやいてたからな……細目なくって感じだけど……って……勝手に捲るな」



 えへへと笑いじゃれ合う。

 別に隠しているわけではないけど、みなが幼馴染のマサとアキラというふうに見ているだけで、自分たちも微妙にその枠から抜け出しにくくなっているのは感じている。


 ねぇ……と、マサのTシャツを引っ張ると、それらしいことをしてくれるらしい。

 目を閉じると、抱きしめられキスをする。


 握っていたシーグラスをポトリと落とし、マサの首に腕を回すのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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