表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第1章 運命の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/224

第13話 迷宮図書館(ラビリンスライブラリ)

 学園で新たな生活を始めて数日が経過したある日、事件は起こった……

 涙を受かべ不貞腐れた様子で廊下を歩く冬夜。右頬には熱を帯びて真っ赤な手形が付いている。


「いってぇ、本気で叩かなくても……」

「自分が何をしたかわかってる? 今回で()()()よ!」


 数歩先にいたリーゼが肩を震わせながら真っ赤な顔で怒りを露わにする。ここまで彼女が怒り心頭な理由は数十分前に起きた出来事が原因だった。



 迷宮(ラビリンス)図書館(ライブラリ)に向かうため、特別棟の食堂で待ち合わせをしていた二人。しかし、約束の時間から十分、二十分、三十分過ぎていき……いくら待っても冬夜は姿を現さない。


(約束の時間はとっくに過ぎているし……まさか、魔力枯渇の後遺症が?)


 襲撃を受けてから数日は至って元気に過ごしていた冬夜だが、時間差で後遺症がでた可能性もある。心配になったリーゼが食堂と同じフロアにある冬夜の部屋に急いで向かう。


「冬夜くん? 冬夜くんってば!」


 リーゼがドアを叩き、大声で呼びかけるが反応はない。ドアノブに手をかけると鍵がかかっておらずあっさり扉が開く。


「冬夜くん、大丈夫……って何よ!」


 慌てて部屋に入ったリーゼの目に飛び込んできたのはベッドで幸せそうに熟睡している冬夜。


(人を待たせておいて……ダメよ、ちゃんと起こしてから冷静に話をしないと)


 こんこんと湧き上がる怒りを理性で抑え込み、冬夜を起こすためにベッドへ近づいた時、事件は起こった。


「ほら、ちゃんと起きなさい!」

「う……ん……あと少しだけ頼む……いい匂いがする」


 寝ぼけた冬夜がリーゼに抱き着いた。


「……キャー! ちょっと、どこ触っているのよ!」


 何が起こったのかわからず反応がほんの一瞬遅れ、すぐに我に返ったリーゼが悲鳴を上げた。フルスイングの平手打ちが冬夜の左頬に炸裂し、鈍い音とともにベッドの反対側まで吹き飛ばされた。


「いってぇ。何が起こったんだ……よ」

「気分はいかがかしら? 冬夜くん? よく寝ていたみたいだけど、何かお忘れではない?」


 起き上がった冬夜の視界に入ったのは()()()()()で仁王立ちするリーゼ。細められた目は完全に笑っておらず、冬夜は小さくなりながら正座をすると、リーゼによる長いお説教が始まった。


「だから悪かったって。十分に反省したし、説教もされたからもう少し大目に見てくれても……」

「何か言いましたか? まだ自分が何をしたか()()()()()()()()がありそうですね?」


 ギギギッと音が聞こえるようにゆっくりと首を動かし、後ろを振り返るリーゼ。顔はすごくいい笑顔をしているが、目が全く笑っていない。さらに背後に浮かび上がる鬼のようなオーラが見え、冬夜は素早く見事な土下座を披露した。


「イエ、スベテワタシガマチガッテオリマシタ、タイヘンモウシワケゴザイマセン」


 ぎこちない動きで床に頭をこすりつける冬夜。


「ぷっ、何その変な動きは」


 あまりの不自然さに思わず吹き出して笑うリーゼ。雑談をしながら校舎を抜け、学園の中庭を歩いていると目的地である迷宮(ラビリンス)図書館(ライブラリ)の入り口に到着した。


「名前からもっと禍々しい建物を想像していたんだが、どこが迷宮と言われるような図書館なんだ? どう見ても向かいの大食堂のほうが大きいぞ」


 図書館は学園の正門から見てすぐ右手に建っていた。街の教会に似た外観をしており迷宮と呼ばれる建物とは程遠い。


()()()()()()()()()()と痛い目にあうわよ。説明するよりも実際に見たほうが早いわ」


 冬夜はリーゼの言っていることが全く理解できない。斜め向かいにある大食堂よりもずっと小さいこの建物が迷宮図書館と言われても全然イメージできない。


「さあ、中に入るわよ」


 リーゼが入口の扉に手をかけようとした時、緊急を告げる校内放送が流れる。


「リーゼ・アズリズルさん、至急生徒会室までお戻りください」

「何? 急な呼び出し? ごめん、冬夜くんは先に中で待っていてくれない? 読書スペースに管理してる生徒会役員の子がいると思うけど……これだけは約束して! ()()()()()()()()()()()()()()! わかったわね」

「おい、リーゼ! ちょっと待てよ!」


 慌てて冬夜がリーゼを呼び止めようとしたが、生徒会室に向かい走りだしたリーゼに届かなかった。


(いっちゃったか……仕方ないし、中に入って待たせてもらうか。生徒会役員ってどんな人だろ?)


 入り口の扉を開け、図書館に足を踏み入れた瞬間にリーゼが言ったことを理解した。目に飛び込んできたのはあまりにも()()()()()だった。天井までそびえたつ本棚が迷路のように立ち並び、外観からは全く想像できない広大な空間が広がっている。


(なんだ、ここは……)


 目の前に広がる異質な空間に圧倒される冬夜。まさか、この時点ですでに招かれざる来訪者が迷宮図書館に侵入していたとも知らず……

 何も知らない冬夜の身へ静かに危険が忍び寄っていた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
中々の長編、今から読み進めてどれくらいかかるか分かりませんが読ませて頂きます。 主人公が枠外の力を持つ設定は個人的に好みですが、光でなく闇の部分が特に個人的に刺さりました。 今後の展開を楽しみに読み進…
[良い点] 読みやすいテンポに早さ、本当にすごく憧れます! 冬夜、リーゼから二回目……しかも自らは寝ていてやるとは、もはや才能なのでは無いかと思えますね。 最後に書かれていた黒髪に眼鏡をかけた小柄…
[良い点]  ほぅ……この短期間に二度も……  三度目もありそうですな(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ