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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第六章 封印された魔科学

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第23話 冬夜の覚醒と女性の正体

「どうしたんじゃ? ()()()()()()()()()でもあったかの?」


 唖然として立ち尽くしている冬夜に対し、口元を吊り上げて悪戯っぽい笑みを浮かべる紫雲。


「いや、その、大丈夫なの?」

「何のことかさっぱりわからんが?」

「だって()()()()()()()()()()()()?」

「ああ、そんなことか。別に何ともないぞ?」


 右手に持った黄金色に光る矢を器用に回している紫雲。


「なんじゃ? この程度で固まっているようじゃまだまだ修行が足らんな。少し考えたらわかる事じゃろうに」

「わかるわけないだろ! さっきまで息も荒かったじゃないか」

「敵を騙すには味方からっていうじゃろ? それに()()()()()()()()()()()()のか?」

「違和感なんて……」


 紫雲の体をじっくり観察し、何かに気が付いた冬夜。


「あれ? 貫通していたはずなのに、血が出ていない?」

「それだけか? 他にはないのか?」

「他に……あっ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「ようやく気が付いたか……」


 目を白黒させる冬夜に対し、大きなため息をつく紫雲。


「もうとっくに気が付いておったと思ったが、ワシの演技力も捨てたもんじゃないのう」

「えっと……じいちゃんが言ってる意味が分からないんだけど?」


 左手を顎に当てながら満足げな表情の紫雲に対し、困惑している冬夜。するとここで女性が二人の間に割って入ってきた。


「はぁ……もう見ていられませんね……そろそろ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 冬夜が慌てて振り返ると、地面に倒れていたはずの女性が立っている。


「い、いつの間に!」


 飛びのくと、紫雲を守るように立ちはだかる冬夜。


「クソ、あの攻撃でまだ立っていられるとは……じいちゃん、俺が守るから!」

「バカモン! ちょっとは落ち着かんか!」


 冬夜の体が再び黒い魔力を纏い始めると、怒鳴り声とともに紫雲のゲンコツが頭を直撃した。痛みのあまり目に涙を浮かべ、しゃがみ込む冬夜。


「いってぇ……いきなり何するんだよ!」

「お前が話も聞かずに魔力を解放しようとするからじゃろうが。少しは落ち着けと何度言ったらわかるんじゃ!」

「そんなこと言われても……だいたい襲ってきたのは向こう(女性)なんだから仕方ないだろ!」

「今からネタ晴らしをしてやると言っておるのがわからんのか! もう少し冷静に周りを見ろとあれほど言ったじゃろうが……」

「だーかーら! この状況でどうやって冷静になれっていうんだよ!」


 紫雲と冬夜の言い争いはどんどんヒートアップしていく。その様子を見かねた女性が大声を出した。


「二人ともいい加減にしてください! 紫雲さんも()()()()()()()()()()()()()から話がややこしくなるんです。もう戦う必要はありませんよ、冬夜」


 女性からの一喝に、思わず黙ってしまう二人。


「……ワシは説明するつもりじゃったぞ。じゃが冬夜が全く聞く耳もたんからいけないんじゃ」

「何言ってんだよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()いたらこんなことにならなかったんだろ……」

「はいはい。言い争いはこの空間を出た後で雪江さんを交えてやってくださいね。……もう残り時間も少ないので……」


 小さく息を吐き、呆れたような声で諭す女性。最後の方は二人に聞こえないような小声で呟く。


「そうだな。二人には聞きたいことがたくさんあるし……じっくり説明を聞かせてもらおうか」

「いいじゃろう。第一に……おっと、ワシとしたことがうっかりしておった。()()()()()()()()()()()()


 二人に話を聞こうと向き直った時、冬夜の体が足の先から少しずつ薄くなり始めた。


「は? 何で体が透け始めてるんだ? じいちゃん、どういう事だよ?」

「すまんな。お前が覚醒し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んじゃ。まあ、続きは向こうに戻ってからという事じゃ」

「ちょっと待ってよ! まだ何も聞けてないよ!」


 必死の叫びも虚しくどんどん身体が薄れていく。すると突然女性が目の前に現れ、優しく声をかけてきた。


「冬夜、大きくなりましたね……これだけは伝えておきます。近い将来、あなたたちのもとに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え? メイを守る?」

「時が来ればわかりますから……また近い将来、会いましょう。それと、どうか響を止めて……」

「もしかして……か……」


 景色に溶けこむように冬夜の体は消えてしまった。最後の言葉を言い終えることも無く……

 完全に姿が見えなくなると紫雲が女性に声をかける。


「冬夜のためとはいえ、いやな役を押し付けてしまってすまんかった」

「そんなことありませんよ。あの子(冬夜)の成長のためです……今のままでは最悪の結末を迎えてしまうところでした」


 冬夜が先ほどまで立っていた場所を見つめる女性。瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。


「冬夜もずいぶん大きくなりましたね……純粋で真っすぐ育っていてくれて安心しました」

「良き友人にも恵まれて、本当に楽しそうじゃからの……」


 紫雲の言葉を聞いて安心したような表情を浮かべる女性。着けていた仮面を取り、右手で涙を拭う。


「本来はワシらが決着をつけるべきじゃった……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 紫雲が申し訳なさそうに口にしたのは、冬夜が幼いころに亡くなったはずの瑠奈(ルナ)

 彼女は本当に冬夜の母なのか?

 冬夜の前に現れた意味とは……

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