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夏休みの想い出  作者: 悠月 星花


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夏休みの想い出 ~ 君と出会った夏 ~

 今も色褪せることのない夏休みの想い出。

 君に出会ったから……今がある。

 覚えているかな……?マサくんと私の夏休み。

 私は、今でも宝物のような想い出だよ。



 ◆・◆・◆



「アキラ!早く登って来いよ!」

「待ってよ……マサくん……」

「お前、都会に住んでるからか、ひよっこだな?これくらいの木くらい登れよ!」

「木登りなんてしたことがないもん!うぅ……どうしたら……」



 途中まで登ったところで、登ることも降りることもできなくなったので、セミのように木にしがみついていた。



「ほら、手出せよ!ひっぱってやるからさ!」



 片手を離すことも怖かったが、上からマサが大丈夫だというから怖かったけど、片手を恐る恐る伸ばした。その手をマサがしっかり掴んで、引き上げてくれる。



「よしっと。ここからの景色をアキラにも見せたかったんだ!」



 樹齢何百年はありそうな木の上に作ってあるツリーハウス。

 ここは、マサの父親が秘密基地と銘打ってこっそり自分で作ったものらしく、しっかりした家になっている。

 今では、マサが遊ぶ場所として使っているようで、マサは得意顔で窓の外を指さしている。



「わぁー!すごい!この景色!!」



 山の中でも、わりと高いところにあるこのツリーハウスは、町を一望できる。

 都会のビル群の中、マンションの高層階で住んでいても、生まれてからずっと高いところで生活をしていたので、部屋から見る景色なんてなんの感動もしないが、久しぶりに訪れたおばあちゃんの住む町の景色にはとても感動した。



 ◇・◇・◇



 都心から5時間かけて、母の実家までやってきた。

 山村であった長閑なこの町は、何もすることがなく、毎日おばあちゃんに連れられ、畑に野菜を採りに行ったり宿題をしたりと変り映えのしない毎日を過ごしていた。

 夏休みの間、母に言われて遊ぶ場所も何もないここにいないといけないと思うと……つまらない。

 そんなことを思っていたら、たまたまおばあちゃんちにお裾分けを持ってきたマサと出会ったのだ。



 そんな彼に手をひかれ、川や山を遊び回った。

 朝早くから起きては、虫取りに出かけたり、川に飛び込んで泳いだり、魚のつかみ取りをしたりと、都会では味わえないことを次から次へとマサは教えてくれる。

 今までつまらないおばあちゃんちが、マサと出会ったことで一変し、初めて経験することばかりでものすごく楽しい時間となった。

 真っ白だった肌も日に焼けて真っ黒になっている。

 おばあちゃんは、そんな楽しそうにしている私を見て、しわしわの手でよっかたなぁと頭を撫でてくれた。

 毎日、夕方の5時のサイレント共にそれぞれの家に帰ることが寂しく、朝に日が昇ることがこんなに楽しみだったのはこのときが初めてだっただろう。



「なぁ、アキラ。もうすぐ、帰るんだろ?」



 夏も終わりになった頃、山のような宿題を二人でしていたときのことだった。

 その日は雨だったので、外に遊びに行けず、おばあちゃんちでそれぞれの宿題に手をつけていた。二人ともちょうど宿題に飽きはじめたころのことだ。



「あぁ、もうすぐ帰る。マサくんとはもう友達になったんだから……また……また、来年来るからさ、遊んでくれる?」

「あぁ、当たり前だ!約束だからな!」



 うんと頷き小指をたて、約束をする。



「帰る前に、連れていきたいところがあるんだけど……明日、晴れたら行こうぜ!」



 マサはニカッと笑うと、また宿題を始める。問題がわからないのか、えんぴつで頭をカリカリしていたので、そっと教えてあげる。

 同い年のため、宿題はだいたい同じ。わからないところを教えてあげるとマサは助かったとはにかむ。



 ◇・◇・◇



「この景色、忘れないよ!」

「あぁ、秘密基地は二人だけの秘密だからな!」

「もちろん!来年も連れてきてくれるかな?」

「アキラが俺のこと忘れずにこの町にきたらな!」

「うん、絶対くるよ!マサくんこそ、忘れないでね?」



 そう言って、二人並んで町の景色を見た。

 夏空に大きな入道雲がもこもこと真っ白な綿菓子のように浮かんでいる。



 今日、マサと一緒に秘密基地から見たこの景色を一生忘れることはないだろう。



 夏休みの絵日記に、大きな入道雲に二人で乗って遊んだことを書き込んだところで、今年の夏休みは終わったのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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